第2代デジタル大臣による書き下ろし! 「日本のデジタル化は遅れている」。よく言われるこの言葉、では何が課題で、どこと比べて劣っているのか? 明確に答えられる人は少ないはず。諸外国の現状を網羅し、データやエビデンスに基づいた分析から分かった意外な真実を、牧島かれん氏が語り尽くします。史上初の「デジタル大臣経験者3人による鼎談」も収載。初代大臣の平井卓也氏、第3代の河野太郎氏ら3人による、デジタル庁やDX(デジタルトランスフォーメーション)への熱い思いや、今だから話せるこぼれ話なども満載です。

新刊『日本はデジタル先進国になれるのか?』(日経BP)
新刊『日本はデジタル先進国になれるのか?』(日経BP)

 「日本のデジタル化って遅れているんでしょう?」 著者である牧島かれん氏が何度も投げかけられた言葉です。

 デジタル庁が発足したのが今から約1年半前、2021年9月1日のことです。初代デジタル大臣だった平井卓也氏からバトンを受け取り、牧島氏は同年10月4日から311日間にわたり、2代目デジタル大臣を務めました。その間、何度も国会での質問に答え、記者会見を受け、デジタル社会についての対話を続けてきたといいます。しかしながら、冒頭の質問が止むことはありませんでした。

 なぜ、「日本のデジタル化が遅れている」と思われてしまっているのでしょうか? 「何となく遅れているという印象」「報道でよくそう言われているから」「海外の方が進んでいるから」……。理由は様々でしょうが、何が課題で、どこと比べて劣っているのか、明確に答えられる人はおそらく少ないのではないでしょうか。

 牧島氏は、そう思われている理由の一つに、日本人の間に「何となくだけど、日本ってダメだよね」という諦めに似た思いがまん延しているのでは、と指摘します。日本が世界経済をリードしていたのはもう昔の話。“失われた30年”で自信を喪った国民性が表れているようにも見えます。

 では果たして本当にそうなのでしょうか。データやエビデンスに基づいて分析を行い、その上で足りないものを把握し、これからのアクションに結びつけていくことが大事なのではないか。これが、牧島氏が筆を執った理由です。デジタル大臣として任期中に語り尽くせなかったこと、立場上踏み込めなかったこと、当時感じていた疑問も含めて、赤裸々に書籍に記されています。

 本書では、まずデジタル庁(デジ庁)の成り立ちから解説していきます。「ミッション・ビジョン・バリュー」(MVV)を定め、官民の人材が一体となって働くデジ庁は、さながらスタートアップの様相。その様子をある議員は“(ヨーロッパとアジアが融合した)イスタンブール”と評します。デジ庁が今何をしているのか、その奮闘を元デジタル大臣の目線で語ります。

 次章では、諸外国と比較しての「日本のデジタル化の現在地」について明らかにします。まずは“デジタル最強小国”エストニアの実態に迫ります。牧島氏も、デジタル大臣としての最初の歴訪国にエストニアを選びました。人口133万人の同国は、20年にわたって「電子政府」の取り組みを推進。22年に発表されたIMD「世界デジタル競争力ランキング」で、電子政府ランキング1位に輝いたデンマークなどについても、牧島氏が実際に現地で得た情報などを交えてリポートします。

2022年のG7デジタル大臣会合に、日本代表として参加。先進国に共通した「デジタル化の悩み」とは?
2022年のG7デジタル大臣会合に、日本代表として参加。先進国に共通した「デジタル化の悩み」とは?

 ちなみに、前述のランキングでは、日本は29位。前年の21年よりもさらに順位を一つ下げる結果でした。ただ、これにはカラクリがありました。IMDのランキングがどのような数値の積み重ねで決まっているのかをご紹介しています。

 もう一つ、牧島氏にしか書けない目線で語られたのは、デジタル庁発足初年度に参加した、G7のデジタル大臣会合です。22年はドイツで行われ、各国の代表者と率直に「デジタル化の悩み」について話し合いました。そこで分かったのは、「先進国の悩みは共通している」というもの。エストニアやデンマークとは違った異なる背景や事情とは何だったでしょうか。

 以下の章では、デジタル化に立ちふさがる日本ならではの課題や、理想とすべきデジタル社会とは何なのか、日本はこれからどうあるべきなのか、などについて、牧島氏が独自の目線で分かりやすく解説します。

 そして本書の目玉は、第5章の「デジタル大臣鼎談」です。22年12月に、史上初となる「デジタル大臣経験者3人による鼎談」を、初代大臣の平井卓也氏、第3代の河野太郎氏とともにデジタル庁で行いました。

初代大臣の平井卓也氏、第3代大臣の河野太郎氏と行った「デジタル大臣鼎談」。デジ庁への思いや「勧告権」への考え方から、デジ庁周辺のランチ事情まで、経験者ならではの言葉が次々飛び出した
初代大臣の平井卓也氏、第3代大臣の河野太郎氏と行った「デジタル大臣鼎談」。デジ庁への思いや「勧告権」への考え方から、デジ庁周辺のランチ事情まで、経験者ならではの言葉が次々飛び出した

 どんな重厚な内容になるのかと思いきや、始まりは「デジ庁周辺のおすすめランチ」の話。和やかなムードでスタートしましたが、すぐに3人によるデジ庁やデジタル化への熱い思いが語られます。さらには、デジタル化を強力に推し進めている「意外な官庁」や、デジタル化を独自に進めている「スター自治体」など、今だから話せるこぼれ話なども満載でした。40ページにわたって、余すところなく収載しています。

 日本のデジタル化の後れを卑下し、デジタル庁を否定するのは簡単です。しかしそれだけでは何も生まれません。牧島氏は、本書はデジタル庁へのエールでもあり、日本がデジタル社会を進めていくための、みんなで一緒に歌う応援歌でもある、と言います。必要なのは、日本の現在地を正しく知り、デジ庁がミッションとして掲げる「誰一人取り残されない、人にやさしいデジタル化を。」をどうすれば推進できるのか、日本人一人ひとりが考えることです。「日本はデジタル先進国になれるのか?」。この本を読みながら、ぜひ日本のあるべき姿を考えていただければ幸いです。

≪目次≫

第1章 デジ庁を叩いて得をする人はいるのか
第2章 日本のデジタル化の現在地
第3章 こんなところにあった、日本の強み
第4章 DXを阻む難敵に「アジャイル」で立ち向かう
第5章 デジタル大臣鼎談
第6章 理想とするデジタル社会とは?
第7章 日本はどこまで行きますか?

【書籍の購入はこちら】

書名:『日本はデジタル先進国になれるのか?』(日経BP)
著者:牧島かれん
定価:1800円(税別)
発売日:2023年2月20日
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【著者について】

牧島 かれん
衆議院議員・第2代デジタル大臣
1976年11月1日、神奈川県生まれ。2000年、国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。01年、米国ジョージワシントン大学ポリティカル・マネージメント大学院修了(修士号取得)、米国エール大学ウィメンズキャンペーンスクール修了。08年、国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程修了、学術博士号取得(Ph.D)。12年に衆議院議員初当選。内閣府大臣政務官(地方創生・金融・防災担当)などを経て、21年10月に第2代デジタル大臣に就任。内閣府特命担当大臣(規制改革)、行政改革担当大臣として初入閣。22年8月まで務めた。狩猟(わな)免許、野菜ソムリエ、防災士の資格を持つ
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