軽井沢町に本社を構える1997年創業の老舗クラフトビールメーカーであるヤッホーブルーイングが、希有なマーケティング手法で売り上げを2021年現在まで18年間連続で伸ばし続けています。秘密は、顧客を自社および自社製品のファンと捉え、きめ細やかで、しかも温かみのあるコミュニケーションをとにかく大切にしていること。本著は、そんなヤッホーとそのファンたちとの関係をマーケティング視点でひもときます。顧客との関係性に悩む企業マーケターが次の一手を考えるうえでのヒントが見つかるはずです。

クラフトビール「よなよなエール」はなぜこんなに愛され続けるのか

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 「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングが、クラフトビール市場で躍動している。2020年11月期には、18年連続で増収を達成。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で苦戦する大手ビールメーカーがある中、20年12月~21年2月(第1四半期)も売上高が前年比43%増となり好調が続く。

 なぜ同社は、業績を伸ばし続けられるのか。原動力になっているのは実は、ヤッホーが好きで、よなよなエールなどの個性的な同社のビールを愛飲し続けるファンの存在だ。ヤッホーは、同社製品の世界観(ブランド)や品質、機能に加え、会社の価値観にも共感・支持する人々をファンと定義する。そう。まるで仲間や親しい友人、同志に接するかのように、すべてのコミュニケーションを組み立てているのだ。その企業姿勢がファンの共感を呼び、さらにヤッホーの応援に熱が入るという好循環をつくり出している。

 こうした考え方は、消費者を顧客と捉えてテレビCMなどのプロモーションで新規顧客を一気に取り込む従来のマーケティング手法と比べると異質だ。しかし消費者の嗜好が多様化し、生活様式も大きく変わり、消費者との間に密な絆を築くことが難しくなりつつある今の時代にこそ求められる、新たな企業と消費者の関係性だろう。

 本書は、ヤッホーが約20年間にわたって実践 してきたファンを大切にする一連の活動の全貌を紹介するものだ。著者は、イベントなどを通じてファンづくりと向き合う専門ユニットを立ち上げ、今日ヤッホーが提供している数々のイベントを企画した中心人物である佐藤潤氏だ。次代のマーケティングはかくあるべし。本書を読めば、企業が取るべき次の一手が浮き彫りになる。

『18年連続増収を導いた ヤッホーとファンたちとの全仕事』

著/佐藤 潤
定価:本体1760円(税込み)
体裁:四六判、240ページ

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【目次】

   “てんちょ”からごあいさつ
1章 なぜヤッホーブルーイングは、ファンをこれほど大切にしているのか
2章 ローソンと共同開発「僕ビール君ビール」に見るファンづくりの神髄
3章 醸造所見学は、愛されるための入り口 総出でファンの知りたいに応える
4章 ファンが自信を深める場所 公式レストランの本当の価値
5章 なぜ5000人が「超宴」に夢中になるのか ヤッホー流イベント企画術
6章 「ヤッホーが大変そうなら私たちがやります」 自ら動き出すファンたち
7章 ファンとのエンゲージメント効果は「NPS+熱狂度」で検証する
8章 全員が「知的な変わり者」を目指す フラットな組織文化が人を育む
9章 「よなよなエール」がファンに愛されるまで 長くて厳しい歴史と道のり
   感謝の気持ちを込めて

【著者】

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佐藤潤(さとう じゅん)
1976年、東京都生まれ。2000年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に新卒で入社。インターネット事業部にて事業の立ち上げや、インターネット事業部の宣伝に責任者として従事 。12年、ヤッホーブルーイングに中途入社。通販部門、プロモーション部門、ファンベースマーケティング部門の部門長を歴任。19年、ファンとのコミュニケーション施策を設計する「よなよなピースラボ」を立ち上げ、ラボ長に就任。現在に至る。オンラインとオフラインを問わないファンとのコミュニケーション施策のため、CRMの設計やCXデザインを探求する。趣味はピアノで、息子との連弾を楽しむほか、中島みゆき「糸」をもっか練習中。好きなものは、母の出身地である鹿児島県奄美大島の黒糖焼酎「里の曙」や父の出身地である宮城県仙台市の銘菓「ずんだ餅」など。好きなビールは、もちろん「よなよなエール」。