キャッシュレス、D2C、MaaS、サブスク――日経クロストレンドは2018年4月の創刊から、こうした新たなビジネストレンド(潮流)を追いかけて参りました。新型コロナウイルスでビジネス環境が激変するなか、テレワークやイベントのオンライン化といったデジタル活用はさらに重要性が増しています。
近年、「DX」(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)というキーワードが注目されていますが、日経クロストレンドの20年の注力テーマは「マーケティングDX」です。
DXは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、 データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(経産省「デジタル経営改革のための評価指標 「DX推進指標」資料より)と定義されています。このDXをマーケティングや新規事業開発の視点から実行していくのが「マーケティングDX」です。
キャッシュレス、D2C、MaaS、サブスクなどが普及段階に入ると、新たな顧客データが次々に生まれます。こうしたデータをどう活用して、商品・サービス開発やプロモーションなどに生かすのか――これが企業の生き残りを左右する時代だと考えています。取得したデータを分析してマーケティングを高度化していく。3つの要素がサイクルを形成するように支援するITの仕組みがマーケティングDXの根幹です。
これから企業に必要なのは、デジタル技術で新たな価値やビジネスモデルを創出し、売り上げを向上させる真の競争力です。日々の業務で消費者を“感じている”マーケティング担当者の知見がしっかり反映されたITの仕組みが不可欠なのです。
創刊2周年の特集では、マーケティングDXをキーワードにさまざまなDXの現場を取材してみることにしました。
第1弾は、特集「『個人経済圏』プラットフォーマー新時代」(3月30日スタート)です。この特集はマーケティングDXサイクルの中で「新たなデータ」をテーマとしました。個人間の取り引きという新たなデータがプラットフォームに蓄積されていくからです。今後は、そうしたデータを個人が活用できるようにする動きも見られます。個人経済圏の拡大は、個人のマーケティング力の高度化にもつながるのです。
続く特集「日本でも進む“無人店舗”への動き」(4月6日スタート)は、「個人経済圏」特集と同じく「新たなデータ」をテーマとして扱います。日本では人手不足への対応策として省力化が喫緊の課題です。ひとたび無人店舗の実現に向けて舵を切ると、省力化が優先されがちで、データ活用は後手に回りがちです。そんな状況の日本でも、新たなデータの獲得と活用を念頭に置きつつ、無人化でユーザーの体験を変革する試みが始まっています。無人店舗は近い将来マーケティングDXの進展に大きなインパクトを与えそうです。
4月13日スタートの特集「発進「日本版5G」実サービスの真価」では、「新たなデータ」「データ流通・分析」の2つがテーマになります。高速大容量・低遅延・多接続という特徴を持つ5Gは、我々の仕事や生活の現場から情報を収集するIoT、その情報を分析するAI(人工知能)をつなぐ架け橋としての役割を持つようになります。5Gの浸透は、マーケティングの世界にも劇的な変化をもたらします。
なお、4月から特集記事は月曜日と木曜日を中心に配信します。
日経クロストレンドは20年、マーケティングDX関連の記事を強化しています。下記のようなキーワードに注力して企業の成功事例を充実させるほか、海外の成功事例も多数掲載する方針です。ヒット商品や注目商品など情報収集向けの記事においても、その商品が生まれた背景、とりわけ「どのように収集したデータをどのように活用して商品化に結び付けたのか」をできる限り盛り込みたいと考えています。より一層、読者の皆さまのお役に立てる日経クロストレンドを目指します。引き続きよろしくお願いします。
日経クロストレンド編集長 吾妻拓