USEN-NEXT GROUPのUSENは新サービスを2020年9月に発表。無線回線ネットワークを駆使したDXソリューションを展開することで、IP電話からキャッシュレス、音楽配信、監視カメラなどを連携させた。

協力:USEN

 2018年、従来の店舗向け音楽配信事業から総合的な店舗支援サービス事業へと舵を切り始めたUSEN。2020年9月に新サービス「USEN IoT PLATFORM」を発表し、ネットワーク技術を駆使した店舗支援事業へ攻勢を強めている。

 同社取締役事業開発統括部長の塚本健太氏は、2020年11月18日に開催したオンラインセミナー「飲食店経営DXセミナー」にて、同社の新事業の全貌について解説した。

USEN 取締役 事業開発統括部長 塚本健太氏
USEN 取締役 事業開発統括部長 塚本健太氏

店舗ネットワークの中心に位置する「U AIR」

 USEN IoT PLATFORMの中核となるのが無線通信サービス「U AIR(ユー・エアー)」だ。NTTドコモのLTE網(MVNO)を経由して、店舗内にWi-Fiネットワークを構築する専用端末がその正体となる。

 店内に設置した機器本体の電源を入れるだけで、近在するNTTドコモ基地局の電波を拾い、自動的にインターネットを接続する。そして、店舗で使用するIP電話、USENの主力事業である音楽配信、店内監視カメラ、POSレジ、キャッシュレスといった店舗向けサービスのデータ転送を束ねるのがU AIRの役割だ。月額2,500円のU AIRベーシックプランでは、POSレジ(本体別)や電子決済などのサービスまでで、そのほかのサービスへの接続は月額3,500円のプレミアムプランでの対応が可能となる。

USEN IoT PLATFORMの連携サービス
USEN IoT PLATFORMの連携サービス

 U AIRが一般向けの無線通信と違うのが、USENの各種サービスを使うことを前提に通信速度を安定的に供給する点だ。NTTドコモの無線回線帯域のうち、USEN専用帯域が割り当てられており、仮にNTTドコモ回線が混雑しても、その影響を受けずに安定した通信速度を維持できるという。キャッシュレスなど外部システムとの通信トラブルが許されないサービスでも、安定的に利用できるような設計になっているわけだ。

 U AIRの導入には店舗へ回線を引き込むための工事をする必要がないことも、小規模な飲食店にとって大きなメリットの一つ。さらに、機器設置から運用に至るまでのサポートも、全国で1,000人を数えるUSENの技術スタッフが現場で対応する。設置のハードルを下げ、技術的なサポート要員も整えることで、システムを導入する負担をなるべく減らしたことが最大の強みだと言える。

AIが最適な音楽プログラムをチョイス

 そのU AIRを配信基盤にして、IP電話の「U PHONE」、AIを使ったBGM「U MUSIC」、顔認識機能を持つ監視カメラ「U EYES」といったUSENの各種サービスが稼働する。その中でも音楽配信サービス「U MUSIC」は、USENが60年間培ってきた音楽配信のノウハウが詰まった事業だ。

U MUSICのサービスイメージ
U MUSICのサービスイメージ

 U MUSICはU AIRが内蔵された専用STB(Set Top Box)と付属のタブレットで操作する音楽配信サービスで、AIが利用店舗のニーズに合わせて500万曲の中から最適な曲を自動的にプログラムしてくれる。飲食店のカテゴリや店内の雰囲気、オーナーの希望イメージなどのパラメータを入力すると、配信時間(朝、昼、夕方、夜など)や天気情報なども加味して、その店オリジナルの音楽プログラムをAIが編成するのが特徴だ。

 USENでは、提供している500万曲すべてに「季節」や「天気」、「内装雰囲気」、「客層」といった項目のスコアをつけて管理している。そのスコアの種類は約400項目。最初にプロの音楽編成担当が、約30万曲を400項目に渡って採点。その採点結果を踏まえ、AIが音楽の特徴などの相関関係を分析し、500万曲全てを採点・分類した。「これまでUSENが培ってきたプロの知見が入っており、安心して使ってもらえる」(塚本氏)。

 U MISICにはBGMだけではなく、「店内アナウンス」データも収録されている。プロのナレータが読み上げたアナウンスが1,000種類用意されており、店舗でのニーズに合わせ、定期的に店内アナウンスを入れられる。「あるスーパーマーケットで、クリスマスシーズンにケーキ販促アナウンスを入れた店舗と、配信しなかった店舗で売り上げに約3割の差が出た」(塚本氏)という。

店舗内監視カメラもAIで来客構成を自動分類

 AIの活用は、監視カメラサービス「U EYES」にも生かされている。店舗入口近辺に設置したセンサーカメラの映像に映し出された来客の顔認識から年齢や性別などをAIが推定。その結果を1時間単位で付属のタブレットの専用ダッシュボードで確認が可能。オーナーはそのデータを活用することで、メニュー構成の変更や、営業方針を練り直す手掛かりとなる。

 さらに、U EYESの映像をAIが把握することで、店内にいる顧客層に合わせたBGMに切り替えるということも可能だ。来客した人の年代に合わせたヒット曲をBGMにするという配慮をAIが人間に代わってやってくれる。

 このほか、3分7円で通話ができる専用スマホ付きの「U PHONE」やPOSレジアプリ「Uレジ」、キャッシュレス決済「Uペイ」といったインフラ関連だけではなく、コロナ対策として店舗内メニューを顧客のスマホで閲覧できるようにする「My Menu」(無料)など、さまざまな角度から店舗運営を支援するDX(デジタル・トランスフォーメーション)ソリューションを提供し始めているUSEN。

 60年前に店舗がBGMのレコードを取り換えるという作業をアウトソーシングさせることでスタートした同社は、代表取締役社長の田村公正氏就任以降、大きく事業内容を変化させてきた。「お客様に寄り添い、耳を傾け、新たな課題を解決し続けてきた自負がある」と自社サイトで田村社長がメッセージを発しているように、コロナ禍でDXを急速に進めざるを得なかった飲食業界の「課題」を、USENならではのアプローチで解決しようとしている。今後、新しいソリューションが増えていけば、店内のシステムが丸ごとUSENサービスに置き換わることもあり得そうだ。

本記事の講演動画はコチラ

この記事をいいね!する