コロナ禍にあって、最も打撃を受けている外食産業。先行きはますます不透明で、飲食店が生き残るために、目先だけでなく中長期的に考え、抜本的な改革に取り組まなければならない状況にある。こうしたなかで、キーワードとして語られるようになっている取り組みが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」。飲食店にソリューションを提供する企業の最新事例を、11月18日に開催したオンラインセミナー「飲食店経営DX」から探った。

協力:LINE

 飲食店が売り上げを伸ばしていくためには、新規顧客の獲得とリピーター確保の両方を、同時に実現していくことが重要となる。様々なIT企業がそのソリューションを提供しているなかで、「ローカルビジネス事業部」を11月に新設し、個店や中小規模の飲食店をサポートすることに本腰を入れ始めているのがLINEだ。

 LINEは、月間利用者数8600万人、そのうち毎日利用する率が85%(いずれも2020年9月時点)にものぼる生活に密着したコミュニケーションツール。ビジネス利用も活発だ。特に企業や店舗がLINE上でアカウントを作り、「友だち」としてつながったユーザーへダイレクトに情報を届けられるサービス「LINE公式アカウント」は、顧客のリピート促進、CRMの観点から、現在、様々な業種、企業での利用が進んでおり、月に一度以上利用している「アクティブアカウント」は24万(2020年9月時点)に達する。なかでも利用率が最も高いジャンルが飲食店だ。

「LINE公式アカウント」の利用率が最も高いジャンルが飲食店
「LINE公式アカウント」の利用率が最も高いジャンルが飲食店

 例えば、お好み焼・もだん焼をはじめとした大阪のご当地グルメ等を提供している「ぼてぢゅう」ではLINE公式アカウント開設後、クーポン施策を中心に友だち集めを実施。結果、現在では全店舗の総「友だち」数が約44万人まで増加。月に1回、割引等が受けられるお得なクーポンを配信することで、常連客を確保し、来店頻度が高まるという効果を得ている。

「ぼてぢゅう」はLINE公式アカウント開設後、クーポン施策を中心に約44万人の「友だち」を獲得
「ぼてぢゅう」はLINE公式アカウント開設後、クーポン施策を中心に約44万人の「友だち」を獲得

 また、全国でチェーン展開するラーメン店「一風堂」では、雨の日は替玉が1玉無料となるLINE限定クーポン「雨玉」を配信するなどLINE公式アカウントを活用。ある雨の日は、1日の来店者700人のうち100人がLINEのクーポンを利用するなど、クーポンきっかけの来店者が大幅に増加している。

「一風堂」は店舗ごとのLINE公式アカウント運用によって集客
「一風堂」は店舗ごとのLINE公式アカウント運用によって集客

テイクアウトやデリバリーの売上増にも威力を発揮

 一風堂では、「雨玉」クーポンのように店舗別の配信を行うほか、新メニューの告知など全店で開催されるイベント情報などを配信する「全店配信」と、新店のオープン告知、地域性のある情報を配信する「エリア配信」を本部主導で行い、複数の配信グループを使い分けている。

 こうした店舗配信、全店配信、エリア配信の併用について、「メリットは主に3つある」と話すのは、LINE広告事業本部 ローカルビジネス事業部 事業部長の富永翔氏だ。

 「1つは、売れる商品は地域特性や住民層など、商圏ニーズによって異なること。特に広範囲に店舗が及ぶ全国チェーンなどは、エリアによってニーズが大きく変わる場合もあるので、エリアごとに柔軟に配信設定する方が、ユーザーの満足度も高いです。

 2つ目は、エリアによってニーズが変わるのと同様に、店舗別の情報配信も必要なこと。例えば、営業時間など、全国の情報をまとめて配信しても、ユーザーにとっては見づらい。個店でLINE公式アカウントを開設することで、店舗別に特化した情報を届けることが可能になります。

 3つ目は、従業員のやる気が売上にダイレクトに伝わること。『友だち』数やクーポン使用数など、わかりやすい指標を設けることで、現場のやる気がアップし、最終的には売上につながることも多い。各店舗のアカウントの『友だち』数をランキング化し、上位の店舗にインセンティブを与えるなどの取り組みによって、モチベーションを高めることもできます」

配信グループを複数使い分けることで様々なメリットが得られる
配信グループを複数使い分けることで様々なメリットが得られる

 つまり、全国チェーン店の場合、本部で一括した運用だけでなく、個店ごとの施策を使い分けることで、総「友だち」数を底上げすることが可能で、ひいては、売上への貢献も大きくなる。ただ一般的に、アカウントを複数運用するということは、それだけ手間がかかるが、LINEではアカウント管理をグループ化する機能などで、配信のマルチ運用のハードルを下げている。

 一方、LINE公式アカウントを活用して、テイクアウトやデリバリーの売上を伸ばしているケースもある。

 川越で20年続く焼肉店「シンラガーデン」では、もともと「友だち」追加には力を入れており、店頭オペレーションにも「友だち」追加を促すトークを組み込んでいた。LINE公式アカウントの「友だち」追加をすると「たった今、A5黒毛和牛の肉寿司が29円で食べられる」や、「今後、限定のクーポンや、お得な情報が届く」という「友だち」になるメリットを訴求し、1万名ほどの「友だち」を獲得していた。

 2020年4月、店舗の営業自粛を決断し、以降5月末までの2カ月間、テイクアウト・デリバリーサービスのみに切り替えて営業したが、このときにLINE公式アカウントのメッセージ配信を使って告知。お弁当の販売数は月間で5000個にも及び、売上は前年同月比121%を達成した。

「友だち」で顧客を囲い込んでおくことが新たな施策の生命線に
「友だち」で顧客を囲い込んでおくことが新たな施策の生命線に

飲食体験をLINE上で完結させる新サービス

 こうしたリピート客の確保と情報発信に効果を発揮するLINE公式アカウントだが、新規顧客獲得につながる新サービスとして「LINEで予約」を11月16日にスタートさせた。

 「LINEで予約」とは、LINE公式アカウントからオンラインでの即時予約や、LINEのトークを通じた自動応答での予約、または有人での予約が可能なサービス。アプリを切り替えることなく、LINEの中で直接予約ができる。

 「『LINEで予約』を利用すると、LINE公式アカウントのプロフィール画面上に予約導線を設置することができるようになり、LINEコール(ユーザーがLINEアプリ上から企業・店舗のLINE公式アカウントに無料で音声・ビデオ通話ができる新機能)を使うと、ネット予約と電話予約がLINE上でできるようになります」(富永氏)

新規顧客獲得につながる「LINEで予約」が11月16日にスタート
新規顧客獲得につながる「LINEで予約」が11月16日にスタート

 今後は、予約履歴を活用したメッセージ配信機能もできるようになる。例えば、先月予約したユーザーや属性を指定して、再来店を促す特別なメッセージを配信できるようになるという。

 また、2021年3月には「LINEプレイス」というLINE上でお店選びができる新しいメディアを立ち上げる予定。気になったお店を「コレクション」として記録したり、その「コレクション」をLINEで「友だち」にシェアできるようになる。3月の時点では、飲食店のみの掲載となるが、今後、業種を拡大していく方針だ。

LINE上でお店選びができる新しいメディア「LINEプレイス」が2021年3月にスタート予定
LINE上でお店選びができる新しいメディア「LINEプレイス」が2021年3月にスタート予定

 「LINEで予約」と「LINEプレイス」の実装によって、お店探しから予約完了、さらには再来店までがすべてLINE上で完結するようになる。飲食店と8600万人のユーザーをつなぎ、ユーザーの日常に最も近い存在を目指す“Life on LINE”のコンセプトを体現するサービスとして、LINEが進化している。

「LINEで予約」に加え、「LINEプレイス」が実装されると、お店探しから予約、再来店まですべてがLINE上で完結するように
「LINEで予約」に加え、「LINEプレイス」が実装されると、お店探しから予約、再来店まですべてがLINE上で完結するように
本記事の講演動画はコチラ
1
この記事をいいね!する