低糖質で栄養価が高いアーモンド。人気急上昇のアーモンドミルクの影響もあって、その健康効果が脚光を浴びている。要注目の2大効果や取り方のコツを、栄養療法にも詳しい皮膚科医の髙瀬聡子氏に聞いた。

協力:江崎グリコ

豊富なビタミンEによる抗酸化力で免疫を強化

 コロナ禍で多くの人の関心を集めたキーワードの一つが「免疫力」。風邪やインフルエンザなどが流行し始める今の時期も、予防のために“免疫力アップ”を意識する人は少なくないはずだ。そもそもなぜ免疫力は低下するのか。「その要因の一つとして、体内での活性酸素の発生が挙げられます」と、ウォブクリニック中目黒総院長の髙瀬聡子氏は説明する。

 「活性酸素とは、呼吸によって取り込まれた酸素が外部からのさまざまな刺激によって変化したもの。通常は体に備わっている抗酸化力によって制御されていますが、ストレスや睡眠不足、紫外線、喫煙、大気汚染物質などの影響を受けることで過剰になってしまうのです。体内で増え過ぎた活性酸素は中性脂肪やコレステロールなどを酸化させ、過酸化脂質という物質を発生させます。過酸化脂質は細胞にダメージを与え、動脈硬化などさまざまな病気や老化の要因になるほか、免疫力の低下にも関与していると考えられています」(髙瀬氏)

 活性酸素の過剰な発生を防ぐには、先に挙げたストレスや睡眠不足といった生活習慣を見直すことが基本。さらに活性酸素を除去する作用を持つ「抗酸化力」の高い食品を日常的に摂取するのも効果的だという。そこで注目されるのがアーモンドだ。

 「優れた抗酸化作用を持つ成分の一つにビタミンEがありますが、その含有量がアーモンドはとりわけ多いのです。ビタミンEはナッツ類全般に豊富に含まれていますが、可食部100g当たりに含まれるビタミンEが落花生では10.1mgなのに対し、アーモンドは30.3mgと3倍も含まれています(※)」(髙瀬氏)

髙瀬 聡子氏
ウォブクリニック中目黒総院長
1995年慈恵会医科大学卒業。同大学附属病院で皮膚科医として勤務。アトピー外来、レーザー外来などを担当。2007年1月「ウォブクリニック中目黒」を開設。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本抗加齢医学会、日本香粧品学会、日本レーザー医学会正会員。『ゆる美容事典「ほどほど」「ズボラ」で美肌を手に入れる』(講談社)など著書多数

 酸化は“体のサビ”によく例えられるが、“体の焦げ”といわれる「糖化」に対しても、アーモンドの健康効果が期待できるという。

 「食事などから取った余分な糖が体の中のたんぱく質と結びつくと、たんぱく質が変性し、『AGEs(糖化最終生成物)』という物質が生じます。AGEsは一度つくられると元には戻らず、体内に蓄積されていきます。その結果、糖尿病や腎機能の低下、動脈硬化といった病気のリスクを高める要因となると考えられています。また、老化の要因にもなり得ることから、“加齢物質”とも呼ばれています」

 そのAGEsが、アーモンドを継続的に摂取することで減少するという研究結果もあるという(グラフ参照)。「メカニズムについてはまだ解明されていませんが、アーモンドに含まれる脂質の大半を占めるオレイン酸が関与しているのではないかという説が出てきています」(髙瀬氏)

1日25g(25粒相当)のアーモンドを摂取するという実験を半年間にわたり行ったところ、被験者19人のAGEsの割合の平均値が3カ月で約10%、半年で約20%減少した。なお、食事などの生活習慣はまったく変えていない。<br>出典:井上浩義『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)
1日25g(25粒相当)のアーモンドを摂取するという実験を半年間にわたり行ったところ、被験者19人のAGEsの割合の平均値が3カ月で約10%、半年で約20%減少した。なお、食事などの生活習慣はまったく変えていない。
出典:井上浩義『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)
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(※)出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

アーモンドの継続摂取で「やせた」という報告も

 アーモンドに含まれる脂質のオレイン酸は、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールを減少させる作用があるといわれ、“体に良い油”としても知られる。さらに最近ではテレビなどのメディアで肥満予防効果についても取り上げられ、ますます注目が高まっている。

 「肥満の大きな原因の一つは、言うまでもなく食べ過ぎにあります。オレイン酸には脳の満腹中枢を刺激する作用があるため、食欲を抑え、食事量を減らす効果が期待できるのです。オレイン酸を含むアーモンドを食前や食間に摂取するとよいでしょう」(髙瀬氏)

 先に挙げたデータ「アーモンド摂取による加齢物質AGEsの減少」と同様、そのメカニズムはまだ明らかにされていないが、アーモンドの継続摂取で体重が減少したという研究結果もある(グラフ参照)。1日25粒のアーモンドを食べ続けると、3カ月過ぎたあたりから体重が減り始めたというのだ。

食事などの生活習慣は変えず、1日25g(25粒相当)のアーモンドを摂取するという実験を半年間にわたって実施。結果、被験者19人の平均の開始時体重69.1kgが終了時には65.7kgに。半年間で平均3.4kgの体重減となった。<br>出典:井上浩義『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)
食事などの生活習慣は変えず、1日25g(25粒相当)のアーモンドを摂取するという実験を半年間にわたって実施。結果、被験者19人の平均の開始時体重69.1kgが終了時には65.7kgに。半年間で平均3.4kgの体重減となった。
出典:井上浩義『アーモンドを食べるだけでみるみる若返る!』(扶桑社)

 「アーモンドには食物繊維や、鉄、亜鉛といった必須ミネラルも多く含まれています。食物繊維は腸内環境を整え、便秘などの腸の不調の予防や改善効果が期待できるもの。ミネラルは年齢とともに低下しやすくなる代謝を促進する作用があります。いずれもダイエット中の人や、肥満の予防に努めている人こそ、ぜひ積極的に取りたい成分といえます。ただし、アーモンドは30粒で約180kcalあるので、ダイエット中なら1日30粒程度までを目安に取りましょう」(髙瀬氏)

効果的なアーモンドの取り方とは?

 いつでも手軽においしく味わえるのもアーモンドの利点の一つ。

 「小腹がすいたときにはアーモンドを数粒つまんでみる、間食で甘いものを食べることが多いならアーモンドに置き換えてみる。このように自分が続けやすい方法やタイミングを見つけて、長く継続していくことが健康維持のためには効果的です」(髙瀬氏)

 また、この1~2年で市場規模が大きく拡大しているアーモンドミルクは、髙瀬氏も個人的に長年愛飲しているそう。

 「薄皮をむいたアーモンドをすり潰して水を加えたものなので、アーモンドの栄養をそのまま、より手軽に取ることができます。牛乳や豆乳と比較すると、糖質やカロリーが低いのもポイントですね。忙しいときでもさっと飲んで栄養を摂取することができるので重宝しています」(髙瀬氏)