アメリカン・エキスプレスがコロナ禍においても好調だ。「高所得者向けのステータスカード」という従来型イメージ脱却を狙うアメリカン・エキスプレスで、個人向け商品企画などを担当する副社長・友松重之氏に、その戦略を聞いた。

協力:アメリカン・エキスプレス

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.にて個人事業部門で、主に商品企画/デジタル領域におけるケイパビリティ構築やアクイジション(新規顧客獲得)を統括し、副社長を務める友松重之氏。取材はオンラインで実施した
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc.にて個人事業部門で、主に商品企画/デジタル領域におけるケイパビリティ構築やアクイジション(新規顧客獲得)を統括し、副社長を務める友松重之氏。取材はオンラインで実施した

従来型の“ステータス先行”イメージをテクノロジーで更新

──アメリカン・エキスプレスのカードといえばトラベル&エンターテインメント分野に特長をお持ちですが、コロナ禍で打撃を受けたのではないでしょうか。

友松副社長(以下略) エアライン利用は大きな影響を受けましたね。当社が世界の空港で独自運営している空港ラウンジや、ホテル界のミシュランとも言われる「ファイン・ホテル・アンド・リゾート」(アメリカン・エキスプレスが独自基準と厳正な審査で参画ホテルを選考)の海外での優待利用は厳しい状況が続きました。一方、日常のお買い物や国内の近隣ホテル滞在に関してはコロナの影響をさほど受けることなく、多くのお客様にご利用いただいています。

 我々もこの2年は、日々の生活の延長上でも“豊かな時間を過ごした”と実感いただけるようなオファーや、体験の提供に注力してきました。例えば、感染対策に十分配慮し、ステイケーション利用を訴求するオファーをパートナーホテルと考えご案内したところ、大きな反響をいただきました。プラチナ・カード会員向けの1泊無料特典では、対象ホテルに2連泊以上ご予約いただいた場合、従来の無料宿泊分に加え5000円分のクレジット(ホテル利用券)を差し上げています。2泊あれば近場の滞在でも非日常感を味わえ、さらに優雅なティータイムまで過ごせる。そんな「体験」を通して、アメリカン・エキスプレスならではの価値に気付いていただけたのではと思います。

 半面、従来のステータスカードイメージが強すぎて、クレジットカード選びの選択肢になりにくい、というのは課題として捉えています。私自身、アメリカン・エキスプレスは「先端テクノロジーを搭載し、日常でも使いやすいカード」という新たなイメージを、ファクトベースで上書きしていく必要があると感じています。

──日常使いといえば、ファストフードやコンビニでのキャッシュバックキャンペーンも頻繁に行われていましたね。

 クレジットカードのタッチ決済機能(NFC)をまず認知していただくための仕掛けですね。コロナ禍で非接触がクローズアップされていますが、当社は2015年と、比較的早い時期から機能搭載を進めていたため、現在自社発行カードでは、一部の提携カードを除きほぼ100%実装済みです。昨年1年間、会員のタッチ決済利用件数は実に30倍以上に伸長しており、今後もこの流れは加速していくとみられます。

 また、家族カードの限度額を自由にオンラインで、かつ随時設定できる機能も新たに導入。一人暮らしや留学など、離れて暮らす家族への仕送り代わりにも、安心してお渡しいただけます。そのほか、カード紛失など万が一の場合は、会員様ご自身でスマホから一時的に利用停止できるといったテクノロジーもいち早く導入しています。

グローバルの知見を日本市場にいち早く投入

──NFCなどは、なぜ先行して先端技術を市場投入できるのでしょうか。

 弊社がグローバル企業であるということが大きいですね。例えばロンドンでは、もう何年も前から地下鉄やバス、ファストフード店でNFCが当たり前のように利用され、現金が使えないところも多い。我々はその流れに対応してきたおかげで、日本でようやくNFC普及に本腰を入れ始めたときには、すでに十分な知見を蓄え、それを活かした展開ができたのです。

 我々は決して予言者ではありませんが、海外で先行しているテクノロジーを十分に熟成させた状態で持ってこられます。それは、ユーザーからしたら、あたかも未来に「先回り」したサービスであるかのように感じられるかもしれません。

──ただ、カード選びの段階で年会費が障壁となっているのでは。

 お高くとまるつもりは全くないのですが、安易に年会費を下げたり、行き過ぎたポイント還元率競争に参加するつもりはありません。年会費以上の価値を提供し、それを会員の皆様に納得してお選びいただく。そのために、各種ダイニングやホテルでの特典、いざというときの多様な補償やスマホを活用した新機能にいたるまで、時代に合ったサービスへと更新し続けることを優先しています。

 ただお得を追求するのではなく、そこに「特別な体験」を足していきたいと考えていますし、この体験は会員様のライフスタイルに合わせて自由に選んでいただきたい。以前は招待制だったプラチナ・カードを申し込み制に切り替えた理由もここにあります。

プラチナ・カード®(左)はメタル製で、表面にはカード番号印字もなく独特の存在感が漂う。右はアメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード
プラチナ・カード®(左)はメタル製で、表面にはカード番号印字もなく独特の存在感が漂う。右はアメリカン・エキスプレス®・ゴールド・カード

 それに、年会費があるのにあえてアメリカン・エキスプレスをお選びいただいているということは、そのお客様にとっての「メインカード」である可能性が高い。実は、これはお客様のライフスタイルに合った「特別な体験」を提供するうえで、非常に大きな意味があるのです。

代表性の高いデータ活用こそ顧客満足度につながる

──なぜメインカードであることがメリットにつながるのでしょうか。

 メインカードは日常のあらゆる決済シーンで用いられるものだからこそ、そこにひも付くデータの正確性が高くなるのです。

 アメリカン・エキスプレスは世界各地の加盟店舗開拓と、会員獲得をはじめカード発行業務の大部分を自社で独自管理しています。加盟店とカード会員情報を一つの輪の中で管理しているので、利用状況やライフスタイルを緻密に、かつスピーディーに解析できる。それによって会員様の趣向を浮かび上がらせ、時にはあっと驚くような、かつフィット感のあるオファーや特典の提案が可能になります。

 徹底的にパーソナライズされたオファーなので、かなりの確率でお喜びいただけますし、加盟店とも会員様向けの独自特典開発を進めやすい。そうしてまたお客様へと還元するサイクルを回せるのです。

 先ほど「未来に先回りする」と言いましたが、ここでもまた、会員様が体験したことのない価値を先回りしてもっとご提案していきたいと思っています。

──セキュリティ面でも、正確なライフスタイルデータの解析は大いに役立ちそうですね。

 ええ、クレジットカードをはじめ、キャッシュレス決済を狙った不正利用の手口は日々高度に、複雑になっているうえ、国境を越え組織化された犯罪集団からお客様をお守りしなければなりません。我々は24時間365日、お客様の決済状況に対し、不正利用に特化したモニタリング体制を敷くとともに、機械学習やAIに基づくノウハウを蓄積。いち早く不正を検知できる仕組みを構築しています。決済傾向データをベースにしているからこそ、不正利用が疑われるケースが発生した際の迅速な通知や、疑わしい売上は状況が分かるまで請求をしないという、会員様に寄り添った対応も可能になるのです。

 万が一、こうした不正利用防止の網をすり抜けられてしまっても、アメリカン・エキスプレスは非常に手厚いプロテクション(補償)サービスもご提供しています。不正利用やオンラインでの買い物に対する補償のみならず、近年では「スマートフォン・プロテクション」も導入。スマホの破損もカバーできると大変ご好評いただいております。スマホは費用的にも大きな投資ですし、もはや生活に欠かせない重要なインフラですから。

──アメリカン・エキスプレスならではのプレミアム感と日常利用の手軽さは共存できるのでしょうか。

 もちろんです。プレミアムというのは、必ずしもラグジュアリーとイコールではありません。金額の多寡にかかわらず、お客様にとっての“気持ちよさ”の表現として捉えています。生活のあらゆる場面でアメリカン・エキスプレスを使うことによって、ふとした瞬間にちょっとした喜びや驚き、発見を提供できれば、それはプレミアムな体験と言えるのではないでしょうか。

 アメリカン・エキスプレスは、単なる決済代行サービスではありません。決済の裏側に必ずある、皆様の生活全般をサポートしていきたい。従来定評のある信頼と安心に加え、データ解析や最新テクノロジーを用いて、お客様の毎日の生活をより豊かにしたい。それこそが我々の使命であり、存在意義なのだと思います。

協力:アメリカン・エキスプレス

26
この記事をいいね!する