プラントベースフードへの注目度の高まりを受けて、今、豆腐加工食品が百花繚乱の様相を呈している。多様化する「豆腐市場」をけん引する人気豆腐メーカー2社にマーケティング戦略を聞いた。

協力/アメリカ大豆輸出協会

(左)相模屋食料 代表取締役社長 鳥越淳司氏、(右)アサヒコ マーケティング本部 池田未央氏
(左)相模屋食料 代表取締役社長 鳥越淳司氏、(右)アサヒコ マーケティング本部 池田未央氏
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新たな発想で「豆腐市場」は広がる一途

 環境負荷が少なく植物性たんぱく質が摂れるとして人気のプラントベースフード。この市場で今、急成長を見せているのが日本の伝統食「豆腐市場」だ。

 この流れをけん引するのが、老舗豆腐メーカーのアサヒコと相模屋食料。両社ともに、従来の豆腐の常識を覆す形状や味、食べ方の提案だけでなく、一部の製品のパッケージに、食品中に含まれるたんぱく質量や、サステナブルな大豆を原料として使っていることを証明するSSAP認証マークを表示するなど、革新的な戦略で製品展開を試みている。

 「TOFU BAR」のヒットで知られるアサヒコ・マーケティング本部の池田未央氏によれば、その開発の狙いは購買層の若返りにある。「豆腐は高齢の方が召し上がることが多い食品でしたが、米国視察で『TOFU』(豆腐)がたんぱく質の選択肢のひとつとして受け入れられているのを知り、日本の若い世代の方々にも食べてもらえるのではと考えて、手に持ってそのまま食べられるバーという形にたどり着きました」。手軽に食べられる「TOFU BAR」は、豆腐離れが進む若い世代にも受け入れられ、忙しい朝やオフィスで小腹がすいたときなど、植物性たんぱく質を摂取できるシーンも広がった。

 アサヒコが次に着目したのがたんぱく質の「質」だ。「多くの方は、たんぱく質の量にこだわっても質にはあまりこだわりません。そこで、コレステロールなどのいらないものをOFFして、植物性たんぱく質をINするというコンセプトの下、『TOFFU PROTEIN』シリーズを開発しました」(池田氏)。当初は肉に近い食感の「豆腐のお肉」や、コメの代わりに主食となる「豆腐のごはん」などを展開。「弊社では、一度豆腐を作ってからそれぞれの食品に加工していますので、柔らかいうえ、豆腐の栄養がしっかり含まれています」(池田氏)。その後、スープやデザートなどのラインアップを拡充し、同時に製品パッケージにたんぱく質量や糖質オフの%表示などを記載するようになった。「プリンや杏仁豆腐は乳・卵不使用、2022年6月発売の『豆腐バー』は動物性不使用なので、アレルギーのある方や極力動物性を控えたいという方にも楽しんでいただけると思います」(池田氏)。

 現在の購買層は40代、50代が中心だが、「今後は、より幅広い層に食べていただけるように、さらにラインアップを充実させていきたいと考えています」と池田氏は話す。

(左から)TOFU BAR、TOFFU PROTEIN 豆腐のお肉 ガパオ、TOFFU PROTEIN 豆腐バー(旨み昆布/バジルソルト風味)
(左から)2020年に発売したTOFU BAR、TOFFU PROTEIN 豆腐のお肉 ガパオ、TOFFU PROTEIN 豆腐バー(旨み昆布/バジルソルト風味)
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豆腐をアップデートする新発想でヒット

 一方、相模屋食料は「ひとり鍋」シリーズで、「レンジアップするとうふ総菜」という新たな市場を開拓した。同社社長の鳥越淳司氏は、「『豆腐といえば冷ややっこやみそ汁の具』という従来の常識をアップデートしたい、という思いからスタートしました。そこで、ただ豆腐を売るのではなく、ターゲットに向けてコンセプトや食べ方を提案していくことに注力して開発を進めて行きました」と言う。

 「ひとり鍋」シリーズは発売当初から多くの支持を得たが、予想外の発見もあった。「当初は一人暮らしの男性や受験生に手軽に豆腐を食べてほしいと考えた製品でしたが、実際の購買層は20~40代の女性が中心で、しかも独自にアレンジを楽しんでいるという大きな発見がありました」(鳥越氏)。そこで同社は、あえて余計な具材を入れず、シンプルにベースの豆腐のおいしさとそれぞれのスープのおいしさを追求。「横に展開するのでなく、スンドゥブであれば激辛やエビ風味など、深掘りしていくことで、人気が定着しました」と鳥越氏は語る。

 また、パッケージに「1食当たりのたんぱく質量」を明記したことも、さらなる売り上げ増加につながった。「これまでの豆腐製品で、機能性をうたって売れたものはありませんでした。それが、130%以上の売り上げ増という驚くべき結果となりました。『ひとり鍋』シリーズで、豆腐を『副菜』から『主菜』にまで高められたと感じています。次は『主食』としての可能性を広げたい」と鳥越氏は意欲を見せている。

(左から)ひとり鍋 濃厚豆乳たっぷりスンドゥブ、ひとり鍋 あさりの旨み!海鮮スンドゥブ、ひとり鍋 山椒がピリッときいた麻婆豆腐 中辛
(左から)ひとり鍋 濃厚豆乳たっぷりスンドゥブ、ひとり鍋 あさりの旨み!海鮮スンドゥブ、ひとり鍋 山椒がピリッときいた麻婆豆腐 中辛
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日本でも広がるSSAP認証マーク導入製品

 アサヒコ、相模屋食料の両社は、日本の食品業界において急速に広がるサステナブルな原料調達にもいち早く取り組んでいる。一部の製品にSSAP認証マークを導入したのもその一環だ。アメリカ大豆のサステナビリティ認証の4つのルールに基づいて発行されるSSAP認証マークは、「サステナブルで安心・安全なルールを守って生産されたアメリカ大豆」であることを、日本の消費者に見える形で提示するもの。「今後も導入製品を拡大したい」という両社が、その意気込みを語った。

 「アサヒコでは、『TOFFU PROTEIN』シリーズの9製品と『豆腐バー』2種にSSAP認証マークを導入しています。豆腐メーカーとして原料へのこだわりはもちろん、持続可能な世界を実現することが使命だと考えています。そのためにも原料である大豆から持続可能なものにしたい。そしてお客様にも共有していただきたいと思い、導入を決めました。主要製品である豆腐や揚げなど、可能な限り認証マークを広げていきたいと考えています」(池田氏)

 「相模屋食料の豆腐が、サステナブルな大豆を使用した『サステナブルフード』であることをお客様にも知ってもらいたいと考え、まずは春夏の定番である『おだしやっこ』シリーズにSSAP認証マークを導入しました。弊社の豆腐製品は、これまでレンジアップや、たんぱく質の機能性をうたうというステップを経てきましたが、3つ目のステップとして『サステナブル』にこだわりたい。それがSSAP認証マーク導入の理由です。本来、企業側が追跡しなければならない大豆の背景を、SSAP認証という形で提示してもらえるのはありがたい限りです」(鳥越氏)

環境への負荷が少なく、サステナブルな方法で生産・管理された大豆であることを証明する認証制度で出荷先の要望に応じて輸出時に証明書を発行する。4つのルールに基づきサステナブルに生産された大豆であることを証明する認証マークも発行している
環境への負荷が少なく、サステナブルな方法で生産・管理された大豆であることを証明する認証制度で出荷先の要望に応じて輸出時に証明書を発行する。4つのルールに基づきサステナブルに生産された大豆であることを証明する認証マークも発行している
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協力/アメリカ大豆輸出協会