RTD製品(レディ・トゥ・ドリンク=開けてすぐに飲める缶入り飲料)が売り上げを伸ばしている。コロナ禍の影響で「自宅飲み需要」が高まり、人工感が少なく、少しぜいたくな気分になれる品質の良い酒類を求める消費者が急増しているのだ。この新たな需要に対応すべく、キリンビールは「発酵レモンサワー」のリニューアルを発表した。自然の恵み「発酵」を活用した「発酵ナチュラル系」を開発コンセプトとして定義し、RTDへの期待が高まる人工感が少ない、高品質なお酒で「高付加価値化」を狙う。発表会には社長の堀口英樹氏が登壇し、RTD製品の拡大に挑む意気込みを語った。

協力/キリンビール

高付加価値製品で新市場を創造

 家庭向けの酒類市場において、RTD製品の売り上げが好調だ。2017年には98万2000キロリットルだった国内市場の販売量は、2021年には150万2000キロリットルと、5年間で1.5倍以上に伸びている。

家庭用酒類市場におけるカテゴリー別販売量の推移 ※出典:インテージSRI+
家庭用酒類市場におけるカテゴリー別販売量の推移 ※出典:インテージSRI+
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 これを受け、キリンビールはRTD製品に対する2つの戦略を発表した。1つは「氷結®」シリーズなど「既存ブランドの更なる成長」だが、注目すべきは2つ目の戦略、「高付加価値ブランドによる市場創造」だ。

 在宅ワークが普及し、自宅で食事や酒類を楽しむ機会が増えた。「人工感が少ない、高品質で、少しぜいたくなお酒を楽しみたい」という消費者ニーズが高まっている。そこを狙った戦略が「高付加価値ブランドによる市場創造」である。

 2022年3月8日、その中核となる製品「発酵レモンサワー」のリニューアルが発表された。キリンビール社長の堀口英樹氏は「創業から115年にわたり磨き上げてきた、自然の恵み「発酵」を駆使し、キリンらしいおいしさのレモンサワーを作りました」と自信を見せる。発売日は3月15日。アルコール含有量5%と7%の2種類の商品がある。

キリンビール 社長 堀口 英樹 氏
キリンビール 社長 堀口 英樹 氏
発酵レモンサワー
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 実は「高付加価値化」以外にもう1つ、コロナ禍が消費者にもたらしている重要な変化がある。自然の恵みを活用して作られた食事や飲料に対する消費者ニーズの高まりだ。

 キリンビールは「消費者がRTD製品に対して感じている不満」について調査した。その結果、実に80%以上が「人工感がある」と回答。これを受け、キリンビールはRTD製品が持つ人工感を払拭し、消費者の新たな志向に応える製品を検討した。その結果、自然の恵み「発酵」を活用した「発酵ナチュラル系」という開発コンセプトにたどり着いた。

 「当社独自の開発コンセプト『発酵ナチュラル系』がもたらした、はじめてのおいしさは第4次レモンサワーブームの到来を予感させます」と語るのは、キリンビール マーケティング部RTDカテゴリー戦略担当カテゴリーマネージャーの鈴木郁真氏だ。「自分時間」に楽しめるお酒として、RTD市場のさらなる拡大を目指す。

※20年キリン調べ。118人を対象にした調査
キリンビール マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 カテゴリーマネージャー 鈴木 郁真 氏
キリンビール マーケティング部 RTDカテゴリー戦略担当 カテゴリーマネージャー 鈴木 郁真 氏

 発酵は、創業以来ビールを提供してきた同社の王道ともいうべき基盤技術だ。自然の恵み「発酵」とそれによる「初めてのおいしさ」を追求することで、同社らしいレモンサワーが作れると考えた。

 発表会に登壇した堀口氏は「1人でも多くの方に新『発酵レモンサワー』の素晴らしさをお伝えしたい。全社を挙げて挑戦します」と、経営トップとしての意気込みを語った。同社のコンセプトである「発酵ナチュラル系」。その旗印となる新「発酵レモンサワー」の成功に向け、全組織が一丸となって挑む姿勢を印象づけている。

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※イメージです

酵母を一から見直し、香味成分を15%向上

 新「発酵レモンサワー」は2021年に発売した「発酵レモンサワー」をリニューアルした製品だ。現行品も好調な売れ行きを見せていたのだが、コロナ禍で変化する消費者のニーズに対応するためのリニューアルを断行した。例えば、アルコール度数の高いお酒を好んでいた人が、5%や7%と比較的低アルコールのお酒へシフトする動きが現れている。そうした消費者は、アルコール度数が低くてもしっかりとした味わいとおいしさを求める。

 レモン果汁を発酵させると、レモン独自のうま味成分が生まれ、酸味にも変化が現れる。生のレモン果汁を10%以上も入れると酸味や渋み、えぐ味などが前面に出やすくなるが、発酵レモン果汁を使うとまろやかになり、うま味や香味が増す。これが本製品の最大の特長であり、口に含んだ時に感じる豊かな味わいへとつながるわけだ。

生のレモン果汁と発酵レモン果汁を使ったレモンサワーの香味印象。発酵レモン果汁を使うとまろやかさや香味が増し、豊かなおいしさになる
生のレモン果汁と発酵レモン果汁を使ったレモンサワーの香味印象。発酵レモン果汁を使うとまろやかさや香味が増し、豊かなおいしさになる
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 今回はその効果をさらに高めるため、発酵に使う酵母を一から見直した。数十種類の中から厳選された新しい酵母は、現行品より香味成分を15%増加し、華やかさとフルーティーさを向上させている。

 その成果は、同社が実施した消費者調査にも明確に表れている。新「発酵レモンサワー」の香味印象は現行品と比べて大幅に向上。「バランスがとれた」「飲み飽きない味わい」「コクがある」といった意見が増えた。

 また、RTDに感じられる『人工的な感じがする』といった印象も、新「発酵レモンサワー」では大きく下がっている。市場が求める「品質の良さ」「人工感の少なさ」に応える新たなRTD製品が完成した。

 「人工感の少ない、品質の良いRTDはコロナ禍による一時的な需要ではなく、消費者の食のトレンドとしてしっかりと定着しつつあります。やさしい香味と味わいを持つRTDは、様々なシーンで気軽に楽しめるお酒として、今後も拡大していきます」(鈴木氏)。第4次レモンサワーブームを新「発酵レモンサワー」で盛り上げていきたいと語った。

著名人も注目する、品質の良い少しぜいたくなお酒

 3月8日に行われた新「発酵レモンサワー」の発表会には、消費者の代表としてタレントの安田美沙子氏と料理人の鳥羽周作氏が登壇した。

 2人の子どもを持つ安田氏は、コロナ禍以降、自宅で食事をする機会が増え、食生活に質の良い素材を使う意識も高まっているという。「味付けの濃いものを避け、素材の味を生かした料理を心掛けています」(安田氏)。子どもが乳児の頃は授乳のために酒類を控えていたが、それも1年ほど前に終えた。ご主人の外食も減ったことから自宅で一緒に食事を取る機会が増え、2人でお酒を楽しむこともよくある。新「発酵レモンサワー」については「本当においしくて感動しました。人工感が全く感じられなくて、華やかな酸味が口いっぱいに広がる。まるで日本酒やワインを飲んでいるような奥行きを感じました」と評価する。

 一方の鳥羽氏も、自宅でお酒と共に食事を楽しむ機会が増えた。新「発酵レモンサワー」の味わいについては「缶を開けた瞬間の圧倒的な香りに驚きました。レモンの風味がしっかりしていながらも酸味の角が丸いのは、確かな発酵技術によるものなんでしょうね。これは食中酒としてもぴったりだと思います」と評価した。加えて、自宅で飲むときは品質の良い少しぜいたくなお酒を選びたい気持ちもある。そんな意味から、自然発酵させたレモン果汁でできた新「発酵レモンサワー」は魅力的な製品であると感想を述べた。

 「発酵レモン果汁を使う」という酒類づくりの王道の発想から生まれ、発酵用の酵母を選び直してリニューアルした新「発酵レモンサワー」。高付加価値化という消費者ニーズに応え、RTD製品の印象を新たにする新製品として注目を集めている。