食品への異物混入事故が頻発し、食の安全性が揺らぐ中、異物除去に特化し事業を展開するスピンプライド。同社代表取締役の長谷川陽一氏に、目指すゴール、わずか0.7㎜の異物除去も実現する高精度の技術の裏側などについて聞いた。

協力:スピンプライド

商品全面回収に直結しかねない異物混入事故に遭遇し一念発起

 年5,000件ある食品の苦情の中で、約20%を占めている異物混入(※)。食に関するネガティブなニュースはマスメディアの報道も過熱化しやすく、特に現代はSNSなどによって情報が即拡散されてしまうため、企業側が商品回収や生産中止に追い込まれるといったケースも見られる。こうした異物混入は、企業にとって一時的な金銭的損失だけにとどまらず、長期的な信用・ブランド力の失墜に関わる大きな問題となり得るだろう。

 「日本の消費者は世界でもトップレベルで衛生観念に厳しく、求める水準は年々厳しくなっていく傾向にあります」。食品の異物混入を巡る一連の騒動の背景について、そう指摘するのはスピンプライド 代表取締役の長谷川陽一氏だ。同社は2017年12月に創業した、食品に含まれる異物除去を専門に受託加工する企業である。

スピンプライド 代表取締役 長谷川陽一氏。1986年より大手食品メーカー向けに食品中間原材料を納品する食品会社の営業マンとして30年余り勤務。食品クレーム対応を経験し、異物混入による商品回収、食品破棄が頻発する現状を鑑み、2017年12月にスピンプライドを起業
スピンプライド 代表取締役 長谷川陽一氏。1986年より大手食品メーカー向けに食品中間原材料を納品する食品会社の営業マンとして30年余り勤務。食品クレーム対応を経験し、異物混入による商品回収、食品破棄が頻発する現状を鑑み、2017年12月にスピンプライドを起業

 長谷川氏によると、「諸外国の法規制では、米国は『7mm超』が健康を損なう可能性がある、韓国でも『2mm以上』が検出されてはいけない物として定められています。一方、日本では食品衛生法で“人の健康を損なうおそれがあるものの販売等の禁止”が明記されているだけで、異物の大きさなどの具体的な基準がありません」。

 つまり、健康被害に至らずとも「食の安全性に対する世の中の懸念、不安の高まりを受け、企業はより精度の高い異物混入防止対策を迫られる時代に突入しています」と長谷川氏は話す。

 当然、各食品メーカーも製造現場に異物検知システムを設置し、対策を講じているものの、昨今の情勢を見ても十分といえるレベルには達していない。「特に資源の乏しい日本では、海外産に頼らざるを得ず、国内外の生産・製造現場すべてに、日本の消費者が求めるクオリティーを徹底するのはハードルが高いのが現状です」(長谷川氏)。

 実は、長谷川氏が創業を決意したのも、前職の食品中間原材料納入会社の営業マン時代、重大な異物混入事故に遭遇したのが契機となっている。「異物混入防止対策は講じていたのですが、委託する海外工場などの制約により、たびたび商品クレームが発生。ついに数十トンに及ぶ商品全面回収に直結しかねない事故の対応に追われることとなりました」(長谷川氏)。

 まさに修羅場をくぐり抜けたところで、「生産ラインの一工程ではなく、異物除去というプロセスにスポットを当てたビジネスの社会的要請が高まっていることをひしひしと認識しました」と長谷川氏は言う。顧客企業の信用、消費者の健康を守るとともに、一連の事故で発生する無駄な食品廃棄を減らしたい。そんな強い思いから独立を決意したという。

※東京都福祉保健局 食品衛生の窓「過去5年間における要因別苦情件数」

5つの選別機器を適正に組み合わせ、多様な“異物”に対応

 同社ではインスタント食品に入っているような乾燥野菜や穀類、香辛料といった乾物・顆粒品からの異物除去を専業とするが、その強みはどこにあるのか。ポイントは大きく3つある。

 1つ目が『徹底した衛生管理』だ。異物混入防止の大前提となるのが選別の現場に“異物を持ち込まない”こと。選別室に入る際の手洗い、エアシャワーなどを設定・順守するのはもちろん、商品・原材料を外から運び込むことを考え建物の構造も厳格化している。

 さらに「1つの商品選別が終了したら、機械をすべて分解し、部屋の天井・壁含め洗浄・殺菌。あらゆるルートからの異物混入・汚染を防止する対策を行っています」と長谷川氏。すべて“洗える”選別機・選別室を備えるケースはまれで、洗浄することにより多品目の選別も可能となっているのだ。

1日の選別作業が終わると、選別機、選別室内もすべて分解し、掃除・洗浄を実践。最後にオゾン水で除菌・脱臭を行い、一晩かけて乾燥。空調のフィルターも丸洗いするなど衛生管理を徹底している
1日の選別作業が終わると、選別機、選別室内もすべて分解し、掃除・洗浄を実践。最後にオゾン水で除菌・脱臭を行い、一晩かけて乾燥。空調のフィルターも丸洗いするなど衛生管理を徹底している

 2つ目が『少数精鋭体制』だ。異物除去については精度の高い選別機を独自のラインを組み実施しているが、「機械を適切に操作し、成果を上げていくには動かす人間のスキルも問われます」(長谷川氏)。

 現在、長谷川氏を含めメンバーは7人。スキルを擁す少数精鋭のチームで1ラインを回し、職場環境や労働時間を徹底管理。「将来的には10人未満で2ラインをフル稼働で回せるよう、日々、業務プロセスの効率化、適正化にも取り組んでいます」という。

 最後の3つ目が『精度の高い選別を実現している』ことだ。「混入し得る異物は想像以上に種類が多く、大小もさまざま。精度向上のために、選別機の特性を生かした適切なラインを組むことが重要になってきます」(長谷川氏)。

 同社では、以下に挙げる5つの選別機を組み合わせ、毛髪、金属、石、樹脂など幅広い異物の選別を実現。「金属球については直径0.7mm、ガラス球は直径2mmまでが選別可能です」(長谷川氏)。5つもの機械をそろえ、上記の厳しい両基準を満たしている企業は珍しく、業界トップクラスの精度を実現するとともに、収率(歩留まり)も95%以上を目標としているという。

精度の高い5つの選別機を導入。それぞれの機器の特性を生かし、最も高い選別精度を実現するべく独自のラインを組んでいる。流す製品の特徴によってラインを組み替えるなど柔軟に対応できるのもポイントだ
精度の高い5つの選別機を導入。それぞれの機器の特性を生かし、最も高い選別精度を実現するべく独自のラインを組んでいる。流す製品の特徴によってラインを組み替えるなど柔軟に対応できるのもポイントだ
極めて高い精度の選別を実現する5つの選別機
〇風力選別機
風の力を利用して、重い物と軽い物を選別。毛髪、ビニール片などの微細なゴミに対応。

〇パンチング
穴の開いた選別板を使い、穴の径より小さいものと大きいものを選別。枝、葉などの除去に対応している。

〇色彩選別機
カラーカメラと赤外線カメラを使い、異物を見分け、不良品をエアガンで吹き飛ばして選別。同色でも近赤外線により良品、不良品を見分けることが可能となっている。

〇ノンベルトレナスター
磁力選別機と金属検出機の複合機。まずは磁力選別機で磁性のある鉄、ステンレスなどを除去。さらに、金属検出機によって非磁性体の金属も除去する。

〇X線異物検査装置
最終工程でX線を照射し、透過レベルをラインセンサーで測定。製品の透過度の違いから、磁性のないガラスや石などを除去する。

新商品開発時のモニタリングなど“攻めの経営”にも活用度大

 同社では選別作業だけでなく、取れた異物の分析を行い、顧客企業の現場改善につながるフィードバックも実施。

 「異物除去に関するテクノロジーが年々、進化を遂げるとともに、日本人の食の安全や衛生に関する意識もさらに高まっていくことは自明の理です」と長谷川氏。新たな選別技術も積極的に取り込みながら、時代の要請に合わせ、さらなる精度アップにつなげる構えだ。

 “国際標準化機構(ISO)、食品安全システム認証(FSSC)などを導入し、衛生管理には問題ない”という認識についても、さまざまな製造現場を見てきた経験から「見えないところに思わぬ事故のリスクが隠されているものです」と長谷川氏は警鐘を鳴らす。人手不足も加速化する中、現場の実態は予想以上にひっ迫する傾向もある。これまで大きな事故がなかったとしても油断は大敵だ。

 また、異物混入への対応策となると、どうしてもリスクを減らすべく“守り”の方向に行きがちだが、長谷川氏は「新たな生産地や原材料を活用した新商品開発時のモニタリングにもぜひ活用いただきたい」と話す。小ロットのテストなど、スポット利用も可能なのは、小回りの利く少数精鋭のチームならではだ。

 「事前にリスクを察知し、対策を練ることで、新たなイノベーションにつなげる“攻めの経営”を実践する上でも、お役に立てるよう精進してまいります」と力強く語る長谷川氏。“縁の下の力持ち”ともいえる同社が食品業界をどう変え、支えていくのか。今後の進化にも注目したい。


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協力:スピンプライド