苛烈な競争環境の中、魅力的な新製品の投入やキャンペーンの展開で炭酸飲料市場をけん引する「コカ・コーラ」。東京2020オリンピックも開催されるビッグイヤーの2020年に向けて、どのようなブランド戦略で新たなステージを切り拓くのか。2019年の総括を含め、日本コカ・コーラの島岡芳和氏に意気込みを伺った。

協力:日本コカ・コーラ

島岡芳和(しまおか・よしかず)氏。日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 炭酸&エナジーカテゴリー バイスプレジデント
島岡芳和(しまおか・よしかず)氏。日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 炭酸&エナジーカテゴリー バイスプレジデント

“季節”と“イベント”を捉えるブランド戦略

 「『コカ・コーラ』のブランド・パーパス(Brand Purpose)は、『コカ・コーラ』独自のおいしさを通じて、楽しい時間や空間を共有し、世代や人種を超えてさまざまな人を繋ぐこと。そして、『コカ・コーラ』を常日頃飲んでくださっている方だけでなく、久しく『コカ・コーラ』を飲まれていない方にも改めて価値を感じていただくのが、我々のミッションです。

 そこで大事にしているのは、『コカ・コーラ』を飲用する総人数を増やすことです。特に日本はお茶や水、コーヒーが普及しており、海外と比べて相対的に炭酸飲料を日常で飲む割合が少ない。飲料のポートフォリオが多様化していて、選択肢が非常に多いわけです。その中で『コカ・コーラ』を能動的に選んでいただくために、日本の消費者に最適な『コカ・コーラ』の飲む契機・瞬間=ドリンキング・モーメント(Drinking Moment)を創り出していくことを、大きなテーマにしています」

 そう語るのは、「コカ・コーラ」のブランド戦略を担当する日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 炭酸&エナジーカテゴリー バイスプレジデントの島岡芳和氏だ。

 「コカ・コーラ」ブランドの2019年は「福ボトル」キャンペーンで始まった。「勝利祈願」「友運上昇」「挑戦成就」など、福ワードを70種類用意し、ラベルはおみくじ付き。正月、バレンタイン、受験や卒業などのシーズンに合わせて選ぶ楽しさを加えたボトルによって、さまざまな“願い”をかなえたい消費者を後押しした。

 また、クリスマスシーズンは、今年で4年目となる「リボンボトル」のウィンターキャンペーンを展開。同ボトルは、ラベルを剥がすとリボンに早変わりし、「コカ・コーラ」そのものがラッピングされた小さなプレゼントになる仕掛けだ。

 これらは、日本のさまざまなシーンに応じて「コカ・コーラ」を選択してもらうモーメントを創り出す、“季節”を捉えた試みである。

 2019年の「コカ・コーラ」ブランド戦略のもう一つとして島岡氏が話すのが、国民的な“イベント”を捉えるというアプローチだ。「何度も来るわけではない国民的なイベントで、感動するモーメントを共有したい。そういう気持ちになった時、高揚感と爽快感をもたらす『コカ・コーラ』を飲みながら、一緒に盛り上がって応援する。今年はそのような感動体験を捉えることを重視しました。新元号が発表になった日に“令和”が印字された『コカ・コーラ』をサンプリングしたのもその一つとなります」と島岡氏は狙いを語る。

 東京2020オリンピックを翌年に控えた2019年、炭酸飲料の需要が最も高まる夏には、東京2020オリンピックの聖火ランナーに応募できる大型のサマーキャンペーンを展開した。さらにラグビー日本代表のオフィシャルスポンサーとして、ラグビー日本代表選手限定デザインやラグビー日本代表ジャージーデザインも発売。幅広い年代で盛り上がったラグビーの国際大会をしっかりサポートし、日本代表の快進撃と共に売り上げを伸ばした。

魅力的な新製品の投入で、新規飲用者を掘り起こす

 新製品の投入も、「コカ・コーラ」を飲用する総人数を増やすための起爆剤となる。2019年9月には、秋の味覚の象徴で日本人に人気の高いりんごのフレーバーが楽しめる世界初の「コカ・コーラ アップル」を期間限定で投入。飲用機会の拡大を図った。

 「今までにない味わいの『コカ・コーラ』は、新しい飲用者を増やすとともに、最近『コカ・コーラ』から離れていた方たちにアピールする効果もあります。“これは何だろう?”と新しいフレーバーを体験してもらうことで、『コカ・コーラ』本来のおいしさを再認識し、コア製品に戻ってきてもらう。新製品の発売にあたっては、常にそのことを意識しています」

 2019年の新製品で注目を集めたのは、同年7月に発売された「コカ・コーラ」ブランド初のエナジードリンク「コカ・コーラ エナジー」だろう。

 「コカ・コーラ」のおいしさと爽快さはそのままに、エナジードリンクの刺激的な味わいを兼ね備えた同製品は、発売からわずか5週間で販売本数2000万本を突破、エナジードリンク市場の拡大に貢献する大ヒット製品となった。

 これは島岡氏にとっても予想を超える売れ行きだったという。そのヒットの理由を島岡氏は「『コカ・コーラ』ブランドから発売された初めてのエナジードリンクという話題性と、ブランドへの信頼性から導入期に“飲んでみよう”という方が非常に多かったです。そのインパクトが大きく、普段エナジードリンクを飲んでこなかった新規飲用者を多く獲得できたことにあります」と分析する。

「コカ・コーラ エナジー」250ml缶
「コカ・コーラ エナジー」250ml缶

高まる期待値のフェーズに合わせ、キャンペーンは進化する

 こうした数々の戦略が実って、「コカ・コーラ」は2019年も炭酸飲料市場でリーダーシップを取っている。島岡氏は「コカ・コーラ」ブランドの2020年の戦略をこう語る。

 「来年は、東京2020オリンピックという国民的なイベントがあります。『コカ・コーラ』には、アムステルダム1928大会以来、90年以上にわたりオリンピックを支援してきた歴史があり、消費者の中でもオリンピックといえば『コカ・コーラ』というイメージは強いと思います。そもそもオリンピックのような巨大なイベントは、新しい飲用者を獲得する最大のモーメントです。大会が盛り上がるタイミングに合わせて『コカ・コーラ』ブランドの露出をしっかり行い、『コカ・コーラ』を飲用する総人数を増やしたいと考えています」

 2020年の年明け1月6日からは「東京2020オリンピック観戦ペアチケット」が1,010組2,020名に当たるキャンペーンがスタートする。対象製品を購入した際に、「コカ・コーラ」公式スマートフォンアプリ「Coke ON」で「チーム コカ・コーラ オリンピック応援ポイント」を貯めると、12ポイントごとに抽選に参加できる仕組みだ。「コカ・コーラ」ブランド製品もその対象で、そのキャンペーンを象徴するのが現在発売中の「コカ・コーラ」オリンピック観戦チケットキャンペーンボトルだ。

 「オリンピックがあるから記念ボトルを出すという域を超え、大会に向けて高まる期待値のフェーズに合わせ、キャンペーンも進化させていきたいですね」と島岡氏は構想を話す。その背景には、2019年に日本を熱狂させたラグビーでの“反省”があるのだという。ラグビーは大会が始まってから急激な盛り上がりを見せたが、「もっと早くワクワク感をつくることもできたのではないか?」と島岡氏は振り返る。

 ラグビーの国際大会は開催期間が約1カ月半あったが、実は東京2020オリンピックの大会開催期間は約2週間と意外に短い。そこで、東京2020オリンピック聖火ランナーが走り始める春先から話題作りをスタートさせるなど、消費者の気持ちの高まりをキャンペーンの設計にうまく取り入れたいと考えているのだ。

 「オリンピックの楽しみはゲームそのものだけでなく、そのコンテクストを友人や同僚と話題にしたり、まだ見たことのないスポーツに関心を持ったりすることにもあります。オリンピック開催に向かう世間の盛り上がりを綿密に計算しながら、いろんな仕掛けを準備して、『コカ・コーラ』ブランドのファンを増やしていきたいと思っています」

「コカ・コーラ」オリンピック観戦チケットキャンペーンボトル 500ml PET(左から、「コカ・コーラ」、「コカ・コーラ ゼロ」、「コカ・コーラ ゼロカフェイン」)
「コカ・コーラ」オリンピック観戦チケットキャンペーンボトル 500ml PET(左から、「コカ・コーラ」、「コカ・コーラ ゼロ」、「コカ・コーラ ゼロカフェイン」)

飲用スタイルの多様化に合わせ、最適な新容器サイズを投入

 2020年の1月13日からは、持ち帰りに最適な新容器サイズが登場する。350ml PETと日本初導入の700ml PETを東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県内のスーパーマーケット、ドラッグストア、ディスカウントストアの約8500店舗で先行販売する。

 新容器導入の背景には、少人数世帯が増加して、炭酸飲料の飲用習慣が変化しているという事情がある。コンビニや自動販売機では、いわゆる“即時消費”が多いが、スーパーマーケットなどで購入される“将来消費”の場合、用途が多様化しているのだ。

 「例えば家では、少人数世帯化によって大型サイズを大人数で分けるより小型サイズを少人数でシェアして飲むことが多くなっています。炭酸飲料は、時間が経つと冷たさが消え、炭酸が抜けておいしさが失われてしまうため、飲み切りサイズが重要になると考えています」

 700ml PETなら、オリンピックを自宅で観戦しながら2人で飲み切るのにちょうどいい。チャネルごとの購買に合わせた新しいパッケージを、まずは一番需要が見込める東京2020オリンピック開催のタイミングで導入するという戦略だ。

「コカ・コーラ」の新容器サイズ(左:350ml PET、右:700ml PET)
「コカ・コーラ」の新容器サイズ(左:350ml PET、右:700ml PET)

 東京2020オリンピックが開催される2020年は、世代や人種を超えてさまざまな人を繋ぐという、「コカ・コーラ」のブランド・パーパスが最大限に実現されるチャンスとも言える。

 島岡氏はこう断言する。「家族や仲間たちと、楽しく盛り上がっている場面には、必ず『コカ・コーラ』が寄り添っていたい。オリンピックが最高に盛り上がるタイミングで、『コカ・コーラ』を思いっきりおいしく飲んでいただき、新しい時代に前向きに挑んでもらう。それこそが、炭酸飲料のリーダーブランドである『コカ・コーラ』の使命だと考えています」

協力:日本コカ・コーラ

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