なぜ、今、ものを作っても売れないのか――。これは、日本の製造業が抱えている大きな悩みだろう。日本の製造業は、技術の革新や創意工夫、新素材開発などによる優れた品質水準を誇り、メード・イン・ジャパンは世界を席巻した。しかし、今や日本の国際競争力は低下してきているという指摘もある。10/9~10/11に開催された日経クロストレンドEXPOでは「ものづくり未来会議」として、デザイン思考とその実践の最先端を走るデザイナーの田子學氏をモデレーターに先進企業と日本のものづくりの未来が議論された。その講演も踏まえながら日本が再び躍進するため、「ものづくり立国ニッポン」復権へのヒントを探ってみよう。

協力:プロトラブズ

ものづくりはIoTテクノロジーで誰でもできる時代

 今までのものづくりは、確実な需要があったから成り立っていた。しかし、近年は不確実性が高い時代となり、今までと同じものづくりでは、いつまでも長いトンネルから抜け出せないだろう。

 エムテド代表取締役デザイナーの田子學氏は、日本のものづくりの現状を次のように指摘する。「今、世界でものづくりを成功させている要因の1つに、インターネットをうまく活用したものづくりがあります。当然、製造業者がインターネットの知識とか、インターネット上で起きていることを理解して、ものづくりを考えることによって世界は変わるはずです」

田子 學(たご・まなぶ)。株式会社エムテド 代表取締役 アートディレクター/デザイナー
田子 學(たご・まなぶ)。株式会社エムテド 代表取締役 アートディレクター/デザイナー

 近年のものづくりには、インターネットとつながる3DCADや3Dプリンティング、さらに小ロット生産といった圧倒的なブレークスルーが起きた。IoTテクノロジーにより、誰でも簡単にものづくりができる時代が到来している。特に3DCADの進化によって、エンジニアとデザイナーの垣根がなくなっている。解析ツールでデザイナーでも解析が可能になったためだ。その反面、エンジニアにもデザイナー的マインドが必要とされるようにった。

デザインとは人の潜在意識を掘り起こす視点

 そして今、ものづくりの根底にあるデザインという視点に注目が集まっている。よく耳にするのは「デザイン思考」だ。さらに昨年、経済産業省が「デザイン経営」をキーワードとして打ち出した。それは、企業経営に大きくかかわる存在としてデザインを再定義し、ブランディングやイノベーションに向けたデザインを重視することという。

 このデザイン経営は、しっかりとした効果をもたらしているという。経産省・特許庁の「『デザイン経営』宣言」と題する報告書で紹介されたイギリスの調査結果によれば、デザインに投資すると、その4倍の営業利益を得られると発表している。

 「デザインの大きな特徴は、人の潜在的な意識を掘り起こすその目線があるということです。いいものを作れば売れる、その時代は残念ながら終わりました。内閣府の世論調査によると、日本人は昭和54年から、ものの豊かさより、こころの豊かさを求めています。市場に迎合するのではなく、もっと人の暮らしを豊かにできるのか、楽しみが与えられるのかという本来のものづくりの在り方を見直す必要があります」と田子氏は指摘する。

「完成品の美学」を捨てて、未熟でもスピードある展開

 いいのを作っても売れないならどうすべきなのか。「ものづくりが得意な人は世の中にたくさんいます。そこで、何がバリューなのか、自分たちの本質を一回見つめ直す必要があります。どこの市場に自分たちのものが刺さって、ファンをつくれるのかを考えることです。インターネットにより、あらゆる市場が開放されている時代、うまく利用すれば違う視点で市場を見ることができ、そこに新たなビジネスチャンスが生まれるということです」と田子氏は強調する。

 さらに、田子氏は開発スピードを重視することも必要だとし、そのために日本の製造業者はマインドセットを変える必要があるという。それは、「最初に出す製品は完成品であるべきという美学」で、この美学がグローバルな競争力低下の一因となっている。

 「美学はもちろん大切なことです。しかし、先に市場に出されると、すべてが後手になり、2、3周遅れどころか、5周ぐらい遅れて製品を出す状況になります。日本には高い技術力があるので、アジャイル型で改善を加えていくことです」と田子氏は訴える。

自分の哲学にもっと自信を持って前に進むものづくり

 田子氏はものづくりに携わる人へ、次のような熱いメッセージを送った。「エンジニア系の人は、自分の発想に何か哲学を持っています。だからこそ、自分たちのものづくりに自信を持ち、勇気を持って前に進んでほしい。それはイノベーションの入り口にもなり、世の中のためにもなります。そのためのインターネットやツールがあるのですから」

ものづくり全体の加速、競争力を支援するプロトラブズ

 IoTテクノロジーの活用で、今までの製造工程を改革する企業が登場してきている。開発スピードがより求められる中、注目されているのが試作から小ロット生産までを行うオンデマンド受託製造会社のプロトラブズだ。

 同社は米国ミネソタ州で1999年に創業し、今年20周年を迎えた。米国や欧州、日本など世界12カ国に製造拠点がある。100%、B2B のEコマースベースで顧客は大企業から企業家まで多岐にわたり、世界60カ国の製品開発者にサービスを提供している。

 米国プロトラブズ社長兼CEOのヴィッキー・ホルト氏は、「我々の目指しているのは、ものづくり全体の加速で、お客様に競争力を付けてもらうことです」と同社のビジョンを語る。

ヴィッキー・ホルト 米国プロトラブズ社長兼CEO
ヴィッキー・ホルト 米国プロトラブズ社長兼CEO

デジタルマニュファクチャリングで最短1日の短納期を実現する

 同社の最大の特徴は、そのスピードにある。独自に開発したICT総合システム「デジタルマニュファクチャリングシステム」により、3DCAD設計データからパーツ製造のプロセスを標準化、オートメーション化している。試作パーツなどの3DCAD設計データを解析し、平均3時間で見積りを提示。発注からパーツの出荷まで、切削加工は標準3日、射出成形は標準10日で出荷する。最短ではいずれも1日の短納期を実現できるという。

 「弊社のホームページでお客様のメールアドレスを入力し、3DCADファイルをアップロードしていただければ形状を解析し、お見積りを返信します。お客様とのやり取りには、もちろん情報漏えいのないセキュアなEメールで行われます」と米国プロトラブズ社長兼CEOのヴィッキー・ホルト氏は話す。

安定した品質を確保し、専属の営業、技術者による手厚い顧客サポート

 発注を受けると、製造指示を含むお客様データがデジタルスレッドによって、自社工場の製造機器に伝送され、パーツが製造される。自社工場での生産だからこそ、安定した品質と納期の信頼性が確保されている。また、同社の日本法人では、専属の営業、技術サポートを含め100人体制で対応。見積書の問い合わせや製造アドバイスなど、同社のエンジニアが電話で直接対応する。Eメールやウェブ上だけではない、手厚い顧客サポートも同社の高い信頼性を示している。

製品開発では、年間売上の50%は新製品が占めている

 今、製造業はマニュファクチャリング4.0の大きな流れの中にあり、世界中の製品開発者がデジタル化の課題に直面しているという。ホルト氏は、製品開発の領域で起こっている変化を次のように語った。「過去3年以内に発表された新製品が、その会社の年間売り上げに占める割合は50%に上ります。これが示すのは、企業の規模にかかわらず、ますます迅速に製品を市場に送り出す必要があるということです。そして、2019年末までに250億のIoTデバイスが市場に展開するでしょう。さらに、小ロット生産のカスタマイゼーションです。ある調査では、医療、リテール、金融のたった3部門だけで市場は約800億ドルに膨らみ、新しい流れに乗った全体の15%の企業が収益を担うという結果が出ています」。

 IoTデバイス製品は、日々進化を続けるIoTのテクノロジーによって、1、2年後には新機能が登場するライフサイクルの速さだ。

 「年間の売上の50%が新製品という事実からしても、従来の商品に固執していては収益が上がりません。だからこそ新製品を作り続けなければいけません。マニュファクチャリング4.0の力を利用して、デジタル化に取り組むことです。IoT、AI、ビッグデータなど自社の製品にはどのテクノロジーを使えば価値を提供できるのか考えてください」とホルト氏は訴えた。

協力:プロトラブズ