DXプロジェクトの課題を解決、成功に導くためのポイントは

 DXプロジェクトを進めるにあたり、様々な障壁がある。そこで小浪氏はDXプロジェクトを成功に導くための7つのポイントを解説した。

 まず、プロジェクト構想時の課題として想定されるのが「浸透していない形だけのビジョン」「組織のサイロ化」だ。「トップダウンによるDXでは、ビジョンが実際に動くメンバーまで共有できていないことが多々あります。プロジェクトを進めるにあたって最終的に目指すイメージにブレが生じます」と指摘する。組織のサイロ化は、どのようなプロジェクトにも起こり得る話だが、実際に前に進めようとしても各部署の反感を買ったり、調整ごとが難航したりする。部署単位のKPI達成主義などによる縦割り構造が、部署間連携を妨げる原因となっている。

 「DXを実現するためには、やはりトップマネジメントの覚悟や権限委譲が必要になります。また、新規事業やDXの実現はすごく難易度の高いプロジェクトになるので、チーム全体でゴールに達成するためのアウトプット、OKR(Objectives and Key Results)を明確にすることが重要です」と説明。そこで小浪氏は、DXプロジェクトを成功に導くポイントの1つ目、2つ目として「ビジョンの策定・共有・共感」「DXを実現する組織・体制」を挙げた。

 成功ポイントの3つ目は、「顧客体験を描き切る」こと。「メンバーそれぞれの考える顧客体験が異なっていたり、目指すべきイメージが曖昧だったり、さらにそれは単なる妄想にすぎず、そもそもお客様が望む顧客体験ではなかったりすることもあります。顧客体験はDXのよりどころであるため、プロジェクト当初にそれを描き切るということにぜひ取り組まれた方が良いと思います」と小浪氏。

 「部署間での調整をしていく中で、意見が相反するケースや悩まれるケースがあると思います。そこで立ち返るべきは、やはり顧客の声や体験です。ここを共通化させておくことは重要で、設計段階で何度でも必要に応じて、簡易でもお客様の声を収集しておく必要があります」

 さらに、「思い描くデータ基盤の構築が困難」という課題もある。成功ポイントの4つ目は、「要件の優先順位付け」だ。「結局、要件の優先順位が大事ですし、この提供価値に対して必要なサービス要件や業務要件と、それを下支えする従業員体験を踏まえることが重要です。実現方法の検討にあたって、『欠かせないことは何か』をよく考えるべきです」と小浪氏は説明した。

 成功ポイントの5つ目は、「UXデザインチームの組成」。小浪氏は、「顧客体験を担保するチームが不在」という課題を挙げる。「戦略を考えた経営企画、各部署から集められた事業推進プロジェクトチーム、プロダクトを開発するベンダーでチームが組成されることが多く、立場の違いから、様々な議論が平行線をたどってしまうことがあります。結果、それでは顧客体験を考えるチームやメンバーがおらずに、コストとデリバリーを優先したプロジェクトになってしまいます」

小浪氏が実際に参画した地方銀行のプロジェクトでは、経営企画/事業戦略、事業推進PJチーム、開発ベンダーといった座組の中にUXデザインチームを組成。4者が随時意思疎通を図りながらPJを推進するPMOにより、DXプロジェクトを一体推進できたという
小浪氏が実際に参画した地方銀行のプロジェクトでは、経営企画/事業戦略、事業推進PJチーム、開発ベンダーといった座組の中にUXデザインチームを組成。4者が随時意思疎通を図りながらPJを推進するPMOにより、DXプロジェクトを一体推進できたという

 成功ポイントの6つ目として、各フェーズで重きを置くテーマを設定する「アジェンダマネジメント」を挙げた。それぞれのチームがパラレルに進行していくと連携がうまくいかなくなり、アウトプットの結果・品質の低下につながりかねない。「結局、各フェーズ、アジャイルでは進みますが、何を優先して検討するのかというポイントを、フェーズごとに、順々に落としていくことが大事です」と小浪氏。

 7つ目は、「ローンチ後の改善行動」だ。「そもそも経験の少ないメンバーが多い中で、サービスのリリースをゴールに設定してしまうと、その後の運営体制や業務フローがしっかり立てつけられていないケースがあるかと思います。きちんと事前にPDCAのプロセスの運営体制、もしくは業務フロー、仕組みづくりを検討しておくことをプロジェクトの進め方の中に入れておかなくてはいけない」と小浪氏は語った。

DXプロジェクト 成功の7つのポイント
DXプロジェクト 成功の7つのポイント

 最後に、日本企業のDXプロジェクトの現実的な進め方について「理想的にはトップダウンの力が大事なのですが、いろいろな壁があり実現できないと悩まれている企業も多いと思うのです。そこで重要なのが、ミドルマネジメントの実行力です。思いを持ったミドルマネジメントの方が、理解ある役員を説得し、その思いに共感するようなメンバーを募って1つのチームをつくり、トライする。大切なのは、成功体験を周囲に伝えていくことです」と小浪氏は語り、講演を締めくくった。

理想的なDXプロジェクトのピラミッド図。思いを持ったミドルマネジメントの行動、トライがDXプロジェクトを成功に導く
理想的なDXプロジェクトのピラミッド図。思いを持ったミドルマネジメントの行動、トライがDXプロジェクトを成功に導く

協力:株式会社電通デジタル