5つの事例で解説、ロイヤリティマーケティングの魅力

 ロイヤリティマーケティングを実践する1つ目の事例は、米国のスターバックスである。同社はスマートフォンアプリで、オーダーから決済までできるサービスを展開している。店外からもオーダーができることに加えて、甘さ、ミルクの種類や濃度に至る細かいカスタマイズに対応することで、顧客それぞれのニーズに応える。

 さらに、アプリ決算による会計金額に応じて「スター」がたまる「Starbucks Rewards」というプログラムを実施しており、これまでの購入金額に応じて限定プレゼントや、新商品の先行購入、ドリンクの割引などができる優待特典を用意している。これを川津氏は「初めてのお客様にとって楽しく、心地良い顧客体験を設計することで、お客様に継続購入を促すようなプログラムが作られています」と説明する。

 2つ目は、北米におけるセブン-イレブンの事例だ。最初は「6杯コーヒーを買ったら7杯目は無料」という、スマホアプリを活用したシンプルなロイヤリティプログラムから開始し、1年以上かけて「レジでスマホアプリを出す」行動に慣れてもらうことを重視した。定着した今ではアプリの機能も豊富になり、様々な機能の中から、顧客が求めている機能、使っている機能だけを残すようにしているのだという。

 3つ目は、ホテルのHilton(ヒルトン)。ホテル業界の中でもHiltonはスマホアプリの活用に積極的であり、登録するだけで誰でも好みの部屋に宿泊できるサービスや、アプリ上にデジタルキーの機能も組み込んだ、フロントに立ち寄る必要のないデジタルチェックアウトを実現している。ロイヤリティプログラムも多彩であり、ポイントに応じた無料宿泊はもちろん、宿泊頻度の高い顧客にはプレミアムルーム特典を設け、エグゼクティブやスイートなど、アプリで登録するだけでは予約のできない上位の部屋の予約をできる優遇特典を提供する。

 4番目の事例は、米国でレンタカーサービスを提供するHertz(ハーツ)。空港カウンターでレンタカーを借りたいだけなのに、煩雑な手続きで長時間費やされてしまったという経験をしたことがある人は少なくないだろう。そこで同社のロイヤリティプログラムでは、事前予約したロイヤルカスタマーには待ち時間ゼロで、駐車場からすぐに出発できるサービスを提供。最近ではスマホ連携による顔認証や指紋認証で、免許証の提示なしに決済手続きができるようにするなど、とくにビジネス目的の顧客から高い支持を得ているという。

日本においても先進的なロイヤリティプログラムが始動

 もちろん日本においても、先進的な取り組みを進める企業はある。サッポロライオンが手掛けるロイヤリティ向上サービス「YEBISU BAR(ヱビスバー)アプリ」だ。ヱビスバーでドリンクを注文すると、スタッフがその場で顧客のアプリに電子スタンプを付与するため、会計をしなかった顧客にも特典が行き渡るサービスだ。

 「普通のレストランでは決済時にポイントカードを出して、会計した人だけにポイントがたまるのみでした。しかし、このアプリを活用することで、来店した顧客それぞれのステータスを測ることができます」と川津氏。会員ステータスはアプリ内で、ランキング形式で表示され、来店頻度や注文数の多い顧客には特典が用意されている。

 ロイヤリティプログラムでは、機能だけでなく、楽しさ、ゲーム性も大切にしなければ、顧客はサービスを続けてくれないという。「自社のロイヤルカスタマーがどのような顧客体験を求めているか、それは個々のサービスの中でしか見つけられません。そこで重要なのがPDCAを回すこと。もし間違えたらやり直せば良いのです」(川津氏)。

ロイヤリティマーケティングの考え方。新規獲得した顧客をロイヤルカスタマー化(既存顧客の育成)し、リテンション(離反の防止)することを重視する
ロイヤリティマーケティングの考え方。新規獲得した顧客をロイヤルカスタマー化(既存顧客の育成)し、リテンション(離反の防止)することを重視する

顧客体験が検討の出発点。そのためにデータを集める

 今後のマーケティングでは、パーソナライゼーション、コミュニケーションは欠かせない要素となる。顧客の感情に訴えるロイヤリティで、どうすれば「好き」になってもらえるのかを考えていく必要がある。「顧客体験を中心に考え、そのために必要なデータをどうやって取得するかを検討する。この順番で考える必要があり、順番を間違えてはいけません」と川津氏は強調する。

 講演の最後で、川津氏は重要な項目を2点挙げた。1つは、「顧客接点をしっかり活用して情報を得ること。情報を得る理由は、顧客体験を高めるヒントをもらうため」であるということ。そして、マーケティング部門のテクノロジー製品が乱立する今だからこそ「あまり作り込まない方が良い。柔軟に作り、小さく始めて、変化に耐えるようにするのが良いです」とアドバイスする。日本におけるロイヤリティマーケティングへの取り組みには、まだまだ伸びしろが残されているようだ。

協力:ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン株式会社