DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための効果的なツールとされるGMP(Google マーケティング プラットフォーム)。同プラットフォームの導入・活用支援を行うNRIネットコムの山川俊哉氏が「日経クロストレンド FORUM 2019」に登壇し、そのメリットや導入企業の活用事例について語った。
協力:NRIネットコム
全員が簡単にデータにアクセスし分析できる環境が不可欠
講演の冒頭、NRIネットコムのデジタルマーケティング事業部主任である山川俊哉氏は、まずDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義と効果、課題について整理した。
経済産業省の資料を要約すると、DXとは「新しいデジタル技術の活用で、新たな価値を生み出していくこと」だと山川氏は説明する。その上でNRIグループでは、DXを1.0、2.0に分けて定義。DX 1.0を「デジタル技術を既存業務に活用して高度化・効率化を図るフェーズ」、DX 2.0を「デジタル技術を活用し、新規ビジネスを創出するフェーズ」と位置付ける。
これを踏まえ、これまでの企業によるデータ活用の変遷を振り返ると、2000年以前、2000年以降、2015年以降を区切りとして、3つの大きなポイントがあったと分析する。
「2000年以前はクラウドサービスやビッグデータの活用が普及しておらず、デバイスの性能も低かったため、データを集めるのが非常に困難でした。2000年代に入ると、3Gや光通信など、技術の向上によって通信が高速化し、スマートフォンが普及するなどデバイス性能も向上したことで、ユーザーの行動に変化が表れました。ユーザーのタッチポイントがデジタルデバイスになったことで、サービス提供者もたくさんのデータを収集できるようになり、マーケティングへの活用が加速しました」
2015年以降には、IoT(モノのインターネット)機器の登場によって、より多くのデータが集められるようになった。さらにAI(人工知能)や機械学習が身近になり、データ収集の方法にも変化が生じた。「それまでは人が収集・分析していたデータを、IoT機器が収集し、AIが解釈し、自動化・最適化を図るという取り組みが増えてきました」と山川氏は指摘する。
DXの効果としても明らかになりつつある。「調査会社IDCが行ったアンケート調査によると、DXを推進している企業は、推進していない企業よりも利益や生産性の向上といった恩恵を受けているという回答が約2倍ありました」と山川氏は語る。
その一方で、データを集める手段や蓄積されたデータがあるにもかかわらず、データ活用が進んでいない大手企業も少なくないという。「社内のセキュリティーポリシーや、リーガル・コンプライアンス上の観点でクラウドサービスを導入できない、IT部門とビジネス部門との間に壁がある、対応できるスキルを持った人材が不足しているといったことが主な理由です。DXを推進し、成功に導くには、ビジネスに関与している全員がいつでも簡単にデータにアクセスでき、分析できる環境が必要です」と山川氏は力説した。
スモールスタートでDX実現するために有用なプラットフォームとは
こうした課題を踏まえ、山川氏は「まずデータ収集を容易にするGoogle アナリティクスを活用し、収集したデータを対象としてDX実現への第一歩を踏み出してみてはどうでしょうか」と提案する。
一般に、DXを実現するには大規模な組織改革やシステムインテグレーションが必要だと思われがちだ。しかしGoogle アナリティクスなら、CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)と連携しやすく、その組み合わせによって顧客データの収集・活用が比較的簡単に自動化する。
「手始めにWeb行動データを収集・活用してみて、少しずつ適用範囲を広げていく手法が望ましいのではないかと思います」と山川氏は指摘した。これを実践するための有用なプラットフォームとして、山川氏が紹介したのがGMP(Google マーケティング プラットフォーム)である。
GMPは、2018年にGoogleがリリースしたGoogle アナリティクスを中心とする統合プラットフォームだ。Webモバイルアプリのデータ収集・分析から施策活用までをカバーできる7つの製品群で構成されており、DXのための環境構築をスモールスタート、スモールサクセスで実現できるのが大きな特長である。それぞれの製品概要は以下の通りだ。
- 「Analytics 360」
GMPの中心となる製品で、Web解析システム。さらに、データを収集し、そのまま分析するDMP(データマネジメントプラットフォーム)の役割も担う。 - 「Tag Manager 360」
Webサイトから収集したいデータに変更や追加があっても、WebページのHTMLを編集することなくタグ管理ができるシステム。 - 「Data Portal」
Googleが提供するBI(ビジネスインテリジェンス)ツール。様々なデータをまとめて可視化、共有できる。 - 「Optimize 360」
「Analytics 360」上のデータを活用し、ユーザーごとにWebサイトの表示を仕分けるといったパーソナライゼーションサービスを提供するツール。 - 「Search Ads 360」
検索連動型広告(リスティング広告)の運用を最適化するツール。Google、Bing、ヤフージャパン、百度(バイドゥ)などの検索エンジンに対応。 - 「Display & Video 360」
Google アナリティクスのデータを活用し、ターゲティングした広告配信をするためのツール。 - 「Surveys」
自社サイト内、もしくはGoogleが提供する広告枠に対してネットアンケートを配信するためのツール。
オンラインとオフラインのデータ統合がもたらす価値とは?
GMPはどのような企業が導入すべきなのか。山川氏は「当社の納入実績から見ると、特にオンライン/オフライン双方のチャネルを持つ企業の導入メリットが大きいと思われます。オンラインのデータをオフライン上の営業活動にも生かすことで、相乗効果が得られるようです」と語る。その上で、3つの導入事例を紹介した。
1つ目は、不動産仲介サイトを運営する企業だ。「仲介サイト上のユーザーの行動履歴を営業担当者にも展開したところ、日々変化するユーザーニーズをリアルタイムに確認しながら営業活動ができるようになったそうです。よくサイトを見ている時間が分かれば、その時間に電話をかけるといったアクションを取ることができるわけです」と山川氏は語った。
2つ目は、住宅設備関連メーカーの取り組みである。この会社は、まず「Analytics 360」の統計解析ツールを使って、デジタル広告の施策と効果を検証しながらPDCAを回した。その結果、コンバージョンが前年比135%アップしたという。次に「Search Ads 360」を使ってリスティング広告の入札戦略を最適化したところ、広告枠の獲得単価が39%減少。さらに「Optimize 360」を活用してWebサイトのランディングページを最適化した結果、対応デバイスによっては遷移率が6%も向上するなど、GMPの製品群を駆使することで大きな成果を上げている。
3つ目は、統合したオンライン/オフラインのデータを基に、機械学習によってユーザーの趣味嗜好にマッチしたコミュニケーションを取れるようになったという成功例だ。「3つ目の施策は、いろいろな業種・業態のお客様に対応させていただいているものですが、プロモーション施策を自動化したことで業務効率が向上し、成約率、購買率も上がったという声を多数いただいております」と山川氏は説明した。
最後に山川氏は、「GMPのメリットは、(1)ビジネスに有効活用できるユーザー行動データが比較的簡単に収集できる、(2)関係者がすぐにデータを見られる環境構築が可能、(3)収集したデータを分析して施策ツールに手早く連携できる、というDXに不可欠な3つの要素を簡単に実現できる点にあります」と総括。「NRIネットコムは、GMPの導入から活用までを全面的にサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください」と結び、講演を締めくくった。
協力:NRIネットコム株式会社