「どうすればお客様を幸せにできるか」、プレイドの金田拓也氏は、この問い掛けこそがCX(顧客体験)の起点であり、オンラインにおいてもそれは変わらないと語る。CX向上の経営効果とアプローチの方法を「日経クロストレンド FORUM 2019」の講演で明かした。

協力:プレイド

金田 拓也(かねだ・たくや)。株式会社プレイド Business Accelerator
金田 拓也(かねだ・たくや)。株式会社プレイド Business Accelerator

店舗における「おもてなし」を、オンラインでも実践する

 CXという言葉は、2018年ごろからようやく日本でも普及し始めた。しかし、言葉の意味は何となく理解されるようになっても、それを実践に落とし込み、ビジネスの成功に結び付けている日本企業はまだ少ないようだ。

 「日本企業は対面販売における『おもてなし』がとても上手ですよね。百貨店やレストランの接客では、お客様の行動や表情の中から機微を読み取り、『このタイミングでメニューをお出ししよう』とか、『そろそろお話し掛けをしよう』とさりげなくアプローチするものです。オンラインにおいてCXを醸成するアプローチも、それとまったく同じことです」と、プレイドでBusiness Acceleratorを務める金田拓也氏は語る。

 プレイドは、2011年10月に創業したテクノロジー系のスタートアップである。2015年3月、企業が提供するサイトやアプリを訪問する顧客をリアルタイムに可視化し、最良のCXを構築するプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を正式リリースした。

 そもそも同社がCXのためのプラットフォームを構想したのは、「CXがどのようにお客様の購買行動に影響を与えるのかをユーザーの皆さんと一緒に検証し、より良いCXをもたらすアプローチを共創するため」だと金田氏は説明した。

 その取り組みの一環として、プレイドは「XD(クロスディー)」というCXに特化したメディアを展開している。企業がCXを向上させるために取り組んでいる事例や、CXを高めるためのアイデア、ノウハウ、最新情報などを発信するメディアだ。また、最先端のCXを学び、体験できる「CX DIVE」というカンファレンスも開催している。

 「CXの多くの事例や情報をシャワーのように浴びて、気付きやヒントを得てもらうためのイベントです。わたしたちは、CXに一義的な正解を求めることは難しいと考えています。なぜなら、業種や業態ごとに『良い顧客体験』『悪い顧客体験』は異なりますし、向き合うお客様一人ひとりが『いいね』と思ってくださるポイントも違うからです。様々な情報やアイデアに触れる中で、自分たちなりのCXを見つけ出していただければと思います」と、金田氏は「CX DIVE」の趣旨について語った。

顧客行動を傾向・データで見るだけでなく、一人ひとりにフォーカスする

 欧米では、CX向上のための取り組みが進んでいる。その取り組みによって顧客のロイヤルティーが向上し、着実に業績アップにつながることが認識されているためだ。

 「実際、米調査会社のフォレスター・リサーチが2016年に行ったCXに関する企業調査では、業種や業態によって成長の速度は異なるものの、CX向上に積極的に取り組んでいる企業のほうが実際に業績・収益を上げており、大きな差が生まれてきていることが明らかになっています。業種によって、一気に伸びる、尻上がりに伸びるといった傾向は異なりますが、CXの向上によって顧客のロイヤルティーが高まると、『また買ってみたい』『もう一度利用したい』という意識が醸成され、長期的な業績アップにつながるという傾向は共通しています」と金田氏は説明した。

フォレスター・リサーチの企業調査によると、良い顧客体験をしたという顧客が増えることでビジネスが発展し、業績にも影響することが明確になっている。顧客体験の差がオンライン/オフライン問わず、業績につながっているのが海外企業の現状であるという
フォレスター・リサーチの企業調査によると、良い顧客体験をしたという顧客が増えることでビジネスが発展し、業績にも影響することが明確になっている。顧客体験の差がオンライン/オフライン問わず、業績につながっているのが海外企業の現状であるという

 金田氏が冒頭で述べたように、日本企業もまた、オフラインでは顧客の機微をしっかり感じ取り、きめ細かな接客によってCXを高めている。ところがオンラインではCXの向上に成功している例は少ないようだ。

 では、どうすればオンラインにおいてもCX向上による好循環を実現できるのか。サイトやアプリ経由で入ってくる膨大な顧客行動データを収集・分析し、CXの向上に生かそうとする動きが出てきているが、データ活用において重要な点が見落とされていると金田氏は指摘する。

 「集めたデータを数字(傾向)として捉えるだけでは、大まかな施策は打てても、お客様が実店舗で体験するような『おもてなし』のサービスを提供することはできません。本当の意味でCXを高めるためには、全体像ではなく一人ひとりを徹底的に見てお客様の行動の変化にフォーカスし、臨機応変に対応できる体制が必要です」

 顧客の行動は移ろいやすい。サイトやアプリの中でどの情報に興味を示し、どのようなアクションを行っているのかをリアルタイムに把握することも不可欠だ。実店舗で顧客の表情や動きの変化を探るのと同じである。

 「どのようなことに興味を抱いているか把握した上で、『訪問したお客様にこんなアプローチをしてみたけど刺さらなかった。それなら、次のお客様にはこんなふうに話し掛けてみよう』というPDCAを回し、成功例をどんどん積み上げて応用を重ねていくことが大切なのです。次に訪問してもらう起因になる部分を突き詰めることは、商品やサービスの価値を大きく上げてくれます」と金田氏はアドバイスした。