検索の結果、表示された最寄りの店舗が実際には最寄りではない――。Googleなどの検索サイトでこうした現象が起きていることを把握したヤマト運輸は、Yext(イエクスト)の導入により、顧客に正しい情報を届けることに成功した。

協力:Yext

Googleでの検索結果の約1割が誤りだった

 ヤマト運輸は、年間約18億個の宅急便を運んでいる。お客さまが荷物を送るには、電話やインターネット経由で集荷を依頼するか、ヤマト運輸の直営店や提携するコンビニエンスストアなどに持ち込むのが一般的だ。そこで生まれるお客さまとの最初のタッチポイントのところに課題を抱えていたと、ヤマト運輸 宅急便戦略部の柴田義和氏は説明する。

 「どこから宅急便が送れるかを調べるとき、私たちのコーポレートサイトで検索するよりも、Googleをはじめとする検索サイトで探すお客さまが、圧倒的に多くなっているのが現状です。しかし、外部のサイトで検索すると、そこに本来表示されるべき店舗が出ていない、また出ていたとしても、情報が正しくないこともありました」

 “本来表示されるべき店舗”とは、検索地点から最も近い店舗のことだ。ところが、柴田氏の実感では、あるはずの店舗が表示されなかったり、最寄りではない店舗が最上位に表示されたりするケースが全体の1割ほど見られたという。表示される営業時間や電話番号が異なる例もあった。

 なぜ、このような現象が起こるのか。Googleの検索結果に表示される情報は、独自のクローラー(ロボット型検索エンジン)で情報を収集し、その結果をもとに検索データベースに登録されたものが反映される仕組み。インターネットの情報は膨大なため、Webサイトの立ち上げや更新後にクローラーが巡回するまでに時間がかかることから、本来表示されるべき店舗が検索結果に反映されないことにつながる。

 「こうした表示がされると、お客さまにはマイナスの体験をさせてしまいます。最寄りの店舗より少し遠い店舗に持ち込んでいただいても、表示された店舗が閉まっていたからとほかの店舗に持ち込んでいただいても、お客さまは宅急便を送るという目的は達成できるでしょう。しかし、達成できてしまうからこそ、最適な店舗に預けられなかったというマイナスの体験は、私たちから見えにくくなってしまいます。そうしたことが潜在的に起こっていることは容易に想像できたので、その解消を図りたいと考えました」

 柴田氏は、店舗を検索するのはその土地に詳しくない人が多いと話す。「例えば引っ越してきたばかりのお客さまに、誤った最寄りの店舗をお知らせしてしまうと、その土地に慣れた頃に『もっと近い店舗があった』と気付くこともあるでしょう。これも、マイナスの体験です」

 それらを減らし、なくすためのターゲットは当初、Googleのみだったが、調査していくうちにAppleの地図アプリなど、ほかのアプリやプラットフォームにも対応していく必要があることが分かってきた。

柴田義和(しばた・よしかず)。ヤマト運輸株式会社 宅急便戦略部 宅急便戦略課 係長
柴田義和(しばた・よしかず)。ヤマト運輸株式会社 宅急便戦略部 宅急便戦略課 係長

対策コストと早さを決め手に検討から半年でYextを導入

 社内で対応することも検討したという。しかし、最終的には外部のサービスを活用することにした。「リサーチを進めるうちに、人的リソースなどを考えると社内で解決するのは簡単ではないと分かったからです。恐らく、専属のスタッフを一人以上配置する必要があったでしょう。それなら外部のテクノロジーを導入して、スピーディに解決する方がいいだろうという結論になりました」

 そして、外部のサービスを検討する中でYextに出会ったと話す柴田氏。

 「アメリカでの実績があるサービスとして存在を知りました。私たちは、まずGoogleで検索するお客さま、可能であればそれ以外で検索するお客さまの体験も良くしたいと考えていたので、Google以外の検索エンジンやマップにも対応しているところに魅力を感じました。また、Yextは最小限度のパッケージから段階的に機能を増やしていくことができるので、導入のハードルは低いと判断しました」

 導入に当たっては、まずその必要性を社内で共有する必要があった。宅急便は、誰もが知るサービス。わざわざ検索対策をしなくても、ユーザーは荷物を託すのではないかという空気があったのだ。社内には、Googleは知っているが、最寄りの店舗が表示されるアルゴリズムやその対策にコストがかかることを知らない人もいたため、認識を揃えるところから始めた。

 「まずは社内に、出てくるべき店舗が出てこない、誤った表示が出てしまうという現状を見てもらい、課題解決の必要性を理解してもらうよう努めました」。Yextの存在を知ってからこうした社内検討を経て、導入までに要した時間は約半年だったという。

導入後は新規来店者が毎日4000人増えている計算に

 Yextの導入後、Googleで「ヤマト運輸」と検索すると、ヤマト運輸が全国に持つ直営店の約4000店舗の中から、最寄りの店舗が確実に表示されるようになった。「明らかに見た目が変わりました。表示されない店舗がなくなり、Googleでも、コーポレートサイトにあるものと同じ店舗情報が表示されます。Google以外のサイト、アプリやマップでも同じ精度で同期されました」と柴田氏。

 その効果は、店舗情報が変更になったときにも感じるという。

 「直営店が約4000店舗あると、毎月どこかで開店や閉店、営業時間の変更があります。社内で管理しているそれらの情報も、ほぼリアルタイムに検索結果に反映できるようになりました。これも導入の大きな成果だと思っています」

「ヤマト運輸」とGoogle検索した時の導入前と後の違い。導入前は本社の所在地や名称と異なる写真が提示されていたが、導入後は現在地近くの店舗をきちんと提示でき、表示したい写真が上位に出るようになった
「ヤマト運輸」とGoogle検索した時の導入前と後の違い。導入前は本社の所在地や名称と異なる写真が提示されていたが、導入後は現在地近くの店舗をきちんと提示でき、表示したい写真が上位に出るようになった

 こうした変化は、文字による検索はもちろん、今後ますますの普及が見込まれるスマートスピーカー(AIスピーカー)での音声検索にも有効だと柴田氏は考えている。

 「文字での検索の場合は、いくつか選択肢が提示され、お客さまがその中から選ぶというのが一般的です。最も見ていただきたい選択肢を最上位に表示させたいと考えてYextを導入しましたが、音声検索となると、選択肢を提示するというよりは、一問一答となるので、お客さまは2番目以降の選択肢を認識しません。そういった将来を見越しても、正しい情報を一番初めに提示できるのは、とても重要なことだと考えています」

 こうして検索の精度が上がったことの効果は数字にも表れている。「まず、Google マップでの検索数が、月間600万から900万へと、1.5倍に増えました。地図でヤマト運輸を検索する方は、何かしら接点を持ちたい方なので、その方へ正しい情報を提供できていると考えています。

 それから、平均すると1店舗当たり1日1件ほどですが、経路検索をする方がいます。これは確実に来店、それも初めて来店される方だと考えられます。1日当たり4000人、これが1年間の365日となると146万ですから、その方々へ正しい情報を提示できているということは、かなりの効果です」

 さらにブランドイメージについても統一が図れたと話す柴田氏。「検索サイトで表示される営業所の名称は場所によってまちまちだったのですが、導入後は、私たちが普段呼んでいる“ヤマト運輸○○センター”という表記に統一されました。写真も、一般の方が撮ったものではなく私たちが提供したものが上位に表示されるようになったので、その点でもブランドイメージの統一が図れました」

 柴田氏はさらに、こう付け加える。「社内だけの努力で同じ結果を出そうとしたなら、相当な時間と労力がかかったはずですが、Yextは導入もスムーズでしたし、結果的に省力化が実感できました。また、Googleなどのプラットフォームはどんどん変化していくので、企業が自社だけで対応していくのは難しいでしょう。その点を考えても、Yextの導入は、効果的だと思います」

最初の体験が良ければ続けて使ってもらえる

 Yextの導入により、効率良く顧客のマイナス体験を減らせたという実感を得た柴田氏は次の展開にも期待を寄せている。「私たちは、宅急便以外にも、例えば地域限定ですが、インバウンドのお客さま向けに、手ぶら観光支援サービスも提供しています。全国統一のサービスだけでなく、こうした地域ごと、シーンごとで求められるサービスについても、より広く知っていただき、使っていただくための情報発信をしていきたいと考えています」

 提供する情報が増えれば、それに伴い、ユーザーからのフィードバックが増えることも予想される。「そうした口コミやレビューをしてくれるお客さまに対しても、適切なコミュニケーションをとっていきたいと考えています」

 こうした一つひとつの施策は、顧客体験の向上に大きく寄与する。

 「私たちに限らず、多くの企業はより良いサービスや商品を提供していこうと考えていると思いますが、既にあるサービスや商品であっても、それを初めて使うときの体験がより良いものであれば、お客さまは引き続き、そのサービスを使ってくださるはずです。その最初の接点として、検索という行為は今後もなくなりませんし、むしろ増えるでしょう。私たちは、せっかく探して使っていただくなら、より快適に探し、使っていただきたいので、今後もこうした取り組みを継続していきます」

 宅急便に代表されるヤマト運輸のサービスは、テクノロジーの進化と人々のライフスタイルの変化に合わせて、ますます便利になっていく。

協力:株式会社Yext