話しかけるだけでお気に入りの音楽を再生し、最新ニュースを読み上げ、買い物までこなす。そんなAIアシスタント機能付のスマートスピーカーが活況だ。中でもAmazon(米国)が開発するクラウドベースの音声サービスAmazon Alexaを搭載するAmazon Echoシリーズは、米国で2014年に発売され、2017年に進出した日本でも5つ星評価が数多く寄せられるなど、わずか1年で大きな存在感を呈している。

提供:アマゾンジャパン

SFの世界がまさに目の前にやってくる

 同社ダニエル・ラウシュ氏は、日経クロストレンドEXPOの「Amazonが創る音声ファーストの未来〜日常生活に浸透し、快適な日々を支える存在となる音声ファースト〜」と題したプレゼンテーションの冒頭で、Amazon Echoシリーズの頭脳、Alexaがつくり出す世界観を米国のSFテレビドラマシリーズ「スタートレック」になぞらえた。「宇宙船のクルーたちは船内のどこからでもコンピュータに自然にアクセスしています。Alexaを使えば、誰でも、どこでも、いつでも、まるで友達に話しかけるような感覚で生活環境を管理できます」(ラウシュ氏)

米国アマゾンのデバイス部門 Smart Home事業担当 バイス・プレジデント ダニエル・ラウシュ氏は、Alexaの世界観を「スタートレック」になぞらえる
米国アマゾンのデバイス部門 Smart Home事業担当 バイス・プレジデント ダニエル・ラウシュ氏は、Alexaの世界観を「スタートレック」になぞらえる

 現在14カ国に進出した同シリーズは、国ごとの文化や習慣を学習し独自の進化を続けており、同社カレン・ルービン氏によるAmazon Echoのデモンストレーションでは、インフルエンザのピーク期をたずねただけで、厚生労働省の統計データを披露した。

開発ツールの提供で新ビジネスも続々

 実は、Alexaはアマゾン単体で進化させるのではない。「クラウド上に用意されたAlexa開発向けのオープンツール『Alexa Skills Kit』を使って誰でもスキルが開発でき、日本発表時には250だったスキルも1年足らずで1,500以上に。世界では5万以上になりました」とラウシュ氏は言う。ユーザーは天気やニュースを調べる要領で語学学習やショッピング、交通経路検索など、Amazon Echoに声をかけるだけで各サービスの提供企業が開発したスキルを利用できる。

 Alexaの音声技術を活用した新たなプロダクツも登場している。その例として、アイリスオーヤマの伊丹泰平氏は「快適な暮らしに不可欠である明かりを声で操作するシステムを開発し、シーリングライトでは調色と調光を、電球ではそれに加えてRGBWフルカラーの調色も可能にしました」とAlexa対応LED照明を紹介した。

アイリスオーヤマの照明事業部 事業部長 伊丹泰平氏。海外メーカーが主流だったAmazon Echoとの家電連携にいち早く取り組んだ
アイリスオーヤマの照明事業部 事業部長 伊丹泰平氏。海外メーカーが主流だったAmazon Echoとの家電連携にいち早く取り組んだ

 例えば読書中に照度を上げたい場合は「明るくして」と声がけし、疲れて帰宅しそのまま就寝したいならベッドから「照明を消して」と言えば消灯できるので、調光リモコンやスマートフォンを探す必要もない。デバイスメーカーにとってもAlexaは新たなビジネスチャンスをもたらす救世主といえる。

Amazonのブースでは、アイリスオーヤマのシーリングライトもお目見え。Amazon Echoに声をかけてライトの色が変えられるのを実演した
Amazonのブースでは、アイリスオーヤマのシーリングライトもお目見え。Amazon Echoに声をかけてライトの色が変えられるのを実演した

 ラウシュ氏は「従来型の機種とAlexa対応機種では売上が43%も違い、昨年末には2,000点だったAlexa対応製品が、18年11月現在で2万点にまで上昇しています」とそのポテンシャルの根拠を示した。

スマートホームのさらなる進化

 一方Amazonでは、各社の製品機器にAlexaを搭載できる『Alexa Voice Service』も提供する。これは簡単に言ってしまえば、Amazon Echoデバイスを必要とせずに、各社の製品にAlexaを組み込むことで音声操作を可能にするものだ。

 この『Alexa Voice Service』の先進事例として、ソニーネットワークコミュニケーションズの栗原理(たかし)氏は同社が開発したスマートホームサービス「MANOMA(マノマ)」を紹介。MANOMAでは、AIホームゲートウェイにAlexaを搭載し、スピーカー・マイク機能やLTE通信接続機能を実現。スマート家電を連携させてコントロールしたり、本機自体をWi-Fiルーターとして利用することができる。

 セキュリティ、オートメーション、ニューライフスタイルという3つの軸を持つ同サービスは、外出先からの戸締り確認や、留守中に家事代行サービスなどの予定されている来訪者のために解錠もできる。スケジュール確認を呼びかければ、うっかり忘れていた家族のアニバーサリーを教えられ、おかげでプレゼント準備も忘れずに済んだといったことも起こり得るシーンとして紹介された。

ソニーネットワークコミュニケーションズのIoT事業部門 副部門長 栗原理(たかし)氏は、Alexaと連携するスマートホームサービス「MANOMA」を紹介
ソニーネットワークコミュニケーションズのIoT事業部門 副部門長 栗原理(たかし)氏は、Alexaと連携するスマートホームサービス「MANOMA」を紹介
ソニーグループでは、スマートホームサービス「MANOMA」を始め、テレビの「ブラビア」ブランドでもAlexaとの連携を深める
ソニーグループでは、スマートホームサービス「MANOMA」を始め、テレビの「ブラビア」ブランドでもAlexaとの連携を深める

誰でも、いつでも、どこでもを実現

 Alexaの活用は家庭や仕事といった場所性に限らない。同社は既にトヨタ、GM(米国)、起亜(韓国)など15社以上と連携し、施錠の確認やガソリンの残量、音楽再生といったことを声だけで操作できるAlexa対応車両を提供しており、ヘッドホンやスマートウォッチ、フィトネス機器などとの連携も進行形だ。PCやスマートフォンを介することなく音声のみで目的を達成できるデバイス群は、もはや家族の一員や友達という捉え方すらある。ラウシュ氏も「私達はまだ、Day One、初日にいます。より多くのデバイスメーカーと連携し、より深度のある世界観を構築したい」とプレゼンテーションを締めくくった。

Amazonブースでは、生活空間をイメージした家電連携コーナーも登場。Echoシリーズに話しかけて音楽を楽しむほか、テレビやプリンターとも連携、さらにはリンナイの給湯・暖房システムと連携し音声でバスルームの湯はりができることも紹介された
Amazonブースでは、生活空間をイメージした家電連携コーナーも登場。Echoシリーズに話しかけて音楽を楽しむほか、テレビやプリンターとも連携、さらにはリンナイの給湯・暖房システムと連携し音声でバスルームの湯はりができることも紹介された

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