デジタルチャネルの活用が当たり前となった現在、そこから得られるデータに基づいて、消費者のニーズやライフサイクルを読み取り、適切なターゲット、タイミング、インセンティブで顧客の心をつかめるかが競争力の源泉となりつつある。本講演では、ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンが、アプリを通じた顧客コミュニケーションに取り組んでいるロフトの事例とともに、データ分析に基づいた顧客ロイヤリティ向上のシナリオとプログラム設計の秘訣を解説した。

協力/ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン

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現場で起きている4つの課題とは?

 インターネットやスマートフォンが広く普及した現在、どのような業種・業態でも競合に勝つためにはデジタルチャネルを活用することが必須といっても過言ではない。ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン(以下、ブライアリー・ジャパン)の村瀬 馨人氏は「こうした環境で勝ち抜くためには、これまで多くの企業が取り組んできたCRM(顧客関係管理)とは異なるアプローチも必要になります」と指摘する。

 同社は、米国の大手調査会社からロイヤリティ・マーケティングのリーダー企業との評価を受けている米ブライアリー・アンド・パートナーズの日本拠点。ロイヤリティ・マーケティングとは、顧客をステータスに応じ特典を通じて優遇し、購買継続・拡大を促す取り組みである。同社のサービスやソリューションの将来性に着目した野村総合研究所(NRI)が2015年に出資し、現在はNRIグループの傘下に入っている。

 2017年までNRIでコンサルタントとして従事し、その後ブライアリー・ジャパンにてシニア・ディレクターを務める村瀬氏は、マーケティングの現場で起きている課題として、(1)顧客が増えない、(2)リピートされない、(3)定番しか売れない、(4)顧客が定着しない――の4つを挙げる。従来のCRMでは、こうした課題を解決するために顧客属性や購買情報に基づいて顧客をセグメント化し、そのセグメント単位でデジタルチャネルを通してコミュニケーションをとっている。しかし、似たようなマーケティング活動を行う企業が増えた結果、効果が薄れてきているのが現実だ。マーケティングを目的とした膨大な数のメールが毎日届くことにうんざりしている消費者も少なくないだろう。

 これに対して、ロイヤリティプログラムは(1)会員制度にエントリーしたが購買・利用が定着していない「一般顧客」、(2)リピート経験はあるが継続的ではない「ミドル顧客」、(3)継続的に購買・利用があり、ブランドへの愛着が定着している「ロイヤル顧客」――といったように顧客のステータスを定義し、ステータスごとに顧客に与えるインセンティブ(特典)を変える取り組みだ。単にコミュニケーションを取るだけでなく、それぞれのステータスに属する顧客が望んでいるカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供することが大きな特徴である。こうした取り組みによって、顧客をより上位のステータスへ導くとともに、ミドル顧客やロイヤル顧客の休眠や離反を防ぐ。

 村瀬氏は「適切なインセンティブを適切なタイミングで提供すれば、顧客のライフ・タイム・バリュー(生涯価値=LTV)は飛躍的に大きくなります」と強調する。実際、同社のコンサルティングサービスやITソリューションを導入している企業は、いずれも顧客価値(購買額)や購買頻度が大きく向上しているという。例えば、アパレル業界の顧客では顧客価値と購買頻度の平均がそれぞれ2.7倍と2.6倍に、旅行・サービス業界では同2.5倍と3.8倍、専門小売業界では同2.2倍と2.3倍になっている。

 村瀬氏は「CRMの取り組みで新規の顧客を獲得できたとしても、その後に休眠・離反してしまってはそれまでの投資がムダになってしまいます。ロイヤリティプログラムによって、既存顧客のLTVを高めていくことが大切です」と指摘する。既存の顧客は、新規の顧客に比べて購入額が67%も高いという調査結果もあるという。

CRMの側面からロイヤリティプログラムの有用性を指摘するブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンのシニア・ディレクター村瀬馨人氏
CRMの側面からロイヤリティプログラムの有用性を指摘するブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパンのシニア・ディレクター村瀬馨人氏

アプリを駆使したプログラムでLTVを向上

 セブン&アイ・ホールディングス傘下で生活雑貨チェーンを運営するロフトも、ブライアリー・ジャパンの支援の下でロイヤリティプログラムを実践している企業の一つだ。ロフトでは、従来から続く商品志向からの脱却を目指して、顧客志向・顧客育成の実現に向けたコミュニケーションチャネルとして「ロフトアプリ」を開発し、2014年11月にリリースした。同社では、このアプリを中核としたCRMを推進している。

 この取り組みでは、アプリを通じて暮らしと雑貨の情報を届ける「コトキジ」「モノキジ」を配信して来店を促す。店頭では、アプリユーザー限定のサンプリングやイベント体験といったCXを提供している。購買回数に応じてスタンプを付与するロイヤリティプログラム機能も備え、2018年6月時点で365万人もの会員を獲得しているという(図参照)。

「ロフトアプリ」を中心としたロフトのCRM推進
「ロフトアプリ」を中心としたロフトのCRM推進
来店前にアプリではコトキジ、モノキジで集客を促し、来店時には、コスメサンプリングやお誕生月特典配信などでリピーター化を促進。優良顧客限定の情報配信を行い、各種イベントへの招待などからロイヤリティ維持も実現する
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 2018年3月には、このアプリをリニューアル。この際にロイヤリティプログラムを強化した。新ロフトアプリでは、会計時にアプリを提示したり、来店時にアプリからチェックインしたりすると「ロフトスコア」が貯まるという新機能を搭載。1000スコアでスタンプ1個をプレゼントし、スタンプ6個で10%オフのクーポンを提供するという仕組みだ。これらの機能を通じて、一人ひとりのお客様の購買データを細かく捕捉できるようになった。

 同社では、LTVによって顧客のステータスを3階層に分類。LTVが上位20%の顧客を「ロイヤル顧客」、2番目を「ミドル顧客」、3番目を「一般顧客」と定義した。ロイヤル顧客による購買金額が、店舗での総売上高の約60%を占めているという。

 同社のロイヤリティプログラムでは、3つあるステータスごとにインセンティブを変えている。ロイヤル顧客に対しては、休眠や離反を防ぐためにロイヤル顧客限定の情報を配信。人気商品の予約開始・発売情報、各種イベントへの招待、クーポン利用期限の近い顧客への利用喚起などがある。

 ミドル顧客に対しては、リピーター化を目的としてスタンプ保持者に限定した特典の情報を配信する。店舗でもらえるサンプルの情報や誕生月の特典の情報などだ。一般顧客には、2回目の購買を促進する施策を実施している。初回の購買から一定期間購買のない顧客に対して「初回お買上サンクスクーポン」をプッシュで通知。2回目の購買に対してスコアを付与するという取り組みも行っている。

 ロフトの営業企画部でオムニチャネルの推進役を担う松本氏は「ロイヤリティプログラムは、お客様を上位のステータスに誘導するとともにLTVを高めていただくことが大きな狙いです。アプリのリニューアルから間もないのですが、既に大きな成果が表れています」と語る。

アプリを駆使したロイヤリティプログラムを実施するロフトの松本一歩氏は、狙いはLTV向上だと強調する
アプリを駆使したロイヤリティプログラムを実施するロフトの松本一歩氏は、狙いはLTV向上だと強調する

重要なのは、短期間でのPDCAサイクルの動き

 アプリは顧客への情報発信にとどまらず、接客や商品開発にも寄与している。アプリから収集したデータから顧客の買い周り傾向を把握する、あるいは購買傾向から商材特性を把握して販促活動や商品戦略に活用するといったことを実践している。こうした取り組みの中で、リピーター化やロイヤル化に結びつく商材や、クロスセル(併売)の頻度が高い商材などが明らかになってきた。一般顧客にはリピーター化に結びつく商材の情報、ミドル顧客にはクロスセル商材の情報を配信することで売り上げの向上に寄与しているという。

 松本氏は、CRMやロイヤリティプログラムに取り組む際には、短期間でPDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを回すことが重要だと指摘する。「商品企画などの本部が短サイクルで施策の実績を把握するとともに、その情報を現場である店舗に還元していくことが大切です。このような体制を築かないと、本部と現場を巻き込んだ改革を成功に導くことはできません」と強調した。

協力/ブライアリー・アンド・パートナーズ・ジャパン