世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である「Facebook」や、日本で2017年に流行語となった「インスタ映え」などの流行語でも話題の動画共有SNS「Instagram」などを運営するのが米フェイスブックだ。同社は2017年6月に打ち出した新たなミッションの下でコミュニティづくりに注力している。日本法人で執行役員を務める鈴木大海氏が、急成長が続くモバイル動画広告市場の動向や最新のクロスメディア戦略を解説した。

協力/フェイスブック ジャパン

【PR】Facebook、Instagram広告でテレビCM12倍の効果を生む方法(画像)

コミュニティづくりの支援をミッションに

 「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」。2017年6月、米フェイスブックは「コミュニティサミット」と名付けた初めてのイベントを米国シカゴで開催し、その場でマーク・ザッカーバーグ氏が今後10年間に向けた冒頭のミッションを語った。創業CEO(最高経営責任者)として同社を率いるザッカーバーグ氏は、世界中でコミュニティづくりに注力していくことを強調している。

 新しいミッションは「人と人とのつながりをサポートし、よりオープンでつながった世界を実現する」という従来のミッションを進化させたもので、ザッカーバーグ氏は「単につなげるだけではなく、人と人がより身近になるような世界を実現することに注力する必要があります」と語っている。新ミッションに基づく同社の取り組みについて、鈴木氏は次のように説明した。

 「新たなミッションを実現するには、人々が多様な意見を交換し合えるようにするだけでなく、ともに前進できるように共通認識を築けるようにすることが必要です。また、近しい人々や大事に思う人々とつながるようにするだけでなく、異なる見解を持った新しい人々とつながることも必要です。さらに近しい人、例えば家族や友達からのサポートだけでなく、コミュニティからのサポートが重要になるのです」

動画の機能追加でコミュニティ構築を加速

 鈴木氏は、こうしたコミュニティの構築を加速する上で動画が重要な役割を果たすと指摘する。テキストや静止画よりも没入感の高い顧客体験(CX)を共有できるからだ。実際、モバイルデバイスにおける動画の通信量は、この数年で急増している。鈴木氏は「モバイル動画の通信量は2016年から2021年の間に9倍に増加すると見込まれています。2021年までにモバイル通信のトラフィック全体の78%が動画になると予想されています」と説明する。

 こうした環境に向けて、Facebookが掲げる今後10年間のロードマップでも動画の活用に大きな力を注いでいる。まず、今後3年間のロードマップでは、同社が提供するアプリ(FacebookやInstagram、Messenger、WhatsAppなど)において動画に関する機能の追加・改善を最優先にしているという。どのアプリでも、これまでよりも簡単に動画を撮影して、共有することが可能になる予定だ。すでに米国ではFacebook内で人気の動画やオススメ動画を表示するタブを追加しており、世界中での展開も検討中だ。

 このほかにも今後の10年間で、世界中の人々があらゆる場所からつながって没入感の高いCXを実現できるような環境を築くためにプラットフォームやテクノロジーへの投資を続けていくという。例えば、Facebookで事業開発を担うInternet.org事業の新たな研究開発チーム「Connectivity Lab」は、小さな電球を点灯するのと同じわずかな電力で13キロメートル先を対象に世界記録となる毎秒20Gビットという高速通信を実現している。Internet.org事業では、すでに1億人以上もの人にオンライン環境を提供中だ。

 また、AI(人工知能)の領域では「スタイルトランスファー」と名付けた新テクノロジーを開発。このテクノロジーでは、AIが特定の画風を学習し、その後に全く別の写真や動画を撮影すると、同一の画風に加工する。例えば、スマートフォンのカメラで撮影した風景写真をゴッホやセザンヌの絵画のような画風に加工することが可能だ。

 2014年にフェイスブックが買収した米オキュラスでは、VR(仮想現実)を駆使したインタラクティブなCXを提供できるテクノロジーを開発している。すでにオキュラスのテクノロジーを活用したヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)である「Oculus Rift」「Galaxy Gear VR」などが製品化されている。これらを利用すれば、目の前に表れたVRの中で現実では味わえないようなCXを実現できる。さらに、2018年にはPCもケーブルも不要でスタンドアローンで利用できるHMD「Oculus Go」を発表した。ザッカーバーグ氏は、2017年10月にオキュラスが開催したイベントの基調講演で「Facebookが目指すゴールは、VRのユーザーを10億人にすること」だと語っている。

フェイスブック ジャパンの執行役員である鈴木大海氏。コミュニティづくりをミッションと掲げるFacebookにおいて、動画活用が重要な役割を果たすと語った
フェイスブック ジャパンの執行役員である鈴木大海氏。コミュニティづくりをミッションと掲げるFacebookにおいて、動画活用が重要な役割を果たすと語った

注目したい、テレビとモバイル動画の組み合わせ

 鈴木氏は、これらの新サービスや新テクノロジーが動画広告のマーケットの成長を加速すると分析する。動画広告の市場規模が、2023年には2016年の約4倍になるという調査結果もある(サイバーエージェント オンラインビデオ総研/デジタルインファクト調べ)。動画広告の中でも、インフィード広告(ウェブサイトやアプリのコンテンツとコンテンツの間に表示される動画広告)とインストリーム広告(テレビCMのように動画の最初や途中で表示される動画広告)の伸びが大きいという。

 モバイル動画はマーケティングのツールとして将来は有望であるものの、鈴木氏は「テレビの影響力はまだまだ大きいので、テレビとモバイル動画を組み合わせたマーケティング手法が注目されています」と指摘する。現在、テレビの広告市場は約2兆円と、モバイル動画を含めたデジタル広告市場全体(約1兆2000万円)の2倍近くの規模を誇っている。

 鈴木氏によると、第三者の調査からテレビCMと同社の「Facebook」および「Instagram」の相性が良いことが判明したという。Facebookは、グローバルで約22億人もの月間利用者を有する世界最大のSNS。動画再生回数は1日当たり平均で約80億回にも及んでいる。一方のInstagramは、グローバルで約10億の月間利用アカウントがある写真・動画共有SNS。こちらも動画の利用が急増しており、2018年1月からの半年間で、フィード及びストーリーズに動画を投稿した利用者の数は4億を超えている。今回の調査では、特に日本で「リーチ補完」「リーチ効率」「態度変容/行動変容」の3点において、一般的なマーケティング活動で重視されているM1層(20~34歳の男性)とF1層(20~34歳の女性)を中心に大きな効果を発揮することが分かったという。

 リーチ補完では、テレビCMとFacebook/Instagramを組み合わせると、テレビだけではリーチできない、あるいはリーチしにくい人にも広くリーチできるようになるという結果になった。テレビCMに1億円、Facebook/Instagramに1000万円を投じると想定した場合、M1層とF1層ではテレビのみでリーチできる人の割合が40.7%、テレビとFacebook/Instagramの重複でリーチできる割合が15.9%、Facebook/Instagramのみでリーチできる割合が14.1%となった(図参照)。

リーチ補完
リーチ補完
テレビCMとFacebook/Instagramを組み合わせると、テレビだけではリーチできない人にも広くリーチが可能になる。 出典:インテージ i-SSP 集計対象者:20~34歳男女 過去17案件の結果から推計
[画像のクリックで拡大表示]

 この数字から分かるように、影響力が大きいからといってテレビだけに投資するよりも、多少の資金をFacebook/Instagramに振り分けるだけでリーチできる範囲が大きく広がるのだ。

 リーチ効率とは、ターゲットを指定したキャンペーンにおけるリーチの平均精度のことだ。調査では、Facebookの精度が95%だったのに対して、国内の他のデジタルメディアでは62%と大きな差がついた。態度変容/行動変容でも、1imp(「imp=インプレッション」は広告掲載数の単位)当たりの態度変容効果(効果÷リーチ÷フリークエンシー)において「行動」と「イメージ」の項目で、Facebook/Instagramがテレビと他のデジタルメディアよりも大きな効果を示している。

Instagram広告がテレビCMの12倍の効果に

 鈴木氏は「テレビCMが放映されている間にFacebookのアプリの起動率が高まる傾向があります。CMと一緒にFacebookを活用することで消費者の注目をとらえることが期待できます」と分析する。実際、日本でもテレビCMと同社のアプリで販促効果を上げている企業が増えつつある。例えば、清涼飲料水の製造・販売を手がけるキリンビバレッジも、Instagramを利用したキャンペーンで大きな成果を上げている。

 同社の紅茶飲料「午後の紅茶」のキャンペーンでは従来、主にテレビCMを活用してブランド認知度を高めることに重点を置いていた。こうしたキャンペーンでは、テレビCMでリーチできない消費者に対して、いかに認知度を高めるかが課題となっていた。そこで、「午後の紅茶」のコアターゲットであるF1層を対象として、Instagram上で広告活動を展開。テレビCMを併用した場合の効果を検証した。

キリンビバレッジのInstagramを利用したキャンペーン
キリンビバレッジのInstagramを利用したキャンペーン

 この結果、飲用意向とターゲットリーチのコスト効率が大きく向上することが判明した。Instagram広告の効果による「飲用形成(購買に近い部分の意向形成)」が、テレビCMの12倍にも達したという。Instagramへの投資はキャンペーンの予算全体の5.5%にすぎないが、ターゲット内のGRP(延べ視聴率)では21.2%のシェアを占めた。

 認知形成についてはテレビのスコアの方が高いという結果となり、特に若年層をターゲットにした場合はテレビCMの予算をデジタルに振り分けるなど、テレビとデジタルを併用することに効果があることが知見として得られた。今後は、テレビとデジタルのどちらか一方だけを使うのではなく、コミュニケーションの目的によって予算比率や出稿内容を決めていく計画だという。

 Facebookによるウェブサイト「Facebook Business」および「Instagram Business」では、世界中の成功事例に加えて、広告出稿後の効果や目的に応じたアクションなども掲載されている。また、「Facebook Blueprint」ではFacebook広告、Instagram広告の効果を最大限に引き出すためのオンラインの無料トレーニングを受けられる。これら興味のある方は参照してみていただきたい。

メディア特性に合ったクリエイティブの必要性

 鈴木氏は動画広告でも、メディアの特性に合わせたクリエイティブがないと効果が薄くなってしまうと強調する。「テレビCMの場合は30秒の尺があっても、消費者は付き合ってくれますが、ウェブサイトやスマホのアプリで同じものを流しても最後まで見てくれるケースは極めて少ないのが現実です」と話す。

 PCで閲覧するウェブサイトとスマホのアプリでも、最適なクリエイティブが変わってくるという。消費者は画面をスクロールしながら自分の興味があるコンテンツにのみ手を止めるが、1画面分をスクロールする時間が異なるからだ。PCの場合は平均2.5秒、スマホでは約40%少ない平均1.7秒となっている。鈴木氏は「PCよりもスマホの方が、より瞬間的に消費者のアテンションをとらえるコンテンツが必要になります」と語る。

 こうしたメディアの特性に加えて、同氏はターゲットとする消費者の特性にも考慮しなければならないと指摘する。年齢層によってスクロールのスピードが変わってくるからだ。18~24歳ではスクロールのスピードが早い消費者が約50%いるが、45歳以上ではこの割合が1桁になる。60歳を超える消費者はスクロールの時間に20歳未満の2.4倍を要しているという。「ターゲットにする年齢層に合わせたクリエイティブが必要です。動画の作り方も変えるべきですし、そうしないと投資対効果が悪化してしまいます」と指摘する。

スクロールが速い人 = スクロール速度が上位10%の利用者、スクロールが遅い利用者 = スクロール速度が下位10%の利用者。 出典:Facebook内部データ(2016年12月~2017年1月)
スクロールが速い人 = スクロール速度が上位10%の利用者、スクロールが遅い利用者 = スクロール速度が下位10%の利用者。 出典:Facebook内部データ(2016年12月~2017年1月)
[画像のクリックで拡大表示]

 鈴木氏によると、人間がスマホでコンテンツを閲覧する際には3種類の「集中モード」があるという。具体的には(1)移動中、(2)リーンフォワード(能動・前傾)、(3)リーンバック(受動・後傾)――の3つだ。

 「移動中」モードは、外出先での視聴を含むものの、物理的に人が移動している状況だけを指すものではなく、次から次へコンテンツへとスクロールするような視聴スタイルのことだ。「リーンフォワード」モードは、積極的にインタラクションを求めて動画に引き込まれている状態のこと。ライブや360度など、コンテンツに出会って「思わず見てしまう」という状況を指す。「リーンバック」モードは、動画視聴のための時間をあえて取ろうとしている場合の視聴モード。「あえて」なので、集中度も高く没入している状態である。

 鈴木氏は「マーケティングの目的によって、ターゲットとする集中モードを選ぶことが大切です」と前置きして、それぞれのモードに向いた目的を(1)移動中は認知、想起、獲得、コンバージョン(広告の閲覧から実際の購買に結びつく行動)、(2)リーンフォワードは検討、エンゲージメント、コンバージョン、(3)リーンバックは動画広告の再生完了、複雑なストーリーテリング――だと説明した。さらに、それぞれのモードに適した表示スタイルを選ぶことも必要だと指摘する。Facebookが提供している広告フォーマットでいうと、(1)移動中では「短尺動画広告」やInstagramの「ストーリーズ広告」、(2)リーンフォワードでは「キャンバス広告」や「コレクション広告」、(3)リーンバックではFacebook & Audience Network上の「インストリーム動画広告」――が適しているという。マーケティングの目的と広告フォーマットの関係について、鈴木氏は次のように説明する。

 「目的の優先順位を決めると、指標上のトレードオフが起こることがあります。短尺動画はリーチを拡大するのでCPM(広告インプレッション1000回当たりの広告料金)の削減につながる半面、視聴時間は下がることになるでしょう。インストリーム動画は視聴時間が上がりますが、リーチは下がります。こうした関係を十分に理解した上で、ターゲットにする集中モードと広告フォーマットを選択することが大切です」

マーケティングの支援で企業の競争力を向上

 動画のストーリー構成にも工夫が必要だという。テレビCMの場合は、ストーリー上の起承転結を考慮してメインメッセージを動画の終わりに置くのが一般的だが、これでは最後まで見てもらえない可能性が高まる。「モバイル動画では、メインメッセージを最初に置いて視聴者を引きつけることが必須です」と指摘する。実際、ある企業が自社製品のテレビCMを、このような構成で編集し直したモバイル動画を制作したところ、大きな成果が表れたという。モバイルでもテレビCMをそのまま流した時に比べて、動画を最後まで視聴した人の数が20%増、テレビCMと比較した際のブランド想起率が10%向上という結果になった。

テレビCMをそのまま流さずモバイル用に編集すると、「最後まで視聴した人数」の割合が増えるなど、効果が高まる
テレビCMをそのまま流さずモバイル用に編集すると、「最後まで視聴した人数」の割合が増えるなど、効果が高まる
[画像のクリックで拡大表示]

 「テレビやウェブサイト、スマホアプリなどで動画広告を提供できるチャネルが爆発的に増えている現在、投資対効果を最大限に引き出すようなマーケティングプランが企業の競争力に大きな影響を与えることになります。フェイスブック ジャパンは、マーケティングの支援を通じて日本企業のビジネス成長に貢献していきたいと考えています」。鈴木氏は、このように語って講演を締めくくった。

 Facebookでは、2018年8月から「動画作成キット」の提供を開始する予定だ。広告主は既存の動画・画像素材を使用し、目を引くモバイルに最適化された動画広告の作成が可能となる。現在試験運用を行っており、8月中にFacebook、Instagram、Messenger、Audience Networkの広告を対象に、すべての広告主への展開を予定している。

協力/フェイスブック ジャパン