2020年度から新しい学習指導要領が実施される。小中学校の教科に大きな変化はないが、知識を「覚え込ませる」ことから「使いこなす力」を育てることに指導のポイントが大きく変わるという。その新学習指導要領の策定にかかわるなど、教育界でのキーパーソンとして知られる上智大学 総合人間科学部 教育学科 教授の奈須正裕氏に、新指導要領の特徴とICT教育との関わりについて聞いた。
協力/インテル
2020年からは知識重視から行動特性重視へ
AI(人工知能)の急速な進歩によって、“人間の仕事がどんどん機械に置き換えられるのではないか?”という危惧が広がっている。
実は2020年度から実施される新学習指導要領は、そんな未来を子どもたちが自分らしく生き抜いていくために改訂されたものだ。
「AIにできることはAIに任せ、人間は人間にしかできないことをやる。機械は過去のデータに基づいて物事を処理することはできますが、未経験なことや突発的な出来事には対処できません。そこに人間が生きる道が残されているのです。新学習指導要領は、そんな『未来を生きる力』を子どもたちに育てることに重点を置いています」(上智大学 総合人間科学部 教育学科 教授 奈須正裕氏、以下同)

ポイントとなるのは、知識を「覚え込ませる」教育から、「使いこなす力」を育てる教育への大転換である。
新学習指導要領では、小学校段階におけるプログラミング教育の必修化など、教科の変化ばかりが注目されがちだ。しかし奈須氏は、「小中学校に関して言えば、原則的に従来の教科が大きく変わることはありません。その点では、過去に比べて最も変化の少ない改訂だと言えます」と説明する。
決定的に変わるのは「学力」の判断基準である。
「“どれだけ物事を知っているか?”というコンテンツベース(知識重視)の判断基準から、“持っている知識を使って何ができるか?”というコンピテンシーベース(問題解決力重視)の判断基準に変わります。知識はあくまでも物事を考えるための材料にすぎません。2020年度以降は、知識をいかに論理的に組み合わせて、自分の意見を述べたり、目の前で起こっていることに適切に対処したりできるかが問われるようになり、そうした力を養うための学校教育が実践されるようになるのです」
子どもたちが「人間らしさ」を取り戻す教育へ
コンピテンシーベースの学力を追求する動きは、「世界的なトレンド」だと奈須氏は指摘する。背景にあるのは、第4次産業革命と呼ばれる新しい変化の到来だ。
「現在の学校のあり方は、第1次産業革命が起こった18世紀後半に形作られました。蒸気機関が発明されて大量生産が行われるようになると、工場で機械のように働く人材が求められるようになった。機械を動かすための知識だけを持ち、余計なことは考えずに働き続ける人材です。これまでの学校教育は、そんな『機械化された人間』を生み出すという目的を200年以上も引きずってきたのです」
しかし、第4次産業革命でAIやIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどが活用されるようになると、そうした単純労働は完全に機械に置き換えられる。
ようやく人間は「機械化」から解放され、「自分らしさ」や「自分にしかできないこと」の追求に専念できるようになるのだ。コンテンツベースからコンピテンシーベースへの教育の転換は、まさにそうしたニーズへの適応である。
「考えるために必要なコンテンツは、パソコンやタブレット端末からいくらでも引っ張り出せます。それをどう生かして、問題解決や新しい物事の創造に役立てるかということが問われるようになってきているのです。欧米ではすでにコンピテンシーベースの教育が本格化していますが、日本も周回遅れながら、新学習指導要領の実施によって、ようやくその波に乗ろうとしています」と奈須氏は語る。
新学習指導要領で、小学校段階からのプログラミング教育が必修化されたのもコンピテンシーベースの教育の一環である。
「将来、不足が懸念されるプログラマーを大量育成するための取り組みだと思われているようですが、そうではありません。本当の狙いは、『機械はどうやって動くのか?』『どう指示すれば動かせるのか?』を理解させることにあります」と奈須氏は説明する。
今後AIやIoTがさらに発達すると、“人間が機械に使われる”ようなことも起こりかねない。「あくまでも人間が主体となって、自分が設定した目的のために機械を使いこなし、よりよい人生や社会づくりに生かしていけるような教育が求められています。将来どんな職業に就くにしても求められる“基礎体力”を身につけさせる教育なのです」

「本物らしさ」を学ぶにはパソコンに触れることが大事
新学習指導要領の実施によって、学校におけるICT教育がますます本格化することは間違いない。知識はパソコンやタブレット端末から引っ張り出し、それを組み合わせて考えさせることに教育の重点が置かれるようになるのだから、児童・生徒1人につき1台のタブレット端末配布や、校内全体をカバーするWi-Fi環境など、インフラとネットワークの整備が進むことだろう。
奈須氏によると、子どもたちの将来のことを考えた場合、パソコンのキーボードによるローマ字日本語入力や、「マイクロソフトOffice」をはじめとするオフィス用ソフトの活用は、「身につけておいて損のない力になる」という。
「近年の教育では、早い時期から子どもたちに“本物らしさ(オーセンティシティー)”を体験させることが重要視されています。キーボードによるローマ字日本語入力やオフィス用ソフトを活用することは今の社会人にとってあたりまえな能力であり、当面必須であり続けるでしょう。これは学術の分野においても同様です。子どもたちをパソコンに慣れ親しませることは、そうした将来の仕事の仕方を早くから本物らしく体験することにつながるのです」
子どもがどの端末に慣れ親しむようになるかは、最初に触れるものによって決まる。タブレット端末に慣れた子どもは、どうしてもパソコンのキーボード入力を習得するまでに時間がかかりやすいようだ。
奈須氏は、「家庭で与える端末についても、『将来どんな大人になってほしいか?』という思いを踏まえ、いろいろお考えになってから決めたほうがいいのではないでしょうか」とアドバイスする。
2020年からの新学習指導要領の実施、ICT教育になっていくとともに、子どもにとってデバイスの在り方も変わっていく。中高、大学と小論文やレポート、プレゼンテーションなど、学校でもICTをツールとして活用し学ぶ機会がどんどん増えてくる。子どもの将来へ向けて、パソコンに触れさせてみてはどうだろうか。

薄くて軽いボディのため子どもでも持ち運びしやすく、さらに2in1モデルであれば、プログラミングをするときなどはノートパソコンとして、親子でゲームや動画を見るときはタブレットとして使うことができるのだ。また、バッテリー駆動時間も長く、長時間使用できるうえに、インテル Core プロセッサー搭載、SSD搭載のため処理速度も速い。他にも、直に操作できるタッチスクリーンやペンの機能もあるため、イラストを描くなどいろいろな使い方ができるのも魅力の一つ。子どもも親も使えるインテル一押しのパソコンをぜひチェックしてみては?
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