2002年に日本航空に入社し、09年からWeb販売部に。月間2億ページビューに上るJALホームページのログ解析や顧客情報分析を担当。顧客の閲覧傾向に応じてお薦めするコンテンツを使い分け、購入率をアップするなどの成果を上げた。14年、日経情報ストラテジー誌による「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」受賞。19年からデジタルガレージに移り、グループ全体でのデータ活用を推進するためCDOに就任。その後、21年6月より東日本旅客鉄道 MaaS・Suica推進本部 データマーケティング部門担当部長。統計解析や実務に役立つ分析手法に詳しく、総務省統計局などの講師・講演多数

これまで一番達成感を得た仕事は?

 JALのホームページに、従来は全くやっていなかった個別のレコメンドのシステムを導入し、お客さまごとに最適な提案をできるようにしたこと。またマーケティング施策を考える際にデータ分析を定着させたこと。いまでは常時100種類を超える施策をデータに基づいて実施するまでになっている。

商品・サービス、事業開発で重要だと思うことを3つ挙げてください

① お客さま視点
② データを活用したり読み解く力
③ 社内外の多くの人との雑談

これから仕掛けたいことは?

・デジタルガレージグループ内やお取引各社様のデータを活用して、新事業やデータの価値化に取り組みたい。
・全社員がふつうに分析できる会社(Data Driven Company)を目指して、ビジネスアナリティクスの普及・推進をしたい。
・効果のあるクリエイティブを科学的に解明し、再現性のある施策に活かしたい。

最近気になっている言葉や現象、技術は?

 パーソナルデータの扱い方、GDPR、ITP問題。

 CRM(Customer Relationship Management)からVRM(Vender Relationship Management)へ。

尊敬するマーケター、経営者、研究者…と、その理由は?

 ある事業会社のデータ分析組織の設立者。データ分析と活用の本質を捉え、企業に分析の価値を根付かせたから。日本企業がデータドリブンになるモデルケースになると思う。

最近、読んだ本で仕事の参考になったものは?

『マーケティングは進化する』(水野誠著)
 マーケティングサイエンスの手法を用いながら、科学的に美しくマーケティング事象を説明している。特に新しいデジタルマーケティング分野の分析手法なども紹介されており、実務でも活用してみたいと感じた。世界の潮流を手軽に概観できるのもよい。

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング著)
 データを使って事実を読み解き、それをわかりやすくプレゼンする方法が、実体験と興味深い事例で紹介されている。「本能を抑えて、事実を正しくとらえる謙虚さをもて」とのメッセージは、分析者としてあるべき姿勢を再認識させてくれる。

トレンドをウオッチしている他業界は?

 通信業界と金融業界。いずれも多くの顧客データを持つ一方で、商品数はそれほど多くなく、寡占かつ規制の多い業界であるから。施策や投資などの動向が気になる。

 それと健康関連。究極のパーソナルデータである健康情報(病気も含む)をどう個人や社会のために役立てていくのか、注目している。