「もうジョジョ以外は描けません」(荒木氏)

編集部:昨年から「ウルトラジャンプ」で連載がスタートした新作「ジョジョリオン」ですが、まだ謎の多い展開ですね。今までの作品は、主人公が何者であるか、それこそキャラクターの身上書がはっきりわかったうえで話が展開されていましたが、ジョジョリオンでは、主人公の素性すら明かされていません。

荒木氏:「ジョジョリオン」の主人公は、自分探しをしている段階ですね。それを描いていくうちに、家系とか、生まれてきた意味みたいなものが見えてくるといいのかなと思っています。ジョジョの第1~3部では先祖の時代の因縁が世代を超えて主人公に降りかかってくるという怖さを描いたわけですが、ジョジョリオンでは、例えば親が罪を犯したら子供もそれを受け継いでしまうのか、親の教えは子にどう影響するのかといった、一種の呪いみたいなのを乗り越えるにはどうしたらいいかを描いていきたい。それは非常に怖いことのような気がする。ニュース番組を見ていて最近の社会事件などを目にすると、そういう怖さを感じるんですよね。

編集部:「ジョジョリオン」のクライマックスは、先生の中ではもう見えているんですか。

荒木氏:あんまり見えないですね。これまでは、ラスボスと最初のキャラクターとか、途中はどう進んでも最後はここに辿り着くというふうに話を展開してきたんですけど、「ジョジョリオン」はちょっと違う。でも、「ジョジョリオン」の舞台が第4部の「ダイヤモンドは砕けない」と同じS市杜王町ということで、第4部の主人公だった「東方家」の裏に何かあるなという感じはありますけどね。

編集部:新しい物語の描き方に常にチャレンジする姿勢は、ジョジョの連載が始まった25年前と変わらないのですね。

荒木氏:それはデビューしたときに編集部から刷り込まれましたから。そういうのはありますよね。

編集部:最初、荒木先生が「週刊少年ジャンプ」編集部に作品の持ち込みをしたときは、結構、厳しいことを言われたそうですね。

荒木氏:ジャンプの人たちは、遠慮しないんですよね。「こういう作品は見たくない」とか言うんですよ(笑)。僕はいきなり「ホワイト抜けてるだろう」と言われて、「こういうのやめてよね、一番最初で。子供でもできるんだから」と厳しく言われました。ショックでもう、すぐに仙台に帰りたいって思った(笑)。

編集部:今年は連載25周年を迎えて、グッチとのコラボレーションなど、多方面の活躍が目立ちます。今後、例えばホラー映画のシナリオ制作みたいなことなど、荒木先生の力を発揮できる分野があると思うのですが。

荒木氏:いや、でも僕はマンガ家なので、マンガの中ですべてを表現したいですね。イラストを提供するといったコラボはあるかもしれませんが、そこからはみ出ることはないです。

編集部:また、今はネット媒体の他に電子書籍なども出てきて、マンガ雑誌を含めて紙媒体の置かれている状況が変わってきています。

荒木氏:僕が思うのは、デジタルって否定すべきことではないけど、デジタル作品はアナログに戻れないんですよね。一方で、紙に描いたイラストやマンガは簡単にデジタルに変換できる。だったら、アナログで描いていたほうが有利かなと僕は考えていて、紙へのこだわりは捨てたくないですね。今回、「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」をやらせていただいているんですけど、それはデジタルで描いていたらできなかっただろうなと思います。こういうアナログに対するこだわりというのは、ヨーロッパでリアルの芸術作品から受けた衝撃、そういう原体験みたいなものが少なからずあると思いますね。

編集部:最後に、荒木先生の中で今後ジョジョ以外の新たな作品を描くという方向性はありますか。

荒木氏:ジョジョ以外は、スピンオフ作品ぐらいでしょうか。新たな作品はないですね。この25年の間に、「何かもうちょっと新しいの描いてみたら」と言われたこともあるんですけど、「すみません。ジョジョ以外は描けません」と、言ってきたので。でもそれで良かったのだと思います。スポーツ漫画とか描いていたらちょっとやばかった(笑)。次の25年も、きっと新たな奇妙な冒険を描いていると思います。

■ 荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展
会場:森アーツセンターギャラリー
     東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ 森タワー52F
会期:2012年10月6日(土)-11月4日(日) 会期中無休
公式サイト:http://araki-jojo.com/gengaten/tokyo/
※前売券は完売しています。当日券の販売予定もございません。

(構成/勝俣哲生=日経トレンディ編集部、写真/古立康三)