第2弾のクラウドファンディングも成功

 昨年11月の上映開始を機に、クラウドファンディングの第2弾もスタートさせた。『この世界の片隅に』は海外配給が英国、フランス、米国など、世界15カ国で決まっているが、公開時に各国へ片渕監督を送り出し、上映館で現地の観客と直接語り合う場を作るための渡航費の捻出が目的だ。第2弾も大盛況で、わずか11時間で目標額の1080万円を超えた。

Makuakeで募集している第2弾プロジェクト。締め切りまであと僅か
Makuakeで募集している第2弾プロジェクト。締め切りまであと僅か
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―― 第2弾のクラウドファンディングをなぜやろうと?

真木: 公開前は、宣伝費が少なく、テレビのスポットCMもほとんど打たないなか、注目されるかどうか、ずっと不安でしたからね。ですから、この映画を広く認知してもらうために、再度クラウドファンディングで宣伝効果を狙おうと思ったわけです。問題は、プロジェクトの中身をどうするかということ。最初のクラウドファンディングの支援者を裏切るような内容ではいけないですし。

 そこで、この映画の海外進出の手伝いをしていただけないかということをテーマにしました。日本の良質なアニメ作品を海外の方にもっと見ていただきたいし、この作品は日本の文化と言ったら大げさですが、作り手としても自信を持って送り出せるものですので、その海外で映画を売っていくための応援団になってくれないかと。ありがたいことに瞬時に目標額に達してしまったので、急きょ片渕監督の意向で上限を約3000万円に設定しました。製作費や宣伝費はいくら集まっても良いですが、海外への渡航費はお金が余ったら使い道がなくなり、困りますから(笑)。

―― 今回のクラウドファンディングの成功を見て、今後、他の映画でも活用する動きが活発になりそうですね。

真木: どうでしょうかね。僕たちが最初のクラウドファンディングを行って1年半以上経ちましたけど、未だに後に続く成功事例が出ていません。『この世界の片隅に』でそんなに資金を集められたなら自分たちもやってみようという人が出てきてもおかしくないのですが。個人的には、マーケティング的な視点で見ると、実は映画はクラウドファンディングに不向きではないかと思っています。向いているのは、やはりプロダクト系ですよ。何か新しいガジェットを開発する場合、もし支援金がたくさん集まってプロジェクトが成功すれば、これは売れると考えて大量生産して市場に出すという循環が可能になる。しかし、コンテンツ系だと、そういった分かりやすい循環はないですから。

 この先、あるいはクラウドファンディングの認知が進み、映画の製作費を全額調達することができる作品も出てくるかもしれません。しかし、その映画がヒットするかどうかはまた別の話。作るだけで仕事は終わりではなく、ヒットしないと意味がありません。

 さらに、すべてのクリエイターがクラウドファンディングを使ってプロジェクトを成功できるかと言えば、そうではない。クリエイターの資質が左右すると思います。片渕監督だから今回はうまくいった。元々ファンとの交流を大切にするタイプだからこそ、多くの応援団が集まり、メルマガによるコミュニケーションを継続的に図ることができ、ヒットにつながる下地を作ることができたわけです。片渕監督や新海監督のように、ファンや観客とコミュニケーションを図ることを大切にしていて、それが映画作りの重要な要素と認識しているクリエイターであれば、クラウドファンディングをうまく使いこなせるのではないでしょうか。

(文/高橋 学、写真/古立康三)