ヒットにつながった支援者との“共犯”関係

 昨年11月に映画が公開された後は、ミニシアターを中心に63館と、大手の作品に比べて少ない上映館数で始まったにもかかわらず、公開1週目の観客動員数ランキングが10位と健闘。2週目も10位、3週目は6位、4週目は4位とみるみる順位を上げ、興収も前週比でアップするなど、まさに快挙と呼べる滑り出しを見せた。

プロデューサーの真木太郎氏
プロデューサーの真木太郎氏
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―― スタートダッシュに成功し、独立系映画では異例のヒットを記録していますね。

真木: 映画は公開して最初の週の興収と順位が一番良くて、そこから徐々に下がっていくのが一般的な傾向ですが、この映画は逆にどんどん上がっていきました。手前味噌ですが、大健闘です。目標の興収をよく聞かれて、僕は公開当初に自分のフェイスブックで「目指せ、奇跡の10億!」と書きましたが、それが奇跡ではなく、今や確実に起こる現実に変わっています(編集部注:1月4日に10億円突破)。独立系映画でテレビのスポットCMもなしで、もし20億円の大台に乗ったら、超画期的でしょうね。

 昨年はアニメ映画『君の名は。』が大ヒットして、興収が200億円を超えました。監督の新海誠さんの前作『言の葉の庭』の興収は1.5億円ですが、そこから200億円ですからね。『この世界の片隅に』の片渕監督も前作の5000万円弱から一気に10億円の大台に乗るのが確実だから、ケタが違うものの、現象としては似ているかもしれません。新海監督もファンとのコミュニケーションをとても大切にされるタイプで、その点も片渕監督と似通っています。こうして何作品も作って地道に頑張ってきた監督が快挙を成し遂げられたというのは、本当に良い話だと思います。

―― その快挙といえるヒットを記録した要因をどう考えますか?

真木: クラウドファンディングで集まった応援団のクチコミに加えて、評判を聞いて鑑賞したその他の方々が、同じように共感し、一緒になってクチコミをしてくれたおかげではないでしょうか。映画への共感にとどまらず、人に伝えたくなる、もっと言えば、伝えなければならない義務感にかられる。いわば共感から「感動の共有」に発展したことが大きな要因だと考えています。さらに、その先で何が起こったかというと、「共犯」ですよ。つまり、友人や知人に「あなたも見なさいよ」「一緒に行きましょうよ」と、おせっかいな大阪のおばちゃんじゃないけど、少し強引に薦めたり、誘ったりするなど「共犯」ともいえる強力な支援の現象が広がったのだと思います。まさに、これも市民運動、市民映画といえる所以です。

 そうやって共犯の関係にある人も含めて、映画をリピートする人が多いことも、この映画の特徴でしょう。片渕監督がリアリズムを追求して微細に絵を作っていますから、見逃してしまっていた点をリピートのたびに発見することができ、何度見ても感動できます。主人公のすずさんに共感できる部分が見るたびに違ったりして、あれ、前回はここで泣いたけど、今回は別のこの場面で泣いたというのは、エンターテインメントとして面白いでしょう。

―― 主人公すずの声をのん(能年玲奈)さんが担当したことも大きな話題になりました。

真木: キャスティングを実施するときに、のんさんが候補に挙がって、実際にオーディションをしてみたら、バッチリでした。いや、バッチリを通り越して、あり得ないくらい役にピタリとはまった。のんさんは天才的な感覚というか、役どころをつかむ女優としての技に長けていて、感覚的にすずさんの声はこうあるべきというものを、頭のどこからか持ってきた。それはもうビックリですよ。アニメは絵だけではどうにもならないので、音や声は映画の出来を左右する非常に大きな部分。のんさんの声はまさに「画竜点睛」でしたね。