愛犬の健康を願う飼い主が増加

 料理教室後に行われたアンケートによると、毎日手作りごはんを与えているという人は23%。週に2~3回ほど手作りをしている人を合わせると36%にものぼる。キャベツ、大根、ニンジン、ゴボウなどの野菜や、肉を茹でる。そんな簡単なことから手作りごはんを始める人が多いようだ。

 都内でロングコートチワワを飼っている参加者は、手作りごはんを始めたきっかけについてこう話す。「涙やけがひどく、市販のドッグフードに不安を感じたのがきっかけです。面倒じゃない?と聞かれることが多いですが、基本的に家族のメニューと同じで、味付けはしませんから、そんなに大変じゃない。それより愛犬の健康の方が大切です」

 ちなみに、涙やけとは目の下が常に濡れていて、毛が変色してしまう症状。犬の目は常時涙が分泌されているが、目からあふれることはない。それは、分泌された涙が涙管を通って鼻腔へ流れていくからなのだが、この涙管が詰まることで、涙が鼻腔へ流れなくなりあふれてしまう。あふれた涙にバクテリアが繁殖して、目の下の毛が焼けたように変色してしまうのだ。いま、小型犬を中心に急増しており、食事が原因ともいわれている。

 健康的な生活のために食事を見直す。この流れは、人間社会同様に加速しているようだ。その根底には「食品偽造が相次ぎ、加工食品に対する不安感の高まりがある」と指摘するのは、獣医師・獣医学博士として動物病院も経営する須崎恭彦氏。「愛犬のための手作り健康食」など、手作りごはんに関する著作を多数もち、食事改善をベースにした原因療法を行っている第一人者だ。

「最初に犬の手作りごはんの本を出版したのは02年。当時は犬のごはんを手作りするなんて、ほとんど受け入れられなかったのですが、10数年たってようやく定着してきました」と須崎氏。そうした流れに通底しているのは、前述した健康志向の高まりに加え、それを願う飼い主の愛情の高まりだ。「昔は、重たい鎖でつながれた番犬でしたが、いまは、単なるペットではなく我が子同然なのです」(須崎氏)

 今回取材した料理教室でも、参加者のまなざしは真剣そのもの。材料や調理法、注意点など細かな質問が飛び交い、会場は熱気に包まれた。講師を務めた水野雪絵氏も参加者たちの熱さを肌で感じている。「もともとは自宅で人間の料理教室を行っていたのですが、犬用の要望が強くリクエストにお応えしたところ、すごく熱心な方ばかり集まっていただいて。時間をかなりオーバーしても質問が止まらない(笑)」(水野氏)。以来、犬専門の料理教室にくら替えしたのだそうだ。

イベントなどのアナウンサーとして活躍しながら愛犬料理教室の講師を務める水野氏
イベントなどのアナウンサーとして活躍しながら愛犬料理教室の講師を務める水野氏
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