【第三のトレンド】有名チェーンの“ボーダーレス”新業態が続々

 大手チェーン店の新業態店も多かった。なかでも目立ったのが、従来の業態の幅を広げて顧客層の拡大を狙った“ボーダーレス化”だ。

 その代表が、回転ずし最大手「あきんどスシロー」(大阪府吹田市)が1月に出店した回らないすし店「ツマミグイ」(関連記事「スシローの回らないすし店「ツマミグイ」に潜入! “300円おつまみ”に大満足、しかし衝撃的結末が!?」)。その名の通り、つまみに力を入れていて、1皿300円の前菜をカウンターから自由に取る形式。すしを楽しみたい客、つまみを食べながらゆっくり飲みたい客、両方の満足感を狙った。

 また 「一番かるび」「焼肉きんぐ」などロードサイドを中心に全国で140店舗の焼き肉店を運営する物語コーポレーション(愛知県豊橋市)は4月、初の都心型店舗「熟成焼肉 肉源」を東京・赤坂にオープン(関連記事「郊外人気店「焼肉きんぐ」が都心に殴り込み! 新業態「肉源」は“ギャップだらけ!?”」 )。カフェとしても使え、焼肉店としてもバルとしても使える店を想定していくつものシーンに対応する空間を作り、デザートも充実させている。「利用動機はひとつでも多いほうがいい。残業帰りに、ひとりでちょっとだけ焼き肉をつまんでビールを飲んでから帰る、そういう使い方も都心型の焼き肉店では需要があるのでは」(物語コーポレーションの加治幸夫社長)

 ワタミフードシステムズ(東京都大田区)は9月、日本籍船が漁獲した天然マグロを提供する居酒屋「ニッポンまぐろ漁業団」を東京・新橋にオープン(関連記事「ワタミの新戦略、サントリーとコラボした“マグロ特化型総合居酒屋”とは?」)。マグロの赤身からトロ、希少な脳天やカマまでをひと皿で味わえる6種類の部位の刺身盛り合わせ「まぐろ尽くし」、魚を横からスライスし、赤身、中トロ、大トロ、幻といわれる砂ずりまで、一枚の切り身で全て味わえる「ミナミまぐろ断面切り一枚刺し」など、他では食べられないメニューを揃えている。総合居酒屋離れが進むなか、ワタミの持ち味である総合居酒屋の文化も残しつつ、特色を出す必要に迫られた同社が、「専門性のある総合居酒屋」というボーダーレスな業態を目指し、行きついたのが同店というわけだ。

回転ずし最大手「あきんどスシロー」の回らないすし店「ツマミグイ」店内奥にある「前菜テーブル」には、一皿300円の小皿が並んでいる
回転ずし最大手「あきんどスシロー」の回らないすし店「ツマミグイ」店内奥にある「前菜テーブル」には、一皿300円の小皿が並んでいる
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「熟成焼肉 肉源」名物のデザート「The Big Apple~焼きたて ハウス アップルパイ~」(800円)。鉄板とほぼ同じサイズにたじろぐが、パイの層が薄く軽いので、1人1枚は軽くいける
「熟成焼肉 肉源」名物のデザート「The Big Apple~焼きたて ハウス アップルパイ~」(800円)。鉄板とほぼ同じサイズにたじろぐが、パイの層が薄く軽いので、1人1枚は軽くいける
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ワタミフードシステムズ「ニッポンまぐろ漁業団」の看板商品「ミナミまぐろ 断面切り一枚刺し」(1890円~)。ミナミマグロの腹部分を大胆にカットし、赤身の中でも極上とされる天身から脂ののった砂ずりまで、1枚ですべて堪能できる重さに応じた3段階の価格設定
ワタミフードシステムズ「ニッポンまぐろ漁業団」の看板商品「ミナミまぐろ 断面切り一枚刺し」(1890円~)。ミナミマグロの腹部分を大胆にカットし、赤身の中でも極上とされる天身から脂ののった砂ずりまで、1枚ですべて堪能できる重さに応じた3段階の価格設定
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 新施設やリニューアル施設で飲食店が充実してきたのは、人々の消費がファッションやモノよりも生活、特に食に向かっている表れだろう。「利用者のライフスタイル全体や1日の過ごし方、施設に立ち寄っていただくための利用シーンなどを検討した結果、飲食・カフェ・サービス・雑貨など、必然的にアパレル以外の構成が高くなった」(「渋谷モディ」を担当したエイムクリエイツ 空間プロデュース事業本部 チーフディレクターの三木聡子氏)という言葉にもそのことが象徴されている。

(文/桑原恵美子)