創業122年目の大発見!?

 「あごだし鍋」シリーズを発売した久原醤油は、創業122年という福岡県の老舗醤油蔵。「キャベツのうまたれ」のヒットで知られ、近年はグループ会社の久原本家が通信販売を中心に展開する「茅乃舎だし」が料理好きなシニア・高齢層主婦の支持を得ている。さらに2011年に発売した「もやしのうま鍋」のヒット以降、「キャベツのうま鍋」「はくさいのうま鍋」「きのこのうま鍋」「じゃがいものうま鍋」と、野菜のうま鍋シリーズを展開している。

 あごだし鍋シリーズでは久原醤油が長年培ってきただしの調合技術を生かし、あごだしのうまみによる本格的な味作りを目指したという。暖冬で多くの鍋スープが苦戦しているなか、同シリーズは予想以上によく売れているそうで、女性誌の鍋ランキングで1位に選ばれたこともあるそうだ。

 同シリーズを発売した最大の狙いは、売り場の拡大。これまでうま鍋シリーズの棚は青果売り場が中心だったが、加工食品売り場に進出したいと考えたという。「『うま鍋』で大きなご評価をいただいているが、売り場を拡大するためにさらにエッジのきいた商品を作りたい。そのためにはどんな強みを打ち出せるかと考えたとき、グループ会社で取り扱っている『茅乃舎』でも高い評価をいただいているだしではないかと考えた」(久原本家グループ本社 プロダクトマーケティング部部長の戸嶋禎一氏)。

 そこで、同社がこれまでさまざまな商品のだしとして使ってきた焼きあごを前面に出した鍋つゆの展開となったわけだ。「ここ数年あごだしを使った商品を多くの食品メーカーが出しているが、先鞭をつけたのは久原醤油。『あごだしの久原』という印象を持ってもらいたい」(戸嶋氏)。

 ちなみにあごだしとは、焼きあご(飛び魚)のだし。九州以外ではあまりなじみがないが、福岡・博多では縁起のいい高級食材として古くから親しまれてきた。飛び魚を「あご」と呼ぶ由来は、一説によると「あごが落ちるほどおいしい」からだと言われている。そのうまみの秘密は、飛び魚の生態にあるという。時速50km以上のスピードで、最長で400mほども海上を飛ぶ魚の体は脂肪分が少なく、身が引き締まっている。そのためあごだしは臭みがない上品な風味になるといわれている。

 同シリーズのもう一つの特徴が、あごだしと相性の良い隠し味として自社製カツオ魚醤を使用していること。魚醤とは魚を塩漬けにして発酵・熟成させた液のこと。長い時間をかけてうまみが熟成される一方で魚独特のにおいもあるため、同社ではカツオ節の名産地でカツオの魚醤を研究。3年かけて臭みのないまろやかな味の配合にたどりついたそうだ。「あごだしのクセと自社製カツオ魚醤のクセをぶつけることで、驚くほど複雑な味わいやコク、深みが出る。創業122年の弊社にとっても大きな発見だった」(戸嶋氏)という。

 そのあごだし寄せ鍋を食べてみた。ひとくち食べて家人と顔を見合わせたほどうまみが強い。そしてこの鍋スープのおいしさを最も強く感じたのが、シメの雑炊。いつも自己流で作っている寄せ鍋の後の雑炊とは明らかに違う、濃厚で上品なうまみがはっきりと感じられた。

あごだし鍋シリーズの「あごだし寄せ鍋」。シメの雑炊で特にあごだしの力強いうまみを痛感
あごだし鍋シリーズの「あごだし寄せ鍋」。シメの雑炊で特にあごだしの力強いうまみを痛感
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