“だし屋”の知見を活かした使い分けの妙とは?

 ヤマキの「だしで味わう『だし屋の鍋』」シリーズは、“だし屋”を自認する同社が、家庭で手作りすることが難しい味わいを実現した鍋つゆだという。味の種類に合わせただしをしっかり利かせており、ターゲットの広い寄せ鍋つゆには独自開発の「氷温熟成法鰹節」の粉末をそのまま袋に入れている。「一般的にはカツオ節から抽出したエキスを入れることが多いが、粉末だとパウチを開けたときの香りが全く違う」(ヤマキ 家庭用事業部の髙橋麻希氏)そうだ。

 氷温熟成法とは凍る直前の0℃以下の温度帯(氷温帯)でカツオを解凍することで鮮度を保持する製法だ。この製法によりカツオのうまみ成分の損失を防ぐことができ、うまみが凝縮されたカツオ節ができるという。実際にこの方法で作ったカツオ節はおいしさの目安であるイノシン酸が同社通常品と比較して多く、うまみが強いそうだ。また色味がきれいで見た目も美しいだしに仕上げるため、カツオ節の血合い部分を除き、じっくり加熱する「遠赤外線加工法」で独特の香りを引き出しているという。

 こちらも全くの新技術ということではなく、同社では2012年から氷温熟成法鰹節を使用した「鰹節屋のだし寄せ鍋つゆ」を販売してきた。ではなぜ今年になってだし屋の鍋シリーズを立ち上げたのか。

 最大の理由は、現在の鍋スープ売り場ではシリーズ展開している商品が多く、単品の商品は目立たず埋もれてしまいがちだということ。「消費者からも『どれがヤマキの鍋つゆか分かりにくい』という声が多かった。そこで消費者に分かりやすいようにすると同時に、『一貫してだしにこだわってきた』というヤマキの姿勢を改めて強く打ち出す目的でシリーズ化し、だしを重視したロゴを目立つようにパッケージに配置した」(ヤマキ 家庭用事業部係長 岡田太一氏)という。

 近年の減塩ニーズの高まりに合わせて「塩分ひかえめ寄せ鍋つゆ」を今年から追加しているが、「だしのうま味で塩分を補完しているので、塩分がひかえめでも物足りなさを感じさせない。“だし屋”だからできる減塩鍋つゆ」(岡田氏)という。「西京鍋つゆ」には西京味噌と相性の良いマグロ節を加えている。「だしが注目されているのは、だし屋としてはうれしいこと。競争も厳しくなると思うが、その中でも選んでもらえる商品に育てていきたい」(岡田氏)。

 同シリーズで最もよく売れているという「軍鶏系地鶏だし塩鍋つゆ」を食べてみた。軍鶏系地鶏のだしにとんこつだしを組み合わせているとのことで、あっさり感とこってり感のバランスが絶妙。さらに隠し味のショウガがよく効いていて味に複雑な変化があり、最後まで食べ飽きなかった。

坂本龍馬が近江屋事件で命を落とす直前に食べようとしていたほどの好物の軍鶏鍋をイメージしたという「軍鶏系地鶏だし塩鍋つゆ」(標準小売価格300円)
坂本龍馬が近江屋事件で命を落とす直前に食べようとしていたほどの好物の軍鶏鍋をイメージしたという「軍鶏系地鶏だし塩鍋つゆ」(標準小売価格300円)
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鶏系地鶏だし塩鍋つゆに次いでよく売れている「豚しゃぶ野菜鍋つゆ」(標準小売価格350円)
鶏系地鶏だし塩鍋つゆに次いでよく売れている「豚しゃぶ野菜鍋つゆ」(標準小売価格350円)
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「軍鶏系地鶏だし塩鍋つゆ」。だしのバランスのよさとショウガの隠し味で味に複雑な変化があり、最後まで食べ飽きなかった
「軍鶏系地鶏だし塩鍋つゆ」。だしのバランスのよさとショウガの隠し味で味に複雑な変化があり、最後まで食べ飽きなかった
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