パウチの中でだしをとる!?

 しかし、なぜ今「だし」なのか。 「変化球的なバラエティ鍋つゆが一巡し元に戻ったのか、この2~3年は寄せ鍋などの定番が伸びている。定番回帰でだしに注目が集まるようになった」(キッコーマン食品 プロダクト・マネージャー室 つゆ類グループの山本裕哉氏)。同社が実施した「食べ飽きない鍋とは」というアンケートでも、最も多かったのが「だしのきいた鍋」という答えだった。そこで、だしに特化した鍋を考えたという。

 同社の贅沢だしがおいしいシリーズの最大の特徴は、だしをとる素材をまるごとパウチの中に入れる「パウチ内だし抽出製法」を採用していること。レトルト食品を常温流通させるためには殺菌が必要で、容器を密封シールしたあと、食品衛生法で定められた「中心温度120度で4分相当以上」で加圧処理をしなければならない。しかしその影響で、せっかくとっただしが劣化し、風味が飛んでしまいがちだった。その対策を模索した同社では、「レトルト殺菌時の熱を利用して袋の中でだしをとれば風味が劣化しにくいのでは」と考え、同製法を開発した。「風味のあるだしがしっかりとれ、劣化せずにそのまま封入されているので、袋を開けて加熱したときの香り立ちが違う」(山本氏)という。

 だがこれ自体は新しい技術ではない。同社では2010年発売の「よせ鍋つゆ」シリーズから今回と同様の製法を採用しており、地味ながら味は高い評価を得ていた。和食ブームでだしに注目が集まっている今、さらにブラッシュアップして提案したいと考え、贅沢だしがおいしいシリーズを発売したそうだ。

 袋裏面では「鰹だし よせ鍋つゆ」のシメにゆでたうどんとカレールーを入れた「カレーうどん」、「帆立だし塩ちゃんこ鍋つゆ」のシメにゆでたラーメンとバターを入れた「塩バターラーメン」を提案。定番ではあるがひとひねりしたシメで購買につなげる考えだ。「変わり鍋などのトレンドを経たうえでの最近のだしへの注目は、一過性のものではなく今後も続いていくものと考えている」(山本氏)という。

 同シリーズの中で最もよく売れているという「鴨だし鍋つゆ」を食べてみた。袋を開けた瞬間のカツオ節だしの香りは鮮烈。厚削りのカツオ節がかなり大量に入っているので、取り出す。温めるとだしの香りにしょうゆの香りが加わって“そば屋の香り”が部屋中に漂い、たまらなく食欲をそそる。食べてみると鴨だし特有のコク、脂っこさもあるが、しつこくなく食べやすい。「鴨だけでだしをとると少しくどくなる。カツオだしをベースにすることで風味に広がりが出て、鴨のうまみがより引き立つ」(同社)という言葉を思い出した。

 特にしめのそばとの相性は抜群。「鴨そばのつゆとして購入する人も多い」(同社)というのも納得だ。

贅沢だしがおいしいシリーズでは素材をまるごとパウチの中に入れてだしをとる「パウチ内だし抽出製法」を採用しており、加熱によるだしの劣化が少ないという
贅沢だしがおいしいシリーズでは素材をまるごとパウチの中に入れてだしをとる「パウチ内だし抽出製法」を採用しており、加熱によるだしの劣化が少ないという
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「鰹だしよせ鍋つゆ」に入っているカツオ節はこのボリューム
「鰹だしよせ鍋つゆ」に入っているカツオ節はこのボリューム
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鍋つゆの新トレンドは「パウチの中でだしをとる」!?(画像)
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鍋つゆの新トレンドは「パウチの中でだしをとる」!?(画像)
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近年のジビエブーム、肉ブームで人気が高まっている「鴨」に着目して作ったという「鴨だし鍋つゆ」。シメに推奨されているそばを投入したところ、隠し味のネギ油がよく効いていて、おいしいそば屋の鴨南蛮を食べている気分になった