志を高く持ち、現場で指揮を執る経営者とカリスマバイヤー

 TRENDY EXPOの最後を飾るセッションは、「これは売れる! ヒットを見抜く技術」。第1部のパネルディスカッションは、地方発のヒット商品を生み出すためのアイデアや取り組みがテーマ。ブンボの江副直樹氏、大阪府商工労働部中小企業支援室経営支援課から領家誠氏、マルサ斉藤ゴムから斉藤靖之氏が登壇。プロデューサー、行政、プレイヤーのそれぞれの立場から取り組みを基に考え方を語り合った。

外部ブレーン、行政、プレイヤーの取り組み

 江副氏は九州を中心に地域活性のためのプロデュースを行っている。雇用創出が目的だが、その前段の商売繁盛が必須であるので、各地で地元の食材を用いた商品開発を進めてきた。3年で30アイテムほどの開発に携わったという。

 「商品はいいのに、パッケージのセンスがなく魅力を伝えられていないもの。味噌やジャムなど全国各地で作られているため、個性に欠けるもの」が多いため、外部からのアドバイスのもたらす効果は大きいとのこと。また「ローカルでの失敗の多くは値付けに原因がある」と江副氏は指摘する。原価割れしていることも少なくないという。

 商品を作った後の情報発信も非常に重要だ。「良いものをしっかり作り、商品と情報をデザインし、適切な情報を流せば、今は地方でも見つけてもらえる環境がある」と江副氏は確信を持って語る。そのためにパッケージデザインの重要度は高く、デザイナーがかかわることを必須条件と考えている。

 「どこで、誰が、どのように作ったか」というストーリーと適正価格、魅力的な情報があれば、地方発のヒット商品は生み出せるという。一連の取り組みを統括的にまとめあげることを総合デザインと捉え、その核になるコンセプトワークに注力しているのだ。

ブンボ 代表取締役 江副直樹氏
ブンボ 代表取締役 江副直樹氏
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 次に行政の立場として領家氏が大阪府の取り組みを紹介。大阪はBtoBの製造業中心の日本一のモノづくりの街で、行政としても地場産業の支援を続けてきた。その一方でBtoCの商品づくりを考える事業主も増えてきたため、「大阪ミュージアムショップ」という通販サイトを開設。3年間で104の事業主を発掘した。

 また、通販サイトで販売するために、専門家を講師に招いて「大阪通販道場」というノウハウを学ぶ場を設けた。成功事例として、靴下メーカーの技術を生かしたランニングや、自転車など用途が限定されたソックス、地元の食材を使った家族経営の和菓子店がネットを通じて業績を伸ばした。ヒット商品を生み出す経営者には共通点があると領家氏は言う。「圧倒的なコミュニケーション力です。そして、学んだことを素直に受け止め実践する行動力があります。失敗を他人のせいにすることなく反省し、改善することができる人です」と人間力の重要性を語る。

 現在は、東京ギフトショーへの出展を目指す「大阪商品計画」という取り組みを継続中だ。領家氏は、行政は事業そのものをブランド化するのではなく、やる気のある事業主のサポートに徹することが大事だという。大阪だけでなく、多くの自治体が地方創成としていろいろな取り組みをしているが、それを成功させるためにはマクロとミクロの視点が必要。まずは、そこで生活している個人や企業一つひとつを元気にすることが先決とのこと。ミクロから立脚することで、継続性が生まれ、利益も出やすくなるという。

大阪府 商工労働部 中小企業支援室 経営支援課 課長 領家 誠氏
大阪府 商工労働部 中小企業支援室 経営支援課 課長 領家 誠氏
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 プレイヤーとして登壇したのは、東京都墨田区にあるゴム風船メーカーの斉藤氏。墨田区はモノづくりの街で、製造業の企業が2800(ピーク時の3分の1以下)ある。さまざまな業種があり、ニット製造、金属加工、印刷業などが有名だが、いずれも家族経営のような小さな規模。斉藤氏のマルサ斉藤ゴムも同様に、従業員6名の小規模ながら、風船の製造、卸しを事業内容とする珍しい企業だ。日本には2社しかないという手作りの風船工場があり、タイのバンコクに組立工場がある。

 斉藤氏は2009年に社長就任。先代の体調不良による突然の社長交代だったため社長業の準備不足を痛感、翌2010年から墨田区が運営する「フロンティアすみだ塾」に入塾した。「企業の後継者を育成するプログラムでした。塾の課題をクリアしながら会社経営のノウハウを学び、同じような志を持った経営者との縦横のつながりができたことも財産の一つです」と振り返る。

 その後「一般社団法人ふうせん遊び協会」を創設、イベントプロデューサー業をはじめ、海外での販売も開始。その傍ら、地域イベントプロデューサー講座もスタートさせた。本業では、少子高齢化の流れを踏まえ、固定観念を覆した「大人が欲しがる風船」をテーマにデザイナーと組んだ風船づくりを進めるほか、海外への販路拡大、運動リハビリ用の風船など新たな価値を生み出す取り組みも進めている。

マルサ斉藤ゴム 代表取締役社長 斉藤靖之氏
マルサ斉藤ゴム 代表取締役社長 斉藤靖之氏
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 やる気のある企業や経営者と、その商品を魅力あるものに磨き上げるブレーン、その取り組みを支援する行政と、各役割がうまく機能してヒットが生まれてゆくのだが、それぞれの視点についてここでもう一段掘り下げる質問が投げかけられた。

 大阪通販道場に地域の経営者を集め、モノづくりの力を引き出そうとした行政の視点はどこにあるのか。

 「先ず商品が磨かれる場が少ないと感じました。販路開拓支援は役所もしますが限定的です。1年を通して販路開拓ができるのは経営者だけなので、彼らにやる気になってもらうことが重要でした。経験もなく、何をしてよいのかすら分からない状況から、ノウハウを学びながら仲間もできる場として道場がぴったりなのです。学びの場とお披露目の場という共通体験ができる場を作ることで、自然と人のつながりもできると考えました」(領家氏)

 地域イベントのプロデュースもしている斉藤氏は、地域の人、地元の経営者のつながりをどのように活性化させようとしているのか。

 「単に地域を盛り上げようとすると従来のお祭りと一緒になってしまいます。私が思い描くイベントは、地域のやる気のある人と、外部の方でその地域を面白いと思ってくれる人が一緒になって盛り上げるのがベストなスタイルだと思っています」(斉藤氏)

 江副氏は地域発でヒット商品を作る仕組み作りについてこう語った。「どこに行ってもみなさん同じことを言います。『ここには何もない』と。外部スタッフが介入するメリットは客観性です。私は、宝は必ず足元にあると思っていて、磨いたかどうかだけだと思います。私の場合はクリエイティブという手法で磨きます。原石はどこにでもあり、その可能性はとても大きいと思います」。

 既にそこにあるものを見つめ、そこにどんなストーリーがあるのかを考える。外部の人の協力をもらってノウハウや新たな視点を得る。こういった活動があれば、地方からヒットが生まれるのだと締めくくって第一部は終了した。

【TRENDY EXPO】映像の進化、スーパーフード、地方発ヒット…11月21日のセッションをレポート(画像)
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心の琴線にふれる商品を開発

 第二部では、caramo(藤巻百貨店)から中村亮氏、コンタン(日本百貨店)から鈴木正晴氏、ナチュラルローソンから稲葉潤一氏と、注目を集めるカリスマバイヤーが登壇。自社のコンセプトにふさわしい商品を探し出す嗅覚、そして商品をより魅力的に広めるためのテクニックを伝えた。

 販売業態は異なるが、日本中のいいものを商品として開拓・販売する点は3社に共通する。日本百貨店の鈴木氏が、日本百貨店をオープンさせたのは5年前、食品だけを扱う日本百貨店しょくひんかん、本店の御徒町店など現在は7つの店舗を展開している。

 「小売の店舗としては後発です。店も物も飽和状態ではありましたが、それでも店を作りたいと思いました」と鈴木氏はいう。

 「造り手と使い手の出会いの場にする」それが店づくりのコンセプト。互いをよく知ったうえで、商品を購入してもらいたいと考えた。既存のしゃれた雑貨店のイメージとは一線を画し、「おもしろく、楽しく、日本の文化に触れてもらいたい」と鈴木氏。そこに売り手、自治体などサポーターも集い、みんなが出会う場所を目指している。雑貨店という側面をもちながら、ある日は店先で地元の神楽を踊る人がいたり、またある日はゆるキャラがいたり、また別の日は缶詰博士が解説しているという具合だ。

コンタン(日本百貨店)  代表取締役 鈴木正晴氏
コンタン(日本百貨店)  代表取締役 鈴木正晴氏
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 藤巻百貨店の中村氏は、伊勢丹のカリスマバイヤーであった故藤巻幸雄氏と2012年5月にこのECサイトを立ち上げ、「eコマースにおいて、価格競争以外の魅力で勝負できるか?」という、常識を覆す発想からスタート。日本の良いものを世の中に広めるときに、価格は問題にならないはずと考えた。商品にまつわるストーリーと価値を伝える道を選択したのだ。

 サイトのトップページのデザインも個性的だ。ネット通販のサイトでありながら、商品名も金額も記載はない。「気になったものがあれば一歩踏み込んでほしい」そんな狙いが隠されている。メルマガとフェイスブックのマーケティングでファン作りを強化。商品紹介ページには作り手に必ず登場してもらい、掲載する写真は撮りおろし、原稿も書きおろしで商品の魅力を紹介している。

 商品コンセプトは「日本を感じられる」「ストーリーがあるもの」「元気になれる、幸せな気持ちになれるもの」。そしてオリジナル、限定、独占的な商品展開を得意としているのも特徴といえる。

caramo(藤巻百貨店) 代表取締役 中村 亮氏
caramo(藤巻百貨店) 代表取締役 中村 亮氏
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 最後は、コンビニエンスストアにして「美」と「健康」をテーマに掲げるナチュラルローソンの稲葉氏。“ここにしかない商品”を売り、顧客イメージも一般的なコンビニとは異なるポジションを確立している。現在は、ナチュラルローソンと買収した成城石井が一緒にできることを模索中の段階という。

 商品のラインアップの基本は「どこにも売っていないものを用意」すること。ところが展示会や問屋から仕入れようとすると「どこにでもあるもの」になってしまうらしい。理由は全国のコンビニに毎日一定量の商品を提供する力があるメーカーは限られているからだ。東京で120店舗しかないナチュラルローソンの特色を生かし、生産量の少ない商品も買い付けている。

 本来利便性を最優先するコンビニにおいても「ご褒美感があって、心が満たされる買い物ができる」それが、ナチュラルローソンの身上だ。そして、おしゃれで健康を意識しつつ、数量限定、数量事前決定、期間限定という独自の魅力づくりを続けている。

ローソン 商品本部 ナチュラルローソン商品部 部長 稲葉潤一氏
ローソン 商品本部 ナチュラルローソン商品部 部長 稲葉潤一氏
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 では、これら3社はどのようにして、魅力的な作り手を見つけているのだろうか? そしてその採用基準はどこにあるのか?

 鈴木氏は「会社を興した当初は仕入れに誰も協力してくれませんでした。そこで『道の駅』へ出かけ、買った商品を車の中で試食。いいなと思う商品があったら『今から行っていいですか?』と突撃していました。そんな地道なやり取りの繰り返しから人の輪がつながっていった印象です。紹介していただいたらすぐにコンタクトを取り、動くことを続けてきました。参考にならないと思いますが、商品採用の基準は人。作り手さんの人柄です。失敗も多いですが、信用できる人であれば改善すればよいことだと考えています」と苦労を振り返りながら思いを語る。

 中村氏は「“誰がこの商品を買うのか”“その人の何を満足させるか”が判断基準。ターゲットを研究していくと僕自身に行きついたので、僕が欲しいものというのからスタートしました」とペルソナ設定のイメージを語った。

 稲葉氏も商品開発には苦労があるという。「人と人とのつながりを大切にして、理解者を増やすことを大切にしています。まずはナチュラルローソンを知っていただき、酒の席を設けてじっくり向き合ってから、ようやく話が進みます」(稲葉氏)

 そんな苦労の末に発掘した地方の商品でヒットした事例を紹介してもらった。

 「生産者を主役にしたいので、基本オリジナル商品はあまり作りません。そんな中で群馬の畳屋さんと和歌山のレーザー加工職人を結びつけることで、井草のブックカバーが生まれ人気商品になっています」と、鈴木氏は人の出会いの場としての日本百貨店ならではのエピソードを紹介した。

 「オリジナルで作った印伝の商品も人気ですが、琉球ガラスのバースデーグラスはプレゼント需要もあり売れますね。出合ってから琉球ガラスの店をひたすら探し歩き、ようやく見つけ出した感がありました」(中村氏)

 「一番売れたのは、高知県のミレービスケットです。店頭に置くなり売れてしまう人気商品です。メーカーの社長がローソンオリジナルの商品も開発する力の入れようです」と話す稲葉氏は、コンビニスイーツの大ヒット商品「プレミアムロールケーキ」を開発した本人。その開発秘話も一部披露した。

 カリスマバイヤーならではの戦略やアイデア、そして熱意が数々のヒット商品を生み出してきた。それが今後、どのような展開を見せ、新たなヒット商品に結びくのか楽しみだ。

【TRENDY EXPO】映像の進化、スーパーフード、地方発ヒット…11月21日のセッションをレポート(画像)
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(文/近藤由美、写真/中村宏)