日本人が注目すべきスーパーフード、大麦が新たなビジネスを作りだす

 続いてはスーパーフードとして注目を集める大麦をテーマにしたパネルディスカッション。大妻女子大学家政学部食物学科教授で農学博士の青江誠一郎氏、帝人から妹脊和男氏、インテグレートから藤田康人氏が登壇した。そのパワーと可能性をひも解くと、そこに新たなマーケットがあることに気づかされた。

大麦がスーパーフードと呼ばれる理由

 冒頭、青江氏が大麦のパワーについて最新情報を交えて解説した。

 日本人の食物繊維の目標摂取量は成人男性で20g、女性は18g。しかし現在の平均摂取量は男性で14.5g、女性は14gと不足しがちで、特に若い世代で不足傾向が強くなっているのが現状。食物繊維の摂取量が減少した理由は、穀物の摂取量の減少があると考えられている。つまり、穀物の摂取量を増やせば、食物繊維の摂取量も増えるということになる。

 穀物のなかで、取りにくい水溶性の食物繊維が多く含まれているのが大麦だ。大麦に含まれる水溶性の食物繊維の正体はβ-グルカンで、水に溶かすとトロリとした質感になるという。腸の中で糖質の吸収を抑えたり、腸を刺激したりするなど、さまざまな働きが期待できる。また大麦の食物繊維は、外側の部分でなく中の胚乳にも含まれているため、摂取しやすいのが特徴だ。

 「日本が大麦の機能に注目したのは、世界よりやや遅かったのです。海外では既に機能性食品として、大麦に含まれるβ-グルカンの表示が進んでおり、広く認知されています。日本でも大麦由来のβ-グルカンの働きとして、血中コレステロールの正常化、食後の血糖値の上昇抑制などの作用があることが分かってきた。さらに、大麦を主食として食べ続けると、内臓脂肪が減少する効果もあるようです」(青江氏)

大妻女子大学家政学部食物学科 教授 農学博士 青江誠一郎氏
大妻女子大学家政学部食物学科 教授 農学博士 青江誠一郎氏
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 さらに大麦のある品種の中に、β-グルカンに加えてレジスタントスターチを多く含むBARLEY max(バーリーマックス)という品種がオーストラリアで開発された。レジスタントスターチは、腸の中で緩やかに発酵するのが特徴で、腸の奥まで栄養を届けることができる。大腸と全身機能がリンクしていることは研究から分かっているので、腸の奥の有用菌に栄養を届けられるBARLEY maxへの注目が高まっているという。

 「未開の領域が多い腸内環境の研究ですが、腸内細菌への注目は高まる一方です。腸内バランスの乱れによる健康・美肌トラブルに対して、BARLEY maxが改善できるのではないかと考えています」(妹脊氏)

帝人 技術特別参与、新事業推進本部長補佐 兼 提携推進部長 妹脊和男氏
帝人 技術特別参与、新事業推進本部長補佐 兼 提携推進部長 妹脊和男氏
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それぞれの観点から評価する大麦の有用性

 後半は、健康食品ブームの仕掛け人・藤田氏が加わり、パネルディスカッションが繰り広げられた。スーパーフードはアメリカで10年ほど前から広がり始め、アサイーやココナッツオイルなどが日本にも広まってきた。その中でも、スーパーフードの“King of Kings”が大麦という。では、なぜ今になってスーパーフードがこれほど話題になったのか。

 「スーパーフードのトレンドはアメリカが発信源。日本人は以前から3食栄養バランスのいい食事をすることを心がけてきたが、アメリカは食事で栄養素を取るというよりは、サプリメントで補う方法を選んできた傾向がある。そんな食生活を続けてきたアメリカも、日本のように食事のなかで栄養素を取るよう変化しました。朝食でアサイーやチアシードを取るようになってきたのが、このブームの発端ではないでしょうか」(藤田氏)

 日本では1955年には、250万トンもの食用大麦が生産されていたが、65年ごろから急減し始めて、現在では3万トンを割り込む量になってしまっている。それに伴い、糖尿病や大腸がんが急増した。穀物から食物繊維を取ると、国民病(糖尿病)のリスクを下げる効果がある。コレステロール値の低下など血管系の疾患リスクの低下、アディポネクチンのような長生きホルモンの分泌がその理由に挙げられる。

 数々の機能性食品を手がけてきた藤田氏は、BARLEY maxをどう見ているのか?

 「正式に発売される前からいろいろな食品メーカーが注目をしています。その理由は2つあると思います。1つは、最近はやりの糖質(炭水化物)抜きダイエットのトレンドです。本来、炭水化物は必要な栄養素ですが、ダイエットの鍵はインスリン。インスリンの出にくい低GI型の炭水化物があれば解決するということで、BARLEY maxに注目が集まっています。もう1つの理由として、腸の奥で活躍してくれるレジスタントスターチも多く含んでいるためです。BARLEY maxは日本の食トレンドを変える可能性を秘めていると思います」(藤田氏)

 これに対して、帝人が期待するBARLEY maxが果たす役割を妹脊氏が答えた。

 「我々が考えたのは腸の炎症です。炎症を抑えるような働きをして、健康に寄与するのがBARLEY maxだと考えています」(妹脊氏)

 最後に藤田氏にヒットメーカーとして、腸の働きというキーワードをどう考えているのか聞いた。

 「NHKで腸内フローラ特集をしたところ、各メディアがこぞって取り上げるようになりました。今はヨーグルトや乳酸菌でいい菌を取ろうという話で終わってしまっているので、今後正しいコンセプトが登場してくると思います。新しいコンセプトが出てくると、それがマーケットになると注目しています」(藤田氏)

 女性にとっては、腸の働きをケアするとお肌の調子まで変わってくることを実感できるということで、ますます注目が高まりそうだ。腸をキーワードに、大麦をスーパーフードの王様にしようとする流れに注目しておきたい。

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