キーワードから見えた2016年の潮流

 11月20日の最後のセッションは、有料となる「2015年ヒット商品&2016年ヒット予測」。第1部では日経トレンディ発行人の渡辺敦美が「ヒットの法則」を解説した。

日経トレンディ発行人の渡辺敦美
日経トレンディ発行人の渡辺敦美
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 渡辺によれば、2015年は消費・ヒット製品に大きな構造改革が起こったと見ており、「SNSの本当の元年が訪れた」という。力を持った消費者が、商品の価値を左右する時代になり、SNSで話題になると同時に売り切れてしまったりするなど、SNSの力が「臨界点を越えた」と語った。

 ヒットを生み出す法則には「!(びっくり)」「新鮮」「感動」の3段階が必要だと分析。これまでは、SNSで一時的に話題が沸騰してもすぐに人気が終息することが多かった。しかし、今年は「感動」が続き、ファンの獲得につながっている商品が多く現れた。SNSでもイノベーションが起こる時代に突入したことを、構造改革と見ているのだ。SNSの頭角により、「情報の取り方が変わった」「購買の仕方が変わった」「共感が重視された」として、来年以降はスピード感のあるトレンドが次々と生まれることを予測し、解説を締めくくった。

ヒットの生み出し方

トランジットジェネラルオフィス 代表取締役社長 中村貞裕氏
トランジットジェネラルオフィス 代表取締役社長 中村貞裕氏
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 第2部では「ヒット商品開発者に聞く!ヒットのキーファクター」と題して、パネルディスカッションが行われた。登壇したのは、トランジットジェネラルオフィスから中村貞裕氏、日清食品からズナイデン房子氏、ジャパンインバウンドソリューションズから中村好明氏。ヒットメーカーが注目しているキーワードをもとに2016年の予測を語り合った。

 座談会に先立ち、ヒットの生み出し方を3名が紹介。中村貞裕氏は、メディアの活用を挙げた。

 「メディアに取り上げられるには、強いコンテンツを見つける必要があります。去年は『日本初上陸』『表参道』というコンテンツに力を注ぎました。『スイーツ』『台湾』『ペット』など、幅広い切り口の中からベストなコンテンツになり得る情報を片っ端から探っています」(中村貞裕氏)

日清食品 取締役 マーケティング部長 兼 日清食品ホールディングス ブランド戦略室 室長 ズナイデン房子氏
日清食品 取締役 マーケティング部長 兼 日清食品ホールディングス ブランド戦略室 室長 ズナイデン房子氏
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 日清食品のズナイデン氏は、新しい支持層を獲得し、ヒットにつなげたカップヌードルライトプラスの展開手法を語った。

 「カップヌードルの市場調査を行ったところ、女性は約3割しか支持していないという事実が判明しました。そこで、私たちは“若年女子”にターゲットを絞って商品開発を実施。女子力が低いと見られるカップヌードルを、戦略的に若年女子に定着させ、市場確立に結びつけたのです」(ズナイデン氏)

 ドン・キホーテを展開するジャパンインバウンドソリューションズ・代表取締役社長の中村好明氏は、免税店とインバウンド戦略の関係性について述べた。

ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長 中村好明氏
ジャパン インバウンド ソリューションズ 代表取締役社長 中村好明氏
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 「少子高齢化で縮小傾向にある日本市場のなか、インバウンドへ戦略的に取り組むことが、今後の企業間の大きな差になるのではないでしょうか。地方の農林水産物などにも大きなポテンシャルがあります。日本全体の視点から見ても、インバウンド戦略は重要なキーワードになってくると思います」(中村好明氏)

2016年に注目したいキーワード

 座談会後半、2016年に注目したいキーワードをそれぞれに挙げてもらい、その内容について語ってもらった。中村貞裕氏は「銀座」をキーワードに挙げた。

 「銀座は施設の建設ラッシュが続いていて、2016年は次々とオープンしていきます。多くのメディアが取り上げることも予測されるので、注目の街ですね」(中村貞裕氏)

 ズナイデン氏が挙げたキーワードは「元気な若者」。

 「当社ではインターンシップを行っているのですが、プレゼンも懇親会も二次会も、私たちの学生時代と同じくらいエネルギーを持っているんですね。高揚感を商品に投じると大きく跳ね返してくれる元気さが今の若者にもあります」(ズナイデン氏)

 中村好明氏は、キーワードに「越境EC」を挙げた。

 「現地で買い物をする際、売り切れだと困るから、ネットで事前予約する場面も見られます。これは旅前ですね。次に旅中は、旅行中に買い物した商品を、そのまま中国や台湾など、自国に送ることです。そして旅後。頻繁に訪日できない人は、お気に入り商品をネットで購入します。旅前・旅中・旅後のマーケティングは、今後重要度を増していくでしょう」(中村好明氏)

 最後に、来年に向けたキーワードで締めくくってもらった。中村好明氏は、2015年12月に免税制度がさらに変わることを取り上げ、インバウンド3.0の時代が来たと宣言した。

 ズナイデン氏は、フィーリングという言葉を用いた。広告による「おもしろそう」「いけるかも」という雰囲気が、大きな消費行動につながっていくと考えている。SNS戦略がますます重要となり、情報発信次第で市場が180度変わる可能性も秘めているという。

 中村貞裕氏はプレミアム。自分へのご褒美でちょっとした贅沢をする傾向はすでに見えており、この兆しを大きなブームに育て上げた商品・企業が、来年の顔となっているだろう。

 ヒットを生み出し続ける3名が出したさまざまなキーワード。予測であるにもかかわらず、すでに私たちの前にリリースされたサービスであるように感じるから面白い。来年も3社が発信する情報・サービスから目が離せない。

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(文/福井智宏、写真/中村宏)