【高橋氏】ロボットとのコミュニケーション

 ロボ・ガレージ 高橋氏の講演のテーマは「ロボットが作る未来、そして消費」。ロボットと人が共生する未来と、ロボットと人が会話することで生まれる新しいサービスについて明らかにした。

基調講演の第2部には、ロボットクリエーターである高橋氏が登壇
基調講演の第2部には、ロボットクリエーターである高橋氏が登壇
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 2003年京都大学工学部卒業と同時に「ロボ・ガレージ」を創業した高橋氏。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定。2013年、コミュニケーションロボット「キロボ」を世界で初めて宇宙に送り込むことに成功するなど、ロボット業界の第一人者として活躍を続ける。世界中の企業が次々とロボット業界に参入している中、高橋氏は“一人”でロボットとのコミュニケーションに注力した企画・開発を手掛け、イノベーションを起こし続けている。

 「私がロボットに目覚めたのは、鉄腕アトムを見てロボットの科学者になりたいと思ったことがきっかけでした。大学卒業と同時にロボ・ガレージを設立したのですが、社員は私一人のままです。ロボットの企画から、デザイン・設計・制作まですべて一人で行っています。それには理由があって、大勢でワイワイと作ってしまうと、角が取れて平均的なロボットになってしまうんですね。私はロボットに平均はいらないと考えています。もちろん、私一人ですべてを担うことはできません。コンセプト、デザイン、キャラクターについて専門家の意見を聞き、最終決定を私が行っています。一人で行っているからこそ、さまざまな専門家と造詣を深める機会を多く持つことができ、密な関係性をもってロボット制作に取り組めていると考えています」

スマートフォンに代わるプラットフォームの存在

 高橋氏はロボットの未来について「新しいハードウエア・プラットフォーム」にしたいと語る。

 「人がロボットに夢見たのは、ロボットが個人の生活パターンを情報収集してベストな生活リズムを教えてくれたり、家電製品をコントロールしたり、防犯に役立ってくれたりと、ロボットを介した(理想の)世界のことでしょう。でも、これらはスマートフォンで代用できています。そんなスマートフォンの機能で唯一支持されていないのは音声認識。ペットやクマのぬいぐるみに話しかけることはあっても、スマートフォンに話しかける人はまだまだ少ないのが現状です。音声認識を普及させるためには擬人化が必要で、この担い手にロボットは最適な存在といえるでしょう。ロボットを一人一台持つ世界を本気で目指したい。というわけで、実は作ってしまいました」

 そう言って、高橋氏はロボット型携帯電話「ロボホン」を取り出した。シャープと共同開発を行い、来年発売する予定だ。近い将来、本当にロボットは私たちの身近な存在になるのかもしれない。

ユニークな選択することで、新しい発見が生まれる

シャープと共同開発した「ロボホン」のデモも行った高橋氏
シャープと共同開発した「ロボホン」のデモも行った高橋氏
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 高橋氏は、「ロボットを普及させるデザイン」について次のように語る。

 「消費者は、飛躍しすぎた未来にはついてきません。普及のステップを丁寧に踏むことで、次第に私たちの世界に当たり前なものとして浸透していきます。例えば、電気自動車を認識してもらうために、ハイブリッドカーというステップを踏みました。今でこそ人気のお掃除ロボットは、初めはおもちゃとして販売されたのです。『おもちゃにしてはキチンと掃除してくれるね』と消費者の心をつかみ、やがて十数万円の価格で家庭に浸透していきました。機能を評価する商品やサービスとは別に、最近流行っているYouTubeやLineといったサービスは、遊びが評価されて世の中に浸透していきました。面白いねという感覚が広まり、後から使い方が構築されていったのです。ロボットは、後者の浸透の仕方がいいのではないかと考えています。何か面白いよね、と認識してもらううちに、用途がはっきり定着する。携帯電話ショップで、ロボット型携帯電話を売っていたら、ぜひ買ってみてください。使いにくいかもしれないけれど、世の中に新しい何かが浸透していくかもしれません。もちろん、みなさんの生活にも、ロボットが新しい発見を生み出してくれるかもしれません」

 ロボットの新しい価値を提供し続ける高橋氏。スマートフォンに代わる新しいハードが見られる時代は、すぐそばに来ているのかもしれない。ロボットとの新しい生活を築くのは、消費者である私たちの“興味”も大きな要素となりそうだ。

(文/福井智宏、写真/中村宏)