音楽カンファレンスを日本でも開催したい

 「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」は、重要人物たちによるトークセッションやパネルディスカッションを聴けるだけでなく、ダンスミュージックの最新情報を学べたり、業界やレーベルを超えて様々な人たちが知り合って情報共有できる場になる。中心的役割を担うのがソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)だ。ダンスミュージックには力を入れており、今年が初開催となる「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」を、毎年開催するイベントとして定着させていきたいという。

 こうした音楽カンファレンスのある音楽イベントは海外では定着していて、特にダンスミュージックの世界では長年行われてきた。例えばアムステルダムで開催されている「Amsterdam Dance Event」(ADE)は、40万人規模の巨大イベントに成長している。アジアでも中国やシンガポールでこうしたカンファレンス・イベントが開催され、年々規模が大きくなりつつあるという。

ソニー・ミュージックエンタテインメントのコーカー ローレン ローズ氏
ソニー・ミュージックエンタテインメントのコーカー ローレン ローズ氏

 「ダンスミュージックは、他のジャンルに比べてコラボレーションを展開しやすく国境を感じさせない音楽。音楽カンファレンスは欧米で定着し、アジアでも広まりつつある」と話すのは、SMEコーポレートビジネスマーケティンググループマーケティングオフィスのコーカー ローレン ローズ氏。「世界中のミュージシャンや業界関係者が交流するカンファレンスを、日本でも開催したいと考えた」(同)。

 こうしたカンファレンスを通じてビジネス面で期待されることは、まず日本の音楽マーケットを理解してもらうことだ。日本の音楽シーンは市場の8~9割が邦楽で占められている。海外はハウス・テクノシーンからの流れでEDMなどダンスミュージックを聴く人が多いが、日本ではハウスやテクノを通らずにJ-POPからの流れでダンスミュージックを聴く人が多いという違いもある。ソニー・ミュージックパブリッシング シンクロ・ライセンス部シンクロ課 兼 インターナショナル部の倉本博史氏は、「日本で独自に発展している音楽とマーケットの特殊性を理解してもらい、日本でビジネスを展開する上で必要なことを知ってもらえる機会にしたい」とプログラムの狙いを話す。

ソニー・ミュージックパブリッシングの倉本博史氏
ソニー・ミュージックパブリッシングの倉本博史氏

 ビジネスだけでなく、音楽ファンが楽しめるイベントとしても訴求したい考え。「ビジネス面も大事だが、何よりもまず楽しいイベントにしたい。誰でも楽しめるカジュアルな雰囲気にしたい」とコーカー ローレン ローズ氏。「音楽業界がやっていることを、カンファレンスとライブを通じて一般のリスナーまで届けたい」(同)という。

 「TOKYO DANCE MUSIC EVENT」は、渋谷区観光協会が協力し、初日には渋谷区長がカンファレンスに登壇する。ライブも渋谷のクラブで行う。ライブを含め、全体で2000~3000人の集客を見込んでいる。海外の大規模なイベントと比べると小さいが、イベントとして定着させながら規模を拡大していく考えだ。

 SMEにとっては、自社のリソースを活用できる場を作り、所属アーティストの売り込みにつなげられることも大きなメリットになる。「ダンスミュージックで、日本は世界のトレンドから少し遅れている」と話すのは、ソニー・ミュージックコミュニケーションズ マーチャンダイジングカンパニーマーケティング部 企画課 兼 プランニング営業部の柳井功治氏。「ソニー・ミュージックは国際的な音楽会社で、世界的にはダンスミュージックにすごく投資して力を入れている。そうしたリソースを日本で活用するために、まず日本で永続的なダンスミュージックシーンを作り出す必要がある」(同)。TOKYO DANCE MUSIC EVENTにはこうした狙いもある。

ソニー・ミュージックコミュニケーションズの柳井功治氏
ソニー・ミュージックコミュニケーションズの柳井功治氏

 日本は音楽マーケット全体を見ると世界第2位の規模なのに、ダンスミュージックが占める割合は低いという。新たな市場を開拓できるか、SMEの新たな取り組みに注目したい。

(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)

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