きっかけは「娘の室内ドリブル練習のため」

 本田社長が「室内でドリブル練習ができる用具」の開発を決意したのは、小学生以下の競技者を対象にしたミニバスケットボール(以下、ミニバス)のチームに入っていた長女と次女が、ドリブルの練習に困っていたからだ。ミニバス人口は年々増え、現在全国で15万人以上(男女合計:日本ミニバスケットボール連盟調べ)。一方、学校や自治体所有の体育館の使用はほかの運動部との調整が難しく、公園はボールの使用を禁止しているところが多い。また自宅では集合住宅はもちろん戸建てでも騒音が問題になりやすく、ミニバス競技者の多くが自主練習の場所に困っているという。

 しかし倉庫会社を経営しているといっても、商品開発のためのノウハウや資金はない。新製品の試作・開発の補助金制度に申し込んだものの玉砕。折り畳みいすを改造した手作りの試作品を持参し、筑波大学の工学博士に相談に行ったこともあったが、「無理」といわれた。それでもあきらめきれずに模索していたところ、区の産業振興課でそれに近い消音グッズを韓国から輸入している企業があると知らされる。それが、振動を吸収して音が響きにくい室内用トランポリン「バンバンボード」を韓国から輸入していた空まめシステムだった。

 バンバンボードを知った本田社長は「これを応用して練習用具が作れるのでは?」とひらめき、笈川社長の自宅にバスケットボールを持参。バンバンボードでドリブルをさせてもらうが、ボールが弾む際の振動は吸収できても、トランポリンの表面はプラスチック板なので音がうるさいため、このアイデアを断念。しかし本田社長の熱意に動かされた笈川社長が、バンバンボードを開発したIPDSの李社長に一連の話を伝えると「たぶん売れないだろうけど」と言いつつも、開発に取りかかってくれたという。

 実はバンバンボードを開発者した李社長は韓国自動車最大手・現代(ヒュンダイ)自動車の元・開発者で工学博士でもあり、発明好きなアイデアマンでもある。笈川社長は「相手の話を聞いてシステムを構築する」のが仕事のシステムエンジニア出身。この2人との出会いが、本田社長の思いを結実させることになったわけだ。

 とはいえ本田社長は開発予算を持っていなかったため、材料費を実費で提供。李社長は本業の合間に開発を行うという、手弁当状態で2年間に10個近くの試作品を作成した。当初、売れるかどうか分からなかったが、李社長が「開発だけをしていてもしかたがない。商品化しないとニーズがあるかどうかも分からない」と後押しし、発売が決まった。

振動吸収のためのウレタンクッション(黄色い部分)は、金型を作りウレタンを焼いて発砲させて成型している。1個作るのに20分くらいかかるが、金型が6個なので、作れる量が限られ、高額になるという
振動吸収のためのウレタンクッション(黄色い部分)は、金型を作りウレタンを焼いて発砲させて成型している。1個作るのに20分くらいかかるが、金型が6個なので、作れる量が限られ、高額になるという
[画像のクリックで拡大表示]
フレームとゴムネットの間にゴムパッドを挟み、衝撃によるゴムネットの傷を防ぐ対策をしている。ネットの保障期間は3カ月だが、発売当初のパッドをつけていない時期に購入した人に対しては、無償で交換している
フレームとゴムネットの間にゴムパッドを挟み、衝撃によるゴムネットの傷を防ぐ対策をしている。ネットの保障期間は3カ月だが、発売当初のパッドをつけていない時期に購入した人に対しては、無償で交換している
[画像のクリックで拡大表示]