日本らしさではなく定番のクオリティーでの勝算は?

 明治が現在販売しているチョコレートは120種類程度。ロングヒット商品も多く、他国にはないオリジナルも豊富だ。グリコのポッキーが、ユニークなチョコレート菓子として世界中で成功したように、それらはもしかしたらフランスのチョコレート界でヒットするかもしれない。

 「サロン・デュ・ショコラ」では純粋なチョコレートだけが出品されているわけではなく、ポッキーのようなチョコレート菓子からチョコレートカステラ、チョコレートモヒート、カカオエステクリームなど、チョコレートに関するありとあらゆるものが人気を集めている。また、今年も参加数が増えた感のある日本のショコラティエたちの多くが、ユズや抹茶などの日本ならではの素材を使ったり、和菓子のような丸みを持った柔らかな形、桜をモチーフにしたものなど、日本ならではの“変化球チョコレート”を出展し、欧州では見られない美しい形、驚くような素材との絶妙な組み合わせの成功で、称賛の目が向けられ熱い注目を浴びているのだ。

 しかし、明治は日本ならではの独自性の強いチョコレートではなく、カカオ成分が高く、欧州のチョコレート業界でも定番の板状のダークチョコレートである「ザ・チョコレート」を出展し、直球勝負に出た。

 「日本独自のチョコレートではなく、世界基準のチョコレートでトライしたいのです」と話す伊田氏と佐藤氏。その自信はどこからくるのだろう。

明治の菓子マーケティンググループ専任課長、佐藤政宏氏
明治の菓子マーケティンググループ専任課長、佐藤政宏氏
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 「実は、日本では明治のチョコレートと、それよりも価格が何倍もする高級チョコレートでは、同程度の評価を得ているのです」(佐藤氏)

 ザ・チョコレートとショコラティエの高級チョコレートでは値段に大きな差がある。ザ・チョコレートは小さな板チョコ状の包みが7本、計52グラム入りで220円。ショコラティエのチョコレートはたった一粒でそれ以上の、または何倍もの値段がする。値段が抑えられるのはメーカーの強みで、ライン生産が可能であり、全国への販売が可能。ひいては世界各地への販売も可能と考えられる。

 日本でザ・チョコレートの販売を開始してまだ1年だが、確実に販売の伸びを見せ、2016年1月より2種類から3種類になる予定だ。それぞれの産地、カカオ成分率、焙煎の時間などが違い、甘みやフルーティーな感覚、香ばしさ、苦み等にオリジナル性を持たせ、チョコレートフリークの舌と心をくすぐる食べ比べの楽しさも追求している。

 「日本ならではの繊細なモノ作り、ジャパンクオリティーを見てほしい。ラーメン、ウヰスキーなど外から入って来たものを取り入れて質の高いものを作り上げることのできる日本。同じように他国から入って来て日本人の厳しい舌に対応して私たちが作りあげたチョコレートを、世界に発信していきたいのです」(佐藤氏)

 ザ・チョコレートを試食した会場の客たちは、「どこで買えるのか? 今すぐ買えるのか? と尋ねてきたり、価格についても実際の倍以上の値段を予想してくれています」と伊田氏。「それだけでなく、すでに何人かのバイヤーからの声も掛かっています」(伊田氏)

さまざまなカカオの国のコンサートやスペクタクルも、会場中心の広い舞台で開かれる。子どもたちにはチョコレートを通して他文化を知るチャンスでもある
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大人向けも子ども向けも、チョコレート教室は大盛況! 「テクニックを学ぶというより、有名ショコラティエとチョコレートが作れることがうれしい」と参加者
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今年も、彫刻家Richard Orlinskiによるビッグなチョコレートの熊には人々の感嘆の声が上がっていた。チョコレートは「ル・ノートル」。サロン終了後には誰かが食べるのだろうか?
今年も、彫刻家Richard Orlinskiによるビッグなチョコレートの熊には人々の感嘆の声が上がっていた。チョコレートは「ル・ノートル」。サロン終了後には誰かが食べるのだろうか?
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 くしくも2016年に創業100周年を迎える明治。今後、欧州の人々に日本発の本格派チョコレートが受け入れられるのか、先行きを見守りたい。

(文/永末アコ)