コンセプトは「友達の家の本棚」

 R-STOREといえば、月間280万PVという日本最大級のセレクト系不動産情報サイト「R-STORE」 の運営元。力丸氏によると、人口減少で不動産業が縮小していくことが予測されるなか、同社では新しい事業の柱を模索していた。そのなかで着目したのが、自宅を短期宿泊用にレンタルするのを仲介するサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」の世界的な流行だったという。

 「宿泊施設と家の違いが流動的になり、クロスオーバーしていることから、暮らしをテーマに事業を行ってきた弊社の知見を生かし、新たな宿泊施設の過ごし方を提案できるのではと考えた。高級な寝具をそろえて快適な寝心地を提供する宿泊施設はたくさんあるが、我々はその前の“眠る瞬間”を演出することで、ほかとは違った存在の宿泊施設になれるのでは」(力丸氏)。

 静かで安眠できるという宿泊施設に最も必要な基本機能と、眠りに落ちる瞬間まで幸福感を味わえるというプラス要素の両方を満たす場所として浮上したのがブックホステルだったという。

 しかし、じつは力丸氏を含めてプロジェクトのメンバーたちは、それほど頻繁に読書をするというわけではないとのこと。「仕事関係の本はよく読むが、それ以外では年に何冊も読まない」(力丸氏)。そこでイメージしたのが、“友達の家の本棚”。「友達の家に泊まりに行くと本棚はとても気になるし、そのまとまりのなさ、雑多なところがとても魅力的に思える。かっこいい本の隣に笑ってしまうくらいかっこ悪い本があり、その落差に友達の素顔が透けて見えて、安心したりする。そういう感覚を味わえるようなラインアップがいいと思った」(力丸氏)。

 本のセレクト自体は本のセレクトショップ「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(以下、SPBS)」に依頼。本に興味のない人も引き付ける書棚づくりやラインアップを重視していることで知られる書店だ。「BOOK AND BED TOKYOのセレクトでは、 思わず夜更かししてしまうようなワクワクする本、スッと眠ってしまうようなリラックスできる本、という二つのテーマで選んだ」(SPBS)という。そこにR-STORE代表である浅井佳氏が学生時代に学んだ建築書やスタッフが愛読しているコミック、料理本なども加えた。

 内装デザインも友人の家をイメージし、温かさを感じさせる木を多用したデザインにしたという。「本当に本が好きな人にとっての理想の本棚は、結局自宅の本棚(笑)。ここにはマニアックな本は少ないかもしれないが、読書にハマり過ぎていないスタッフが選んだ、カジュアルなセレクトの本がそろっている。本をあまり読まない人が読む喜びを知るスタートになるような場所になればいいと思う」(力丸氏)。

 今年からR-STOREがスタートさせた外国人向けの賃貸サービス「R-ESTATE TOKYO」とリンクさせ、来日したばかりの外国人が同施設を仮住まいとして使いながら、家探しをサポートできるようなシステムも検討中。同施設が軌道にのれば、R-STOREでさまざまな家を見てきた経験を活かし、違うタイプの宿泊施設も展開したいという。

 また3000冊収納できる本棚に対して1700冊と蔵書がやや少ない印象を持った。まだ客層が分からないため、これから客層を見て、それに合った本を少しずつ増やしていきたいとのこと。募金ならぬ“募本”も歓迎しているそうだ。

BOOK AND BED TOKYO支配人の深田直也氏(左)と岸田光氏(右)。どちらかが常駐しているという
BOOK AND BED TOKYO支配人の深田直也氏(左)と岸田光氏(右)。どちらかが常駐しているという
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外国人向けの国内旅行情報や日本文化の解説書も多い
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【体験レポ】泊まれる本屋「ブックホステル」が狙うのは“本を読まない人”!?(画像)
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【体験レポ】泊まれる本屋「ブックホステル」が狙うのは“本を読まない人”!?(画像)
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珍しい本もあるが、幅広く人気のある本がどちらかというと多い。自分が持っている本を見つけると、うれしいような残念なような、複雑な気持ちになる

■変更履歴
「ホテル」を「宿泊施設」、「ブックホテル」を「ブックホステル」に修正しました。 [2015/11/11 12:10]