2010年前後のペットブーム最盛期に急増したペットたちが、ここ数年で高齢化し、往診や訪問看護など新たなニーズが生まれている (関連記事「ペットの高齢化」で注目 往診、訪問看護の新サービス)。もう一つ、急激に市場が拡大しているのが、火葬を含めたペット葬儀ビジネスだ。ペット火葬業者が増え続ける一方、法整備がまだ整っていない状況を危惧する声もあがっている。

 そんななか、ペットビジネス大手の「イオンペット」が17年8月に、飼い主が安心して葬儀ができるペット霊園を独自の基準で選定、紹介するサイト「メモリアルなび」をオープンした。サービス開始当初の掲載件数は16カ所だったが、18年10月末時点で84カ所まで増えているという。

イオンペットが運営するサイト「メモリアルなび」。北海道・東北7カ所、甲信越・北陸4カ所、関東29カ所、東海6カ所、関西11カ所、中国・四国で12カ所、九州・沖縄15カ所を掲載
イオンペットが運営するサイト「メモリアルなび」。北海道・東北7カ所、甲信越・北陸4カ所、関東29カ所、東海6カ所、関西11カ所、中国・四国で12カ所、九州・沖縄15カ所を掲載
[画像のクリックで拡大表示]

 メモリアルなびが注目されているのは、その施設の掲載基準の厳しさだ。全国ペット霊園協会の伊東正和理事によると、ペット霊園は火葬炉を車内に設置している「移動火葬車」を含め全国に約800ほど(18年現在)。だが、同サイトに掲載されているのはわずか84施設。どのような基準で掲載する施設を選んでいるのだろうか。

人間と同等の葬儀、供養ができる施設の情報が少ない

 サービスを提供するイオンペットは、イオングループの専門店事業の一つ。現在、ペット用品販売181店舗、トリミング・ホテル 184店舗、動物病院53店舗などを運営している。直営の物販やトリミング、動物病院、テナントとしてはペットショップなど、ペットのライフサイクルにかかわる業態を同一店舗内でカバーする形で展開してきた。

 そんな同社が新たに葬儀場・霊園を掲載するサイトを立ち上げたのは、人間と同じように家族で個別火葬して見送ることができるペット葬儀や供養の需要が高まっているのに対し、それに対応する情報が少なく、葬儀施設や霊園を利用した人の評価も周知されにくいことが理由だという。ペットの葬儀は10~15年に一度あるかないか。ましてや、ペットが亡くなったときに家族と同じように心のこもった葬儀で見送りたいと考える人が増えたのもここ最近だからだ。

 「葬儀に対する感覚も大きく変わってきている。かつて葬儀場は、あえて暗い雰囲気を演出していた。だが、現在は家族と同等の存在であるペットをできるだけきちんとした場所で送ってあげたいという気持ちが強くなっている」(イオンペット ECグループ メモリアル担当 竹内久貴氏)

 イオンペット ECグループ メモリアル担当 鈴木禎(ただし)氏は「直営の動物病院で亡くなったペットの葬儀をどこで行えばいいのか、病院への問い合わせも増えているが、それに対応できるサービスが欠けていた。きちんと現地確認し、ペット専門会社として自信を持って薦められる霊園を示せるシステムが必要だと考えていた」と話す。

筆者宅のペットの位牌(いはい)と骨つぼ
筆者宅のペットの位牌(いはい)と骨つぼ
[画像のクリックで拡大表示]
メモリアルなびと提携している慈恵院のペット用の位牌
メモリアルなびと提携している慈恵院のペット用の位牌
[画像のクリックで拡大表示]

「掃除」と「電話応対」を重視

 イオンペットはメモリアルなびの掲載施設選定にあたり、独自の基準を設けている。一つは実際に現地の施設を訪れて、確認すること。確認のために訪れた施設は全国で200カ所を超えているという。評価に関しては自主基準を設け、施設面、サービス面などをチェックして数値化。加点の比率が高いのは清掃とサービスで、特に重視しているのは電話の応対だ。「悲しみにくれた状態からの最初のコンタクトなので、配慮が必要」(鈴木氏)として、受け答えが丁寧で、気持ちによりそった対応ができているかを実際に電話してチェックしている。

 「施設を調査するスタッフは、イオングループ内でさまざまな業種を経験している。その目で見ると、現地確認したペット霊園の中にはサービス業としての自覚がなかったり、清掃などの管理状態が不十分だったりする施設もあると感じた」(鈴木氏)。「きちんとしたポリシーを持って運営している施設かどうかは、現地で責任者やオーナーとじっくり話をするとわかる」(竹内氏)という。また、提携する際施設の決算書の提出も条件となっている。過去に倒産して遺骨が散逸しかけた霊園もあることから、運営が健全かどうか、施設が賃貸か自社物件かなどを確認するためだ。

 近年、トラック・ワゴン車などに火葬炉を設置した移動火葬車が急増しているが、全国ペット霊園協会では「ペット火葬に対応している固定炉がない地域や、飼い主が高齢などの理由で移動火葬車が必要な場合もある。だが、灯油を積んで車内で火葬にするため、危険なこともあるのでは」と危惧する。

 メモリアルなびに掲載されているのは固定炉を持つ施設のみだが、それは「人の葬儀と同じように斎場に足を運び、火葬に立ち会い、お骨あげを行うことで、愛するペットの死を受け入れることができ、結果的にペットロスの軽減につながる」と同社が考えているためだ。「このサイトの目的は悪質なペット霊園の排除ではない。飼い主の悲しみも癒やされ、次のペットを飼ってともに暮らしたいと思えるようなお別れができる施設を紹介していきたい」(鈴木氏)。また、同サイトで紹介されている「大森ペット霊堂」は「最近はコンプライアンスをとても気にする飼い主が増えているためか、(紹介されたことで)集客に大きな影響があった」と話す。

終活ブームで「ペットの永代供養」のニーズも増加

 同社が18年8月から新たに始めた「イオンペットの永代供養」も注目を浴びている。永代供養とは、永代に渡り、寺院や霊園が管理・供養する埋葬方法。同サービスを利用すれば、飼い主が墓参りできなくなったあとも、提携している慈恵院(東京都府中市)の僧侶が毎月の定例法要で読経供養をし続けてくれるという。

「イオンペットの永代供養」(3万円、追加料金なし)を申し込むと、飼い主が亡くなって墓参りができなくなったあとも、毎月定例法要で読経供養をしてもらえる。写真は慈恵院で今年行われた、「秋彼岸動物合同法要」の様子。参加人数は平均80~100人ほどだという
「イオンペットの永代供養」(3万円、追加料金なし)を申し込むと、飼い主が亡くなって墓参りができなくなったあとも、毎月定例法要で読経供養をしてもらえる。写真は慈恵院で今年行われた、「秋彼岸動物合同法要」の様子。参加人数は平均80~100人ほどだという
[画像のクリックで拡大表示]
慈恵院は敷地約1万3000平方メートルで、ペット霊園としては国内最大規模だという
慈恵院は敷地約1万3000平方メートルで、ペット霊園としては国内最大規模だという
[画像のクリックで拡大表示]

 同寺院は1921年(大正10年)の開園以来、約100年に渡りペットの供養をしてきた施設。ペットブーム以前の1972年に、いち早く、飼い主とペットが一緒に入れる納骨堂を設置している。以前はペットの供養をしていたのは限られた富裕層で、ペット霊園が普及したのはここ20~30年ほどだという。

 「以前から、50代~60代を中心に、永代供養の問い合わせは多かった。自らの終活を考えたとき、自宅で供養しているペットの遺骨の取り扱いや供養の仕方などに悩む人が多いようだ」と同寺院は話す。少子高齢化、未婚男女の増加は、「ペットの供養」にも新たな市場を生むかもしれない。

(文/桑原恵美子)

この記事をいいね!する