特別仕様にしたうえで“ユニクロ価格”を維持
OKが出たものの、マタニティーアイテムは既存商品と違い、求めるものの個人差が大きいため、開発には非常に苦労したという。「妊娠中の体質の変化は千差万別で、肌がすごく敏感になる人もいれば、締め付けることで気持ち悪くなる人、逆に締め付けがないと不安定感を感じる人もいる。そのため、素材を選ぶのがまず大変だった」(松崎リーダー)。パターン(型紙)作りも既存商品のデータは役に立たず、ゼロからのスタート。そこで社内で妊娠中の女性、出産経験のある女性が集まって知恵を出し合った。また海外展開も見据え、各国で妊娠中のスタッフにヒアリングを行ったという。
こうして完成したボトムスは、ユニクロ愛用者が違和感なく着用できるよう、腹部以外は既存アイテムと同じ生地を使用している。またマタニティー用のボトムスでデザイン性の高いものは高価格帯が多く、妊娠中は最後まで満足できるものに出合えなかったという松崎リーダー自身の経験から、既存品と同価格帯に設定した。人気のウルトラストレッチジーンズタイプの「マタニティウルトラストレッチジーンズ」だけでなく、レギンスパンツタイプの「マタニティレギンスパンツ」や「マタニティレギンス」を発売したのは、オフィスワーカーにも対応するため。「最近は、出産直前までオフィスで働き続ける女性が多い。デニムだけだとカジュアルになってしまうので、ワンピースの下に合わせられるレギンスや、ずっとパンツを愛用する方のためのレギンスパンツを開発した」(松崎リーダー)。
マタニティー用の特別仕様なのにストレッチジーンズが3990円、レギンスパンツが2990円、レギンスが1500円という“ユニクロ価格”なのにも驚くが、目配りのこまやかさにはさらに驚いた。ストレッチジーンズとレギンスパンツは、妊娠期にむくみやすい足元を締め付けないよう、裾幅は広めに設計。また腹部はコットンリブ素材だが、腰の部分は本体と同素材にしているため、かがみこんだときにトップスの裾からウエストが見えてもマタニティー用だと気づかれにくい。レギンスはおなか回りが二重になっていて冷えにくい、などなど。ここまでの細かさは、この価格帯のマタニティーアイテムでは、なかなかお目にかかれないと感じた。