筆者が感じた「ギンザ シックスの4つの謎」

 記者会見で全貌が明らかになると、期待が高まる一方、いくつかの疑問も多く浮かんできた。

(1)目標年商と目標来館者数が少ない?
 J.フロント リテイリングの山本社長によると、初年度の目標年商は600億円。目標来館者数は年間2000万人だという。年商は三越銀座店が2015年度に約853億円を売り上げたことと比較すると、施設規模に対してあまりにも低い数字に思える。また来館者数も、開業して10年以上が過ぎた六本木ヒルズにはいまだに年間約4000万人もの来場者があることを考えると、少なすぎる印象だ。

(2)飲食店比率が低い?
 最近オープンやリニューアルしている商業施設は、物販の割合が減り、話題になりやすく集客に直結する飲食の割合が大幅に増加しているのが特徴(関連記事「恵比寿の“新しい食堂”!? 「アトレ恵比寿西館」大解剖」、「玉川高島屋SC「マロニエコート」が“おしゃれ朝食スポット”に!?」)。だが同施設の出店の内訳を見ると、241の出店のうち、飲食は24店のみ。物販も最近はファッションよりもライフスタイル雑貨を扱う店が多いが、同施設では「コンランショップ」ほか数えるほどしかなく、圧倒的に貴金属やファッション系の店が多い印象だ。

(3)集客の目玉になりそうな店舗がない?
 発表によると、総出店数241のうち、旗艦店が122、日本初が11、世界最大級が4、新業態が65、銀座初が81、日本最大級が3。たしかにすごいといえばすごいが、話題となって集客の目玉になりそうな店舗が見たらない印象だ。海外人気店の日本初上陸が出し尽くしているのかもしれないが。 

(4)なぜ唐突に「能楽堂」?
 地下3階には、能楽最大流派である観世流の拠点「観世能楽堂」(480席、約1600平米)。「国際的な観光都市である銀座から、日本の伝統文化を発信したい」という気持ちは分かるが、商業施設で能はハードルが高すぎはしないだろうか。ただしこのスペースは、災害発生時には、帰宅困難者の一時滞在スペースとしても活用する予定ということだから、万が一のために覚えておくといいかもしれない。

最大の挑戦は、富裕層狙い路線!?

 会見で何度も繰り返されたのが「最上級」「高級感」という言葉。あえていわれなくても、物販店のラインアップを見れば高所得層狙いであることは一目瞭然(りょうぜん)。「松坂屋単独での再開発も十分可能だったが、銀座初の百貨店である松坂屋は挑戦がアイデンティティー」(J.フロント リテイリングの山本社長)という。中央通りをはさんだ向かいにある「ユニクロ」「GU」がにぎわう時代に、あえてこうした高級路線を打ち出すことが、同施設最大の挑戦なのかもしれない。

左から、住友商事の中村邦晴社長、森ビルの辻慎吾社長、J.フロント リテイリングの山本良一社長、L Real Estateマネージング パートナーのマシュー・ルボゼック氏
左から、住友商事の中村邦晴社長、森ビルの辻慎吾社長、J.フロント リテイリングの山本良一社長、L Real Estateマネージング パートナーのマシュー・ルボゼック氏
[画像のクリックで拡大表示]

(文/桑原恵美子)