昨年度、初めて開催され、全国3会場(東京、大阪、愛知)で総勢約7000人を動員した「HELLO KITTY RUN/ハローキティ ラン」が、セカンドシーズンとして2016年1月から開催される。その名の通り、サンリオの「ハローキティ」をメインキャラクターとしたランニングイベントで、“キティラー”たちにはたまらないイベントだ。

 今や日本のランニング人口は1000万人を超え、ランニングはライフスタイルの一つとして確立しつつある。走る目的はさまざまだが、これまで「健康増進」という日本人ランナーは少なくなかった。しかし、最近では「楽しい」を追求した「FUN RUN」と呼ばれる、新しいスタイルのランイベントが続々と登場。タイムを計測することなく、楽しさを追求するこのイベントは、国内外で幅広い年齢層に人気となっている。

 「HELLO KITTY RUN」もそのひとつで、「走ること」がメインではない。コンセプトは「HELLO KITTYと、“うれしい”“たのしい”を一緒に過ごす」こと。従来のマラソン大会のような時間制限はない。コースの途中に設置された、「HELLO KITTY」のフォトボードの前でゆっくりと記念撮影するなど、各ランナーは時間を気にすることなく自由に楽しめる。「走ること」を取り入れた「フェスティバル」。「ラン×フェス」というわけだ。

ビクターが手掛ける“ラン×フェス”が人気のワケ(画像)
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 セカンドシーズンでは、大阪(2月7日)、東京(2月14日)などで大会が開催される。昨年度に引き続き「HELLO KITTY」の応援を受けながらタイムを競う「5キロマラソン(東京)」「10キロマラソン(大阪)」、友人や家族と楽しみながら走る「30キロ・リレーラン」、そして新たに大会オリジナルバルーンやイルミネーションでデコレーションした中を走る「サンセット・ラン&ウォーク」などがあり、バラエティーに富んだ楽しみ方が可能だ。

 実はこれ、ビクターエンタテインメント(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)の関連会社JVCネットワークスが主催するランイベントなのだ。数々のライブイベントを手掛けてきた「エンターテインメントのプロ」が創出する非日常空間が売り。音楽も組み合わせた新たなライブイベントもこの秋に開催する。

“リア充”を求めている若い世代

 2015年11月23日に大阪で開催するのが「Lightning DASH」だ。JVCネットワーク主催の「ラン×フェス」で、まさに音楽業界から生まれた新しいランイベント。今年6月に東 京・夢の島公園陸上競技場で第1回目を開催した。メインステージでは、DJ KAORIやキマグレンなどのアーティストのライブが行われ、ランニングコースでも音楽を楽しめるのが特徴だ。ランナーは全員、電飾の「光」をつけて走る。走者の光がコースに流れるライブの「音」とがシンクロすると「ライト・ランニング・パレード」になるという演出。参加中の写真はSNSなどで多数投稿されたという。

 これまでランニングイベントと言うと、参加者の割合は30~40代が大きく占めることがほとんどだったが、「Lightning DASH」では、18~23歳が8割を占めた。その理由を、JVCネットワークスの杉山裕一プロデューサーはこう分析している。

 「まさに、これが若い世代のトレンドということなんでしょうね。彼ら彼女らは“リア充”、つまりリアルな充実感を求めている。『自分はこんな楽しいイベントを体験している』ということをSNSで発信して、他の子と差別化を図る。それが現代の若者の価値観なんです」。

ビクターが手掛ける“ラン×フェス”が人気のワケ(画像)
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「楽しませる」プロが手掛けるビジネス

 さて、それではなぜ大手レコード会社であるビクターの関連会社がランイベントを主催するのか。音楽CDの売り上げは1999年の6000億円をピークに下降線をたどっている。昨年のCD販売はピーク時の半分以下にまで減少している。こうした厳しい状況下、レコード会社はライブイベントやグッズ販売といった周辺事業を拡大してきた。

 そんな中、ビクターエンタテインメントはBtoB事業を拡大。2010年4月には「エンタテインメント・ラボ」を設立し、販促のプランニングやイベントのプロデュースを手掛けてきた。ランイベントを主催するようになったきっかけは、2010年に外資系銀行が主催するランイベントの販促事業を手掛けたことにあった。

「ウオーターサーバー会社に協賛してもらって、参加者にミネラルウオーターを試飲してもらったんです。そうしたら、そのウオーターサーバー会社と契約する人が続々と出て、販促事業としては大成功だった。奇しくもマラソンブームが始まっていましたから、これは大きなビジネスチャンスなのではと思いました」(杉山裕一プロデューサー)

JVCネットワークスの杉山裕一プロデューサー
JVCネットワークスの杉山裕一プロデューサー
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 そこで2011年からは積極的にランイベントでの販促事業をプロデュースし、協賛企業の誘致と、それに伴った販促イベントを展開。そこで培ったノウハウを生かし、初めて主催したのが2014年1月に台湾で行われた「HELLO KITTY RUN」。3万人を動員して大成功を収め、前述したように日本でも開催することとなったのだ。

JVCネットワークスの取締役プロモーションビジネス部長の栗原洋氏。同氏は音楽プロモーションのノウハウを生かしながらビクターエンタテインメントのBtoB事業を拡大してきた
JVCネットワークスの取締役プロモーションビジネス部長の栗原洋氏。同氏は音楽プロモーションのノウハウを生かしながらビクターエンタテインメントのBtoB事業を拡大してきた
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 「“FUN RUN”は記録を出すことよりも、楽しむことが最大の目的。つまり、エンターテインメントなんですね。実際に主催してみても、コンサートやライブイベントといった音楽フェスと何ら変わらない。私たちのノウハウが非常に活かされると思ったんです。それに、楽しませることなら、私たちはプロ。逆に自分たちにしかできないものがつくれると考えています」(同)

 「ラン×フェス」――音楽業界が発信する新たなスポーツの価値とビジネスチャンス。時代に求められた“非日常”がそこにある。

(文/斎藤寿子)