「楽しませる」プロが手掛けるビジネス

 さて、それではなぜ大手レコード会社であるビクターの関連会社がランイベントを主催するのか。音楽CDの売り上げは1999年の6000億円をピークに下降線をたどっている。昨年のCD販売はピーク時の半分以下にまで減少している。こうした厳しい状況下、レコード会社はライブイベントやグッズ販売といった周辺事業を拡大してきた。

 そんな中、ビクターエンタテインメントはBtoB事業を拡大。2010年4月には「エンタテインメント・ラボ」を設立し、販促のプランニングやイベントのプロデュースを手掛けてきた。ランイベントを主催するようになったきっかけは、2010年に外資系銀行が主催するランイベントの販促事業を手掛けたことにあった。

「ウオーターサーバー会社に協賛してもらって、参加者にミネラルウオーターを試飲してもらったんです。そうしたら、そのウオーターサーバー会社と契約する人が続々と出て、販促事業としては大成功だった。奇しくもマラソンブームが始まっていましたから、これは大きなビジネスチャンスなのではと思いました」(杉山裕一プロデューサー)

JVCネットワークスの杉山裕一プロデューサー
JVCネットワークスの杉山裕一プロデューサー
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 そこで2011年からは積極的にランイベントでの販促事業をプロデュースし、協賛企業の誘致と、それに伴った販促イベントを展開。そこで培ったノウハウを生かし、初めて主催したのが2014年1月に台湾で行われた「HELLO KITTY RUN」。3万人を動員して大成功を収め、前述したように日本でも開催することとなったのだ。

JVCネットワークスの取締役プロモーションビジネス部長の栗原洋氏。同氏は音楽プロモーションのノウハウを生かしながらビクターエンタテインメントのBtoB事業を拡大してきた
JVCネットワークスの取締役プロモーションビジネス部長の栗原洋氏。同氏は音楽プロモーションのノウハウを生かしながらビクターエンタテインメントのBtoB事業を拡大してきた
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 「“FUN RUN”は記録を出すことよりも、楽しむことが最大の目的。つまり、エンターテインメントなんですね。実際に主催してみても、コンサートやライブイベントといった音楽フェスと何ら変わらない。私たちのノウハウが非常に活かされると思ったんです。それに、楽しませることなら、私たちはプロ。逆に自分たちにしかできないものがつくれると考えています」(同)

 「ラン×フェス」――音楽業界が発信する新たなスポーツの価値とビジネスチャンス。時代に求められた“非日常”がそこにある。

(文/斎藤寿子)