宿泊施設の大幅な不足が予測される2020年に向け、ホテルの建設ラッシュが始まっている。異業種からの参入も増えるなか、注目されているのが、「WIRED CAFE」などの人気カフェを展開しているカフェ・カンパニーが2017年4月にオープンさせる「ワイアード・ホテル・アサクサ(WIRED HOTEL ASAKUSA)」だ。

 カフェ・カンパニーでは「LOCAL COMMUNITY HOTEL」をコンセプトに掲げ、今までにない“コミュニティー型ホテル”を目指すという。コミュニティー型ホテルとはどのようなホテルで、従来のホテルとどう違うのか。9月30日に開催された、同ホテルのコンテンツが体験できるイベントに足を運んだ。

浅草の「ライオンビル」で行われた「ワイアード・ホテル・アサクサ」宿泊予約開始イベントの様子
浅草の「ライオンビル」で行われた「ワイアード・ホテル・アサクサ」宿泊予約開始イベントの様子
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「ワイアード・ホテル・アサクサ」は大手芸能プロダクションのレプロエンタテインメントが運営する劇場付き複合施設「浅草九倶楽部」内にオープン。場所は浅草ひさご通り沿いで、遊園地「花やしき」の裏側
「ワイアード・ホテル・アサクサ」は大手芸能プロダクションのレプロエンタテインメントが運営する劇場付き複合施設「浅草九倶楽部」内にオープン。場所は浅草ひさご通り沿いで、遊園地「花やしき」の裏側
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2階には100人規模の劇場「浅草九劇(アサクサキュウゲキ)」がある
2階には100人規模の劇場「浅草九劇(アサクサキュウゲキ)」がある
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カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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「CARGO CLASS」(シャワーとトイレが共同のホステルタイプの2段ベッドルーム)は1泊1人5000円(仮)。男女混合部屋と女性専用部屋がある
カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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「CARRIAGE CLASS」(ダブルベッドルーム/2段ベッドの2タイプあり)は1泊(1室)/1万1800円~2万4000円(仮)。スタンダード/コンパクト/ミニなどいくつかのタイプを選択可能。2段ベッドでのグループ使用が可能なバックベッドタイプの部屋もある
カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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カフェ・カンパニー初のホテルはコミュニティーが集客(画像)
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ペントハウスもある「CARAVAN CLASS」(最上位のキングベッドルーム)は、1泊1室4万1000円~5万円(仮)。すべての部屋にゆったりとした広さのバスルームがついているのも特徴

集客をカギとなる「アンバサダー」とは?

 同ホテルが入るのは、大手芸能プロダクションのレプロエンタテインメント(東京都品川区)が運営する10階建ての劇場付き複合施設「浅草九倶楽部」内。1階は、夜は豆腐と日本酒を楽しめるカフェ&バー「TOFU BAR」、朝は発酵食品を使った朝食を提供するカフェという2業態で営業予定。2階には100人規模の劇場「浅草九劇(アサクサキュウゲキ)」がオープンし、3階から10階までが多彩なタイプの客室フロアとなる。

 記念イベントが行われたのは、ホテル建設予定地から少し離れた昭和初期の古いビル。1階は同ホテル1階にオープン予定のカフェ&バー「TOFU BAR」をイメージし、日本酒や豆腐、スパークリング緑茶などの紹介と販売を行っていた。

 エントランス付近には、多くの人の顔写真と説明が書かれたパネルが展示。彼らは日本在住の外国人や地元・浅草の職人やクリエイターたちで、ホテルの利用者に自身のお気に入りスポットを紹介する「アンバサダー」だという。

 実はこのアンバサダーの存在が、同ホテルが強く打ち出そうとしている特色のひとつ。同社ではホテルオープンに向け、2015年8月から「1MILE×100MILE」というイベントを実施してきた。「1MILE」は地元、「100MILE」は関東近郊のことで、個性的なアンバサダーたちが、地元のお気に入りスポットと、関東近郊のお気に入りスポットを紹介する活動をしている。同ホテルのウェブサイトの「アンバサダー」というページでは、地図上にアンバサダーの顔写真が表示され、クリックするとその人が推薦する場所、推薦する理由が表示される仕組みになっている。

 「自分が海外を旅したとき、ガイドブックに載っているような観光スポットよりも、地元の人や自分と趣味趣向が合う人に愛されている場所に行きたい。旅先に友だちがいたらそうした場所を教えてもらえるのに、というのが発想の原点。当社はカフェを『街に開かれたコミュニティの場』として運営しているが、今回もその理念に基づいて企画した。ホテルを訪れる誰もがコミュニティーの一員という考え方」(カフェ・カンパニー)という。

 アンバサダーはホテルに常駐しているわけではないが、1階のラウンジにいたり宿泊していたりする場合は宿泊者に紹介することも考えているという。またアンバサダーは今後も随時募集していくとのこと。

イベントでは茶葉や茶器などの輸入などを行うブランド「極東雑貨」がスパークリング緑茶を販売。利き酒師の資格を持ち、日本茶にも造詣の深いブーラフ・ドミトリー氏も同ホテルのアンバサダーの一人
イベントでは茶葉や茶器などの輸入などを行うブランド「極東雑貨」がスパークリング緑茶を販売。利き酒師の資格を持ち、日本茶にも造詣の深いブーラフ・ドミトリー氏も同ホテルのアンバサダーの一人
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湯河原の豆腐店「十二庵」が出店。厳選した国産大豆を使用した自家製の豆腐や汲み上げ湯葉、豆腐ドーナッツを販売していた
湯河原の豆腐店「十二庵」が出店。厳選した国産大豆を使用した自家製の豆腐や汲み上げ湯葉、豆腐ドーナッツを販売していた
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栃木県にある菊の里酒造の「大那」ほか、100MILEから厳選した日本酒が販売された
栃木県にある菊の里酒造の「大那」ほか、100MILEから厳選した日本酒が販売された
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日本在住の外国人や地元・浅草の職人、クリエイターを「アンバサダー」として登録
日本在住の外国人や地元・浅草の職人、クリエイターを「アンバサダー」として登録
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ホテルのウェブサイトでは地図からアンバサダーのおすすめスポットを探せる
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アンバサダーの顔をクリックすると詳細情報が出てくる
アンバサダーの顔をクリックすると詳細情報が出てくる
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“劇場のあるホテル”ではなく、“ホテル付きの劇場”

 イベント会場の2階は、レプロエンタテインメントによる劇場「浅草九劇」が体験できるエリア。旧来の観光地の大型旅館では、食事中にショーを見せる宴会場を持っているところが多かった。劇場付きのホテルと聞き、最初はそうしたディナーショーのようなイメージを抱いていたが、話を聞くと大違い。大手芸能プロダクションのレプロエンタテインメントが創立25周年プロジェクトの一環として運営する劇場で、「多くの小劇団が才能を遺憾なく発揮することができ、世界へ羽ばたこうとする者たちのふるさととなるような劇場を目指す」(レプロエンタテインメント)という、本気の劇場だった。

 それもそのはず、ホテルが入る建物はレプロエンタテインメントが運営する、劇場をメーンとした複合施設なのだ。レプロがホテル部分のテナントとして複数の企業から提案を受けたなかで、カフェ・カンパニーからの提案がレプロのコンセプトと合致したのだという。

 「僕は、人と人を交ぜ合わせるのが好き。だからホテル事業をやるというよりも、演劇を楽しんだあとにそのまま食事もできて泊まれる施設があれば、エンターテインメントに関わる人と旅行者が交ざり合う新しいコミュニティーを作る場所ができると思った。5000円のドミトリーに泊まる人と、5万円のペントハウスに泊まる人が1階のカフェ&バーで同じテーブルを囲んで、見たばかりの演劇作品を語り合える場所なんて、これまでのホテルではなかった」(カフェ・カンパニーの楠本修二郎社長)

イベントではカンパニーデラシネラの崎山莉奈氏による幻想的なソロパフォーマンスが披露された。カンパニーデラシネラは新国立劇場や世界各国の演劇フェスティバルに出演し、その芸術性が高く評価されているパフォーマンス集団。『浅草九劇』のこけら落とし公演への出演も決定している
イベントではカンパニーデラシネラの崎山莉奈氏による幻想的なソロパフォーマンスが披露された。カンパニーデラシネラは新国立劇場や世界各国の演劇フェスティバルに出演し、その芸術性が高く評価されているパフォーマンス集団。『浅草九劇』のこけら落とし公演への出演も決定している
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1泊5000円の2段ベッドにも“七つ星ホテル”の寝具?

 同ホテルのもうひとつの目玉は、高級ベッドで知られるスウェーデンのベッドメーカー「DUXIANA(デュ クシアーナ)」のベッドを全部屋に採用予定だということ(「CARGO CLASS」の2段ベッドはマットレスのみ)。同社は創業90年の老舗ベッドメーカーで、世界初で唯一、七つ星を称しているドバイのホテルにも納入されている。1901年以来、ノーベル賞の受賞者とその家族が宿泊する宿として知られるストックホルムのグランドホテルにも、同社のベッドが採用されているそうだ。

 イベント会場の3階にシングルベッドが展示してあり、寝心地を体験できた。体を預けると、今まで体験したことのないフワフワの浮遊感に驚いた(同じように寝心地を試した人たちが異口同音に、「フワフワ!」と言っていた)。1泊5000円の「CARGO CLASS」の部屋の2段ベッドや、2万円台の部屋でもこの寝心地を体験できるのなら、そのためにだけでも泊まってみたいと思った。

スウェーデン発の最高級ベッド「DUXIANA(デュ クシアーナ)」を展示。良質の鉄鉱石から取れる鉄として世界的に知られるスウェーデン鋼を用いたワイヤーで作るスプリングが最大の特徴。ダブルベッドに2人で寝て、片方が寝返りを打っても振動が伝わりにくいという
スウェーデン発の最高級ベッド「DUXIANA(デュ クシアーナ)」を展示。良質の鉄鉱石から取れる鉄として世界的に知られるスウェーデン鋼を用いたワイヤーで作るスプリングが最大の特徴。ダブルベッドに2人で寝て、片方が寝返りを打っても振動が伝わりにくいという
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(文/桑原恵美子)