住環境の変化に合わせてマダニも飼育

 飼育室は1年中、気温25度、湿度40~60%の状態が維持されていて、害虫が繁殖しやすい環境にある。しかも、エサの中身も管理されていて、飼育員が勝手にエサを変更することはない。害虫にも嗜好性があり、研究開発においては環境などの条件を安易に変えないことが重要だからだ。

飲食店に多く生息し、繁殖力の強いチャバネゴキブリや、一般家庭に見られるクロゴキブリ、在来種のヤマトゴキブリなど、ゴキブリだけでも現在23種類飼育している
飲食店に多く生息し、繁殖力の強いチャバネゴキブリや、一般家庭に見られるクロゴキブリ、在来種のヤマトゴキブリなど、ゴキブリだけでも現在23種類飼育している
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ゴキブリの飼育室の棚には、400~1000匹入ったケースが約300個。昆虫供給依頼書という伝票が届くと、必要な時期までに必要な量だけ供給できるように管理している
ゴキブリの飼育室の棚には、400~1000匹入ったケースが約300個。昆虫供給依頼書という伝票が届くと、必要な時期までに必要な量だけ供給できるように管理している
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展示用のペットとして飼っている世界最大級のゴキブリ「マダガスカルオオゴキブリ」。体を押さえると「シュー、シュー」という鳴き声をあげる
展示用のペットとして飼っている世界最大級のゴキブリ「マダガスカルオオゴキブリ」。体を押さえると「シュー、シュー」という鳴き声をあげる
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 「10年前と同じ条件で飼育しなければ、研究する意味がなくなります。試験用の害虫を飼育管理するということは、常に同じ状態、大きさの虫を用意しておく必要があるのです。飼育員の仕事は、研究所の実験担当者からの注文に応えて、必要な種類の害虫を必要な数だけ期限内に準備すること。例えば、蚊の幼虫のぼうふらの期間は7日間ほどなので、月曜に卵を集めて、翌週の月曜日にさなぎになるようにタイミングを図って計画的に育てています。ゴキブリ殺虫剤の研究では、効率を考えて体重の重いメスだけを使うのですが、メスだけ100匹欲しいと注文がくれば、ピンセットで一匹一匹拾っていきます。これが結構大変なんです」

 害虫の飼育方法はこれまで確立されておらず、一から育てることでノウハウを蓄積し、システム化してきた。有吉課長が入社した当時、30種類しかいなかった害虫もいまでは100種類に増加。殺虫剤の効果・効能を記載するために、それまでいなかった害虫の飼育も頼まれるようになった。

 「一般の人の虫に対する感覚も20年前からは大きく変わっています。最近は、ちょっとした虫でも駆除したいという要望が多く、アリやナメクジなど対象となる害虫が広がっています。住宅環境も変わり、高気密性のマンションなどではダニが増える可能性が高い。そこで、7年ほど前にマダニを飼い始め、4年前にはシラミ、2年前からツツガムシを飼育しています」

衣類害虫は、イガ、ヒメカツオブシムシなど4種類、総数2万5000匹を飼育。ウール製品など動物質の繊維を選別して食べ、卵を産む。防虫剤「ピレパラアース」がないシャーレーでは害虫が生地を食べつくしてしまった
衣類害虫は、イガ、ヒメカツオブシムシなど4種類、総数2万5000匹を飼育。ウール製品など動物質の繊維を選別して食べ、卵を産む。防虫剤「ピレパラアース」がないシャーレーでは害虫が生地を食べつくしてしまった
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