即席食品を使わなくても、ふつうに調理できるスキルも時間もあるはずのシニアがなぜ即席食品を買い求めるのか。そのニーズに対してメーカーは、どのように対応しているのか。「『シニア向け』即席食品の謎」企画の第1回。

 調理が不要で簡便に食べられる即席食品は、かつては独身の単身者など若年層が食べるもの、というイメージが強かった。だが近年、なぜかシニア層に人気が拡大。2013年度から2016年度にかけて140%の売り上げ増を記録しているアマノフーズのフリーズドライ味噌汁は、通販の平均年齢が62~63歳だという(関連記事「湯をかけるとカツが出現!? 話題の“フリーズドライのカツ丼”を食べてみた!」)。

 そんななか、日清食品は2017年9月、小世帯のシニアをターゲットに、「チキンラーメン」と「カップヌードル」ブランドから“お椀で食べる”をコンセプトにした袋麺「お椀で食べるシリーズ」を発売。「お椀で食べるチキンラーメン」の麺重量は30g(レギュラーサイズは85g)、「お椀で食べるカップヌードル」は28g(レギュラーサイズは65g)。マグカップ用の「チキンラーメン Mini」は20gなので、その中間サイズといえる。「昨日のおかずが残っているが、それだけでは少し量が足りないのでもう一品欲しい」「ごはんでは重いが、なにかおなかにたまるものが少し欲しい」「なにかしら汁物がないと満足できない」といったシチュエーションにちょうどいい商品だという。

2017年9月に発売された「お椀で食べるチキンラーメン 3食パック」「お椀で食べるカップヌードル 3食パック」(希望小売価格は各230円)。「チキンラーメン」「カップヌードル」の2品からスタートしたのは認知度が特に高いブランドであり、何にでも合うしょうゆベースだったことが理由だという
2017年9月に発売された「お椀で食べるチキンラーメン 3食パック」「お椀で食べるカップヌードル 3食パック」(希望小売価格は各230円)。「チキンラーメン」「カップヌードル」の2品からスタートしたのは認知度が特に高いブランドであり、何にでも合うしょうゆベースだったことが理由だという

「総菜を小鉢に移し替える」というシニアの声がヒントに

 1958年に世界初の即席麺として誕生したチキンラーメンは、来年で60周年を迎える。「子供のころから即席麺に親しんできた世代が今、シニアになっている。これまで若者やファミリー層を中心としてきた即席麺の消費環境がシニア層中心の消費にシフトし始めている」(日清食品マーケティング部第3グループの田淵義章ブランドマネージャー)。

 今のシニア層は、“和食好き”“薄味好み”といった昔ながらのステレオタイプなシニア層のイメージと大きく変わっている。「豊かな食生活に対する欲求が強く、食が細くなってたくさんは食べられないぶん、少しずつ多くの種類の料理を食べたいと思うようになっている。「『お椀で食べるシリーズ』は小容量の麺と具材がセットで入っているので、少しだけ食べたいときや、食事にもう一品加えたいときにぴったりで、さまざまな食シーンで便利にご利用いただけると考えている」(田淵ブランドマネージャー)。

 少量が便利なのは分かるが、同社ではミニサイズの袋麺は、ロングセラーの「チキンラーメン Mini(20g)」や「日清マグヌードル(20g)」シリーズがすでにある(他社には袋麺のミニサイズはほぼない)。またミニサイズのカップ麺「チキンラーメン どんぶりミニ」(麺重量36g)、「カップヌードル ミニ」(麺重量30g)は、ちょうどいい量を求めるシニアにも売れていて好調だという。なのになぜそのほかに、“お椀で食べる少量の袋麺”が必要なのか。

 実は同社がシニアの声をヒアリングするなかで、多かったのが「少量パックの総菜を食卓に出すとき、小鉢や小皿に移し替える」という主婦の声だったという。「カップ麺をそのまま食卓に出したときの奥さまの罪悪感、ご主人の失望感をお椀で食べることで払拭できると考えた」(同)そうだ。お椀で食べるチキンラーメンの30gは家庭で使用する標準的なお椀のサイズに合わせて設定したという。

袋の裏面にアレンジ法を記載していないのは、何も手を加えずそのまま出せる簡便性をアピールするため
袋の裏面にアレンジ法を記載していないのは、何も手を加えずそのまま出せる簡便性をアピールするため
お椀に入れて160mlの湯を注ぎ、3分待てば完成。カップヌードルの具材はカップ麺と共通
お椀に入れて160mlの湯を注ぎ、3分待てば完成。カップヌードルの具材はカップ麺と共通
チキンラーメンにはかきたま、ネギ、カマボコなどの具がプラスされている
チキンラーメンにはかきたま、ネギ、カマボコなどの具がプラスされている

シニアを細かく分類してターゲティング

 同社では多様化するシニア層を価値観の違いによって細かく分類しており、2016年発売した「カップヌードルリッチ」は、その中でも活動的なシニア層を意識した商品。だが同商品は「シニア層全体に幅広く受け入れられる商品」(田淵ブランドマネージャー)と見て、期待を膨らませている。流通関係者からの反応も良く、「ありそうでなかった」「こういう製品を待っていた」などの声が多いという。またコンビニ各社からも好評価で、発売時は全コンビニで導入されたという。同社ではシニアの少人数世帯だけでなく、オフィスワーカーや受験生の夜食などの需要の広がりにも期待。「即席麺売り場がメインだが、味噌汁売り場やスープ春雨売り場などに広がる可能性もある」(同)という。

 取材後、近所のコンビニで買い求め、晩御飯にプラスしてみた。お椀で食べるカップヌードルはいつも食べているそのままの味。だが単品で食べ慣れているせいか、おかずといっしょに食べることに予想以上の違和感があった(2回目からは慣れた)。お椀で食べるチキンラーメンにはなぜかそれがなく、こちらのほうがどんなおかずにも合うと感じた。またレギュラー品より少ないとはいえ、汁物代わりに食べるにしては麺の量がかなり多め。“ご飯と汁物代わり”くらいのポジションがぴったりだと思った。

お椀でカップヌードルを晩御飯で利用した例。主菜と小さいおかずくらいでも満足感があり、いつもよりしたくがラクだった
お椀でカップヌードルを晩御飯で利用した例。主菜と小さいおかずくらいでも満足感があり、いつもよりしたくがラクだった
お椀でチキンラーメンのほうが和洋中どんな料理にも合いそうだと感じた
お椀でチキンラーメンのほうが和洋中どんな料理にも合いそうだと感じた
■変更履歴
写真キャプションで、初出では「お椀でチキンヌードルのほうが和洋中どんな料理にも合いそうだと感じた」としておりましたが、正しくは「お椀でチキンラーメンのほうが和洋中どんな料理にも合いそうだと感じた」でした。お詫びして修正いたします。 [2017/10/11 9:55]

(文/桑原恵美子)

この記事をいいね!する