アプリで店舗の従業員の負担も低減

 むしろ、ニトリは都心の店舗においてはショールーミング推奨派だ。従来、展開してきた郊外型の店舗は自動車での来店客が過半を占める。そのため、店舗で購入した後に自分で持ち帰る客が多い。一方、都心の店舗はその逆。多くの来店者が電車などの公共交通機関で訪れる。そのため、自宅への配送を希望する顧客が想像以上に多かった。都心の店舗は郊外店と比較して規模が小さいため、すぐにレジのカウンターに商品が山積みになってしまう。ニトリでは配送を希望する顧客に対しては、ネット通販の倉庫から商品を配送しているため、この山積みになった商品を陳列棚に戻す作業が発生する。「複数階層に渡る店舗の場合、この作業が非常に手間になっていた」(小林氏)。

 手ぶら de ショッピングの利用が広がり、アプリが買い物かごとして定着すれば、レジのカウンターに商品が山積みになるようなことが避けられる。そうすれば従業員の負担の低減につながり、効率的な店舗オペレーションが可能になる。だからショールーミングが広がることは、店舗運営に有益に働くと見る。現時点でこの手ぶら de ショッピングに対応している店舗は渋谷公園通り店、アトレ目黒店など都心の4店舗にとどまっているが随時、「中目黒店など、都心の店舗を中心に拡大をしていく」(小林氏)方針だ。

 対応店舗を増やす一方で、アプリ機能の改善にも取り組んでいく。例えば、同じ商品を複数購入したい場合には、バーコードを2回読み込む必要がある。また、配送にした場合、どれぐらいの日数で届くのかもアプリ上では分からないといった、不便な点がアプリの提供後に浮かび上がってきた。これらの課題を解決することで、アプリの利便性を高めていく。

 流通企業が自ら店舗をショールームと位置付ける。このようなニトリの思い切った戦略は、流通業界の今後を占う重要な試金石となりそうだ。

(文/中村勇介=日経トレンディネット)