ビジネスパーソンと主婦がヘビーユーザー

 リカバリーウエア市場に大手メーカーが出そろったなか、特に女性人気が急増しているのが、リカバリーウエアの先駆け、ベネクスだ。

 ベネクスはもともと産官学連携事業としてPHT繊維を開発し、介護業界に向けた商品を販売していた。次に、日勤や夜勤を繰り返す介護ヘルパーや医療従事者向けにこの特殊繊維で作ったTシャツを販売。着るだけでナノプラチナが発する微弱な電磁波が自律神経の副交感神経に作用して筋肉の緊張をほぐし、血流を促すことで疲労回復や安眠へと導くというもので、医療関係者の間で評判になった。それが、スポーツトレーナーの目に留まったのが、リカバリーウエアの始まりだ。それからプロのアスリートが愛用するようになり、そこからスポーツジムを利用するビジネスパーソンへと口コミで広がり、リカバリーウエアの名前が知られるようになった。

 「当初はアスリートの疲労回復ウエアとして販売していたのですが、ジムを利用する一般の人から『よく眠れるようになった』『疲れが翌朝に残らない』などの反応があって、そのうち、出張が多く、慢性疲労を抱えているビジネスパーソンが、室内着やパジャマとして購入する割合が増えた。2014年にネックウォーマーなどのアクセサリー類を販売するようになってからは、主婦を中心に女性ユーザーが急激に増えた」と、ベネクスマーケティング部の友部崇氏は話す。

ベネクス「2WAYコンフォート ライト」(税込み4860円)。ネックウォーマーとして、また帽子としても使える。女性に人気だ
ベネクス「2WAYコンフォート ライト」(税込み4860円)。ネックウォーマーとして、また帽子としても使える。女性に人気だ
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 ベネクスの製品は決して安いとはいえない。半袖Tシャツでも1万円前後だ。「生地の生産から縫製まですべて国内生産。さらに休養中の体に負担がかからないように、縫い目が体に触れないように工夫しながら、スポーツウエアとしての丈夫さも一定の基準を満たしている。これがどうしても割高になってしまう理由」と友部氏は話す。にもかかわらず、売り上げは右肩上がりで、2009年からの累計販売数は50万着(2017年5月段階)を超えるヒット商品だ。

 売れている理由は、今までなかった“休養のためだけに作られた商品”だということ。着るだけという手軽さ、他社製品とは違って圧着タイプではないので窮屈感がなく、スポーツをしていない人でも着やすい。さらに色や種類が豊富で選びやすいことも理由のひとつだろう。

 また、ショップスタッフが「着ると眠くなることがあるので運転中や仕事中、運動中は着ないでほしい」というくらい、その効果を実感していることもユーザーが購入を決めるきっかけになっているようだ。ベネクスの営業チーム、リカバリーアドバイザーの江口直人氏によると、「ショップがオープンした当時はスタッフが商品を着用していたが、仕事中に眠くなってしまうという意見があって、仕事にならないからと商品の着用をやめたというエピソードがあるくらい」だ。

 「ユーザーは40~50、60代が多い。体力が落ち、疲れが取れにくくなってきた年代で、健康意識が高い層だ。中には、スポーツをする子供のためにと、家族全員分のウエア約10万円分をまとめて購入していくヘビーユーザーもいる」と江口氏は話す。トップスとネックウォーマーなどのアクセサリーを一緒に購入する人が多く、客単価は2万円前後だという。

 発売当初は、ユーザーのほとんどがアスリートだったが、現在は7割が一般の人なのだそうだ。「口コミで最初に広がったのはビジネスパーソンだったが、2016年4月から2017年3月までの1年間でユーザーは、アスリート以外の女性が52%を占めるまでになった」(友部氏)。最近では、ユーザーのなかにはパソコンをよく使うデスクワーク中心の女性会社員やプロの漫画家もいるそうだ。

 その傾向を反映するように、2017年3月に、新宿髙島屋が婦人服フロアを大幅に改装し、健康と美をテーマにした「ウェルビーフィールドフロア」をオープンした際に、ベネクスの直営店が入った。ベネクスがファッションフロアに出店するのは初めてのことだ。

新宿髙島屋のウェルビーフィールドフロアにオープンしたベネクスの直営店
新宿髙島屋のウェルビーフィールドフロアにオープンしたベネクスの直営店
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