大手フィッシングメーカーのダイワが、2017年春夏に新ファッションレーベル「D-VEC(ディーベック)」をスタートさせた。アウトドア&スポーツメーカーによるアパレルの展開自体は珍しいものではなく、現にダイワブランドからもフィッシングウエアはもちろんのこと、普段着られるライフスタイルウエアも販売されている。しかしD-VECは、そういったアウトドアスポーツアパレルとは一線を画すブランドとして、ファッション業界からも注目されているのだ。

「D-VEC(ディーベック)」メンズアイテム
「D-VEC(ディーベック)」メンズアイテム
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フィッシング分野で培った技術をファッションに反映

 D-VECのコンセプトについて、ダイワを展開するグローブライドのフィッシング営業本部アパレルマーケティング部長の小林謙一執行役員は、「フィッシングという過酷な環境で培ってきた技術を、華やかなファッションと融合するプロジェクトです。雨・風・光の中で、おしゃれをポジティブに楽しめるようなオンリーワンのプロダクトを提案していく」と話す。

 すべてのアイテムにフィッシング由来の技術や機能を取り入れているのが特徴で、例えばニットウエアもはっ水仕様だ。フィッシングウエアではレインジャケットなどに使用するポリエステル製の超はっ水糸で編み立てることで、ニット生地にもかかわらず水を弾く。製品完成後にはっ水加工を施すのではないので、はっ水性が長持ちし、汚れにも強い。白いニットも食べこぼしを気にすることなく着られて、ずっとキレイな状態をキープできる。

 はっ水ニットはダイワブランドから発売されていそうなものだが、実はニット自体がフィッシングウエアにはないアイテム。その理由は「針が引っかかるから」(小林氏)とのこと。なるほど!

「釣りのダイワ」が本格ファッションブランドを作った理由(画像)
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生地に水を垂らすと玉になり、するっとこぼれ落ちていく。ニットなのに!
生地に水を垂らすと玉になり、するっとこぼれ落ちていく。ニットなのに!
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 そしてデビュー時から好評を得ているのが折り畳み傘。ダイワのフィッシングロッドに使われているカーボンテクノロジーを応用することで、親骨50cmサイズでは約76gと、iPhone 8の半分という軽さを実現している。

「カーボンテクノロジー ポータブルアンブレラ」50cmサイズ(1万円)。2018年春夏から60cmサイズも追加された(1万1500円)
「カーボンテクノロジー ポータブルアンブレラ」50cmサイズ(1万円)。2018年春夏から60cmサイズも追加された(1万1500円)
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傘のシャフトは釣り竿のような作りになっている。一般的な折り畳み傘のようなつなぎ目の突起がない
傘のシャフトは釣り竿のような作りになっている。一般的な折り畳み傘のようなつなぎ目の突起がない
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骨組もカーボンなので、強風でも折れにくい
骨組もカーボンなので、強風でも折れにくい
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 シャフトの伸縮には、釣り竿の製造で培われた特殊な嵌合(かんごう)技術を採用している点も見逃せない。「カーボンの扱いはフィッシングメーカーとゴルフメーカーが長けている」(小林氏)そうで、そのどちらも手がけるグローブライドならではのオリジナリティーあふれる折り畳み傘となっている。

ファッションへの挑戦で会社全体のレベルアップを狙う

2018春夏のコレクション
2018春夏のコレクション
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 D-VECの機能性の一例を紹介したが、これまで培ってきた技術をアパレルに応用するだけであれば、既存のダイワブランドと大きな違いはなく、新たにファッションレーベルを立ち上げる必要もないだろう。しかし最初に述べたように、D-VECはデザインに力を入れており、セレクトショップで販売されているようなプレミアムアパレルにも引けをとらない高いファッション性を持つ。「フィッシングのダイワ」のイメージとはかけ離れたものといえるが、これこそが狙いであると小林氏は話す。

 ダイワはフィッシング業界では知名度が高い。しかし一歩外に出ると、アウトドア志向の高い男性にはある程度知られているものの、女性の認知度は低いという。

 「グローバル企業としてもう一段成長していくためには、“フィッシング”の中だけでは限界がくるだろう」(小林氏)と、フィッシングに興味がない若年層や女性からの支持を拡大する方法として、ファッションレーベルの設立を選択。

 また同社によれば、登山やキャンプといったアウトドアに比べ、フィッシングにはオシャレ感が足りないというリサーチ結果もあり、アウトドアスポーツの枠を超えてプレミアムアパレルにチャレンジしていくと決めたという。

 「底辺から一気に飛ぶことで、どこに問題があるのか、女性に響かない点はどこか、足りないものはどこか如実に分かる。それを必死になって追いかけることで成長のスピードが早まり、早い段階でファッショナブルなステージに上がれるはず。フィッシングとアウトドアの差はそこまでないので、一歩一歩進んでいては時間がかかる」(小林氏)

フィッシングとファッションとの格差を埋める

 フィッシングとファッションとの格差を埋めるため、小林氏は東京ガールズコレクションやミラノコレクションなどにも足を運び、ファッションにはデザイナーの感性が大事なこと、それらを発信するショーも必要であることを学んだそうだ。そして女性から支持されるためには着回しができるアイテム構成・ラインナップの統一感が必要であることなど、今まで思いもしなかったアパレルの見方を知ったという。

 「いいものを作って売っていればいいだけの時代は終わった。20代の女性は何を見て、何に拍手を送るのか。SNSで発信して『いいね!』をもらうといった、コト軸の重要性も感じています。これらの心理を解明して、我々のマーケティング手法にのせていけば、ビジネスモデルの刷新につながる可能性があるのではないか。おじさんの趣味のフィッシングからは、最先端のトレンド情報は得られませんから(笑)。D-VECをやることで、新しい世界、新時代を切り拓いていけるのではないかと考えています」(小林氏)

 D-VECというファッションレーベルを展開することで、ダイワの知名度を上げるとともに、会社全体のアパレル力・求心力の強化を図るグローブライド。本気度120%のアパレル事業、今後の動きにも注目したい。

「ウォータープルーフ テーラードジャケット 2」(4万8000円)。はっ水ストレッチ素材を使用した高機能ジャケット。ビジネスにも対応する上品さが魅力
「ウォータープルーフ テーラードジャケット 2」(4万8000円)。はっ水ストレッチ素材を使用した高機能ジャケット。ビジネスにも対応する上品さが魅力
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飾りボタンではなく本切羽。レーザーカットによるボタンホールが特徴となっている
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「ウォータープルーフ ロング ピーコート」(6万8000円)。起毛感のある透湿防水素材や、アクアガードと呼ばれる止水ファスナーを採用している
「ウォータープルーフ ロング ピーコート」(6万8000円)。起毛感のある透湿防水素材や、アクアガードと呼ばれる止水ファスナーを採用している
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ジャケットもコートも、同社の折り畳み傘専用の内ポケットを備えている
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「3D ニット テーラードジャケット」(2万9000円)。縫い目を最小限に抑えた3D仕立てにより、快適なフィット感を持つ。着心地がよく動きやすい
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(文/津田昌宏)