グリルもスチーム調理もないワケは?

 バルミューダ ザ・レンジは多くのオーブンレンジが搭載している「グリル調理」(天面のヒーターで焼き目を付ける調理)機能や「過熱水蒸気調理」(100℃以上に加熱した水蒸気で行う調理)機能は搭載していない。その理由を問うと寺尾社長は、普段の調理における電子レンジ(マイクロウェーブ加熱)のすばらしさと、特別な料理を作るためのオーブン機能の重要性について語った。

「オーブン機能を省いた単機能レンジを発売するという考え方ももちろんありましたが、売れないだろうなと思いました。単体レンジは年間100万~120万台の安定した需要がありますが、買われるのはどちらかというと一人暮らしの方です。家族で使う場合は、週末になにか特別な料理を作りたいという願いがあるのです。そのたまに作る特別な料理を調理できるオーブン機能は省けないと思いました」(寺尾社長)

 一方で、なぜグリル機能や過熱水蒸気調理を含めたスチーム調理機能を省いたのか。

 「オーブンとグリルの違いは上火と下火の違いです。上火で焼き付けたいなら『ザ・トースター』という最強マシンがあるので、こちらはオーブンができればいいと考えました」(寺尾社長)

扉部分にレストランの外構をイメージしたようなライトが内蔵されており、調理終了後などに光るようになっている
扉部分にレストランの外構をイメージしたようなライトが内蔵されており、調理終了後などに光るようになっている
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 寺尾社長は続ける。「スチームオーブンも確かにいい。でもマイクロウェーブを使って温めるというのはすごい技術なのです。レンジは、そもそもすばらしい。だからこそ90%台後半まで普及し、みんなが使っています。でも、そもそもそれだけすごいということをみんな忘れていて、どちらかというと『これはキッチンに合わないよね』などと言いながら(不満を抱えながら)買っているのが電子レンジの実態だと思っています。でも本当はすごいのです。今回、我々はスチームなどを使ってものを温めることを考えるよりも、この技術(マイクロウェーブ加熱)をリスペクトして、再パッケージしたのが今回の商品です」

 バルミューダ ザ・レンジはシンプルな機能を搭載しつつも、ギターやドラムなどのアコースティックな操作音や、調理が終わるとスポットライトのような光がともるなどの仕組みを採用している。

 「1分で食べ物が温まるというのは、そもそもすごくうれしいことなんです。そこでもう1回、シンプルだけどとても力強く調理してくれることを前に押し出して、あとは全部簡単にする。それに音や光などのちょっとした楽しみを付けました」(寺尾社長)

 筆者はバルミューダ ザ・レンジを実際に見て触ってみて、無駄なものをそぎ落とした潔さにバルミューダらしさを感じた。グリル機能やスチーム機能は決して無駄なものではないが、「たまに食べる特別な料理を作るためには、オーブンさえあればいい」という考え方は十分に理解できる。機能を増やせば増やすほど操作が煩雑になり、初心者にとって使いにくくなるためだ。コンパクトで設置場所に困らず、ブラック、ホワイト、シルバー(ステンレス)のカラーはインテリアにもなじみやすい。操作パネルの文字も最小限だが、ディスプレーにモードや設定温度などが表示されるので、誰でも迷わずに使えることだろう。

 スチーム機能を搭載していないオーブンレンジとしては、5万円前後という価格帯は決して安くはない。とはいえ、大手メーカー各社のプレミアムモデルが発売当初10万円以上もするのと比べると、リーズナブルにも思えてくる。シンプルかつスタイリッシュなデザイン、シンプルな機能と操作性、さらには音や光の、ほんのちょっとした遊び心。バルミューダ ザ・レンジがキッチンに入ってくることを想像すると、ワクワクするという人も多いのではないだろうか。ザ・トースターやザ・ゴハンなどに続いて、またヒット商品になりそうだ。

(文・写真/安蔵 靖志=IT・家電ジャーナリスト)